著作権重要判例要旨[トップに戻る]







譲渡契約の解釈(10)-破産財団との譲渡契約における権利の特定性-
パチスロ機『クレイジーレーサー』等著作権等侵害事件(中間判決)」平成160115日大阪地方裁判所(平成14()1919等) 

 本件譲渡契約書について検討するに、その第1条は、「甲〔SNK破産管財人L〕は別紙目録に掲げる知的財産権(以下『本件知的財産権』という。)を乙〔原告〕に譲渡する。」と記載され、同契約書の別紙目録には表が添付されている。そして、当該表には、本件各著作権等はいずれも記載されていない
 
しかし、上記の本件譲渡契約書別紙目録添付の表を更に詳しく検討すると、ここには登録され、あるいは登録を出願している知的財産権しか記載されておらず、一方、登録されておらず、登録の申請もされていない著作権については全く記載されていないことが認められる。
 
ところで、本件譲渡契約は、SNK破産管財人による破産財団の換価の一環として行われたものであることはSNK破産管財人の裁判所に対する本件譲渡契約締結の許可申請書及び裁判所の許可決定書正本の記載から明らかであるが、破産財団の換価という観点からみれば、知的財産権を登録され、あるいは登録を出願しているものと、そうでないものとに分割して譲渡するのは、特段の事情がない限り利点に乏しく、本件で提出された全証拠によっても、そのような特段の事情は見当たらない。しかも、SNKはゲームソフトの開発、製造、販売等を業としており、本件譲渡契約書別紙目録添付の表にも、ゲームソフトに関連する商標権が含まれているところ、ゲームソフト中に用いられる著作物の著作権を商標権と分離して破産財団に留保することは、商標権の換価方法としても、著作権の換価方法としても不合理であるという他はない。
 
そして、著作権は、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権と異なり、創作によって発生し、登録は権利行使の要件でもなく、登録を受けることはむしろ例外に属する。
 
また、SNK破産管財人は、SNKの再生手続廃止決定に続く管理命令に基づく管財人の当時、SNKの知的財産権の一括譲渡を数社に打診し、その中で最高価の申し出をした原告との間で本件譲渡契約を締結したという経緯があるが、上記打診の書面には、「知的財産権の一括譲渡先を探して」おり、その検討を求める旨記載されている。
 
これらの事実関係に照らせば、本件譲渡契約の解釈としては、未登録の著作権については、その特定が未登録であるが故に煩瑣であったために、表に記載しなかったものの、これについても同時に譲渡する趣旨であったものと解するのが相当でありSNK破産管財人と原告との間の覚書もこれを裏付けるものというべきである。
 
次に、本件譲渡契約締結にかかる裁判所の許可について検討する。
 
SNK破産管財人が裁判所に提出した本件譲渡契約締結の許可申請書には、「許可を求める事項」として「株式会社プレイモア(原告)との間で、別紙知的財産権譲渡契約を締結し、金21000万円で知的財産権を一括譲渡すること」と記載され、別紙として本件譲渡契約書と同一の書面が付されている。
 
しかし、前述のとおり、SNK破産財団に属する知的財産権の換価に当たって、未登録の著作権を留保し、その余の知的財産権のみを譲渡する理由に乏しいこと、許可申請書に、破産財団に属する知的財産を一括譲渡する旨記載されていることに照らせば、裁判所としても、別表に記載されていない未登録の著作権を含め、SNK破産財団に属する知的財産権を一括して譲渡するという趣旨で本件譲渡契約の締結を許可したものと認めるのが相当である。
 
この点、被告らは、破産財団に属する知的財産権について、破産管財人がその詳細を特定せずに一括譲渡することや、裁判所がこれを許可することはあり得ないと主張する。
 
しかしながら、権利が多数に及ぶ場合には、詳細にわたる特定をしなくとも、一定の方法によって譲渡の対象となる権利が特定できれば、これをもって譲渡の対象とすることは十分に可能であるし、その際には具体的な権利の一々にまで破産管財人や裁判所の認識が及んでいる必要もないことは当然である。また、多数の権利の詳細な特定と価値査定をする場合には、それ自体に相当程度の時間と費用を要するところ、破産財団の早期換価の要請から、これを省いて一括譲渡の方法を選択することも、破産管財人及び裁判所として合理的な場合もあると解される。したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
 
なお、被告らは、原告が本件譲渡契約によって破産管財人に支払った対価に比べて、本件における原告の被告らへの金銭請求の額があまりにも過大であるとも主張する。
 
この主張が意味するところは必ずしも明らかではない。しかし、破産財団に属する知的財産権の換価に当たっては、当該知的財産権を譲り受けた者は、その実施や権利行使に相当程度の時間と費用を要し、時として権利行使が不可能になったり困難を伴ったりするなどの各種の危険も負担するのであるから、相当程度の低額による換価をすることは不合理ではないし、本件譲渡契約のように早期の換価を行う場合には尚更である。したがって、被告らの上記主張は採用の限りでない。











相談してみる

ホームに戻る