著作権重要判例要旨[トップに戻る]







貸与権侵害を否定した事例
「違法二次的著作物図書館所蔵事件」平成220226日東京地方裁判所(平成20()32593/平成220804日知的財産高等裁判所(平成22()10033 

【コメント】本件は、原告著作物(控訴人著作物)(日本語)を著作した原告が、韓国語の書籍である「本件韓国語著作物」が原告の原告著作物に係る著作権(複製権、翻訳権・翻案権)を侵害するものであることを前提に、被告ら(大学等)に対し、被告らが、それぞれ設置する図書館等において本件韓国語著作物を閲覧、謄写、貸与する行為が、原告の著作権(二次的著作物に係る貸与権)を侵害するなどと主張して、本件韓国語著作物の閲覧、謄写、貸出しの差止め等を求めた事案です。 

 以上の事実によると,本件韓国語著作物は,控訴人著作物の目次,項目及び解説部分をほぼ直訳して翻訳したものであり,また,各項目の内容についても,控訴人著作物の内容をほぼ直訳して翻訳したものと推認される。
 
したがって,本件韓国語著作物は,控訴人著作物の著作者の翻訳権を侵害して作成された違法なものである。
 
[貸与権侵害の成否]
 
貸与権の規定(著作権法26条の3)は,昭和59年改正法により設けられた規定であるが(当時の条文は26条の2。),同改正法により付加された著作権法附則4条の2により,書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には,当分の間,適用しないこととされた。その後,平成16年改正法(平成1711日施行。)により,上記附則4条の2は削除され,平成1711日から書籍及び雑誌の貸与にも貸与権の規定が適用されることになったが,同改正法附則4条により,同法の公布の日(平成1669日)の属する月の翌々月の初日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与については,上記附則4条の2の規定は平成16年改正法の施行後もなおその効力を有するとされ,平成1681日において現に公衆への貸与の目的で所持されていた書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与については,引き続き貸与権の規定は適用されないこととされた
 
(略)
 
そうすると,被告らが設置する図書館等で所蔵する本件韓国語著作物は,いずれも平成1681日の時点において現に公衆への貸与の目的をもって所持されていた書籍であり,かつ,本件韓国語著作物は主として楽譜により構成されているものでないことは明らかであるから,平成16年改正法附則4条,同改正法により削除される前の著作権法附則4条の2により,その貸与につき貸与権の規定は適用されないこととなる。したがって,被告らが所蔵する本件韓国語著作物については貸与権の規定が適用されず,本件韓国語著作物に係る著作者の貸与権が及ばない以上,仮に原告が本件韓国語著作物の原著作物の著作者であったとしても,二次的著作物である本件韓国語著作物に係る原告の貸与権が及ぶことはなく(著作権法28条),原告の二次的著作物に係る貸与権の侵害に該当することはないため,原告の著作権侵害に基づく各請求は失当である。
 
原告は,被告らによる本件韓国語著作物の閲覧,謄写も貸与権の侵害になると主張する。しかし,著作権法の「貸与」とは,使用の権原を取得させる行為をいうが(著作権法28項),図書館等において書籍を利用者に閲覧,謄写させる行為は利用者に使用権原を取得させるものではないから,「貸与」に当たるということはできず,原告の上記主張は誤りというほかない。
 
原告は,貸与権の規定の制定,変遷の経緯からすると,平成16年改正法附則4条,同改正法により削除される前の著作権法附則4条の2により貸与権が及ばない書籍又は雑誌の範囲は,貸本業者が所持する書籍又は雑誌に限定されると解するのが相当であると主張する。
 
しかしながら,著作物の複製物を公衆に貸与する「貸与権」については,映画の著作物の複製物の「頒布権」に含まれる「貸与」を除くと,昭和59年改正法により新設された権利であって,それまでは,著作物の複製物を公衆に貸与することは自由とされていたものである。そして,昭和59年改正法によって,新しい権利として「貸与権」が設けられた際に付加された平成16年改正法により削除される前の著作権法附則4条の2において,経過措置が設けられ,書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)については,当分の間,貸与権の規定は適用されないこととされ,貸本業者が所持する書籍又は雑誌に限らず,書籍又は雑誌の貸与一般について貸与権の規定が適用されないとされたものである。その後の平成16年改正法により,上記附則4条の2は削除されて経過措置が廃止され,書籍又は雑誌の公衆への貸与についても貸与権の規定が適用されることになったが,平成16年改正法附則4条において,同年81日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与については,同改正前の著作権法附則4条の2の規定は,その施行後もなおその効力を有するとされたものである。
 
以上によると,平成16年改正法によって削除された附則4条の2の経過措置の制定は,貸本業をいきなり規制することには理解が得られにくいことをも理由とするものであったとしても,昭和59年改正法による規制までは,書籍又は雑誌を貸与することは自由であったもので,同改正法によっても,同経過措置により,主として楽譜により構成されているものを除き,書籍又は雑誌を貸与することは自由のままとされ続けたものであるから,平成1681日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与については,この経過措置の規定がなおその効力を有するとされる場合の貸与権が及ばない書籍又は雑誌の範囲は,貸本業者が所持する書籍又は雑誌に限定されると解すべき理由はなく,控訴人の主張は採用することができない。
 
(略)
 
また,原告は,本件韓国語著作物のような違法複製物につき貸与権の規定の適用がないと解することは,著作権法に違反する行為を放置,容認,保護することになり著作権法の目的に反し,また,著作権法11312号により違法複製物をそれと知りつつ貸与することは認められないこととの関係からも,許されないと主張する。
 しかし,平成16年改正法附則4条及び同改正法により削除される前の著作権法附則4条の2は,貸与権の規定が適用されない書籍又は雑誌につき,違法複製物を除く適法なものに限定していないから,当該書籍等が適法なものか否かにより上記各規定の適用が異なるものと解することはできない。原告が主張するように,本件韓国語著作物が原告の原告著作物に係る著作権を侵害するものである場合には,本件韓国語著作物の貸与につき貸与権の規定の適用がないとしても,これを情を知って貸与し,又は貸与の目的をもって所持すれば,原告の著作権を侵害する行為とみなされるのであるから(著作権法11312号,2119号),著作権者の権利保護に欠けることはなく,著作権法の目的に反することはない。したがって,上記原告の主張も採用することはできない。











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