著作権重要判例要旨[トップに戻る]







複製権又は翻案権侵害の判断基準(9)
「‘営業’関連書籍・配布資料複製翻案事件」平成190830日東京地方裁判所(平成18()5752 

 著作権法は,「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(同法211号)と定めており,思想又は感情の創作的な表現を保護するものである。
 
したがって,思想又は感情を創作的に表現した言語の著作物について,実質同一の表現を模倣した場合は複製権侵害として,表現上の本質的特徴を直接感得できる程に類似したものを依拠して作成した場合は翻案権侵害として,著作権侵害が認められるものであり,これに対し,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体でないもの,事実の伝達にすぎず表現上の創作性がないものは,著作権法によって保護されず,かかる部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製又は翻案には当たらないと解するのが相当である(最一小判平成13628日参照)。
 (略)
 
[被告著作物目録記載の箇所について]
 
(被告著作物目録1と原告著作物目録1121312について)
 
原告著作物目録1121312と被告著作物目録1とを対比すると,セールスマンが初回の訪問のアポ取りから始めて,訪問先のキーマンから注文を受けるまでのキーマンの心理の変遷を6段階に分けて説明すること(原告著作物目録1121における「必殺6連発の術」,原告著作物目録312における「受注の方程式」,被告著作物目録1における「感動営業の必勝6連続法」)において,共通する。
 
原告著作物目録1121312は,具体的には,最初に「オヤ」,「アラ」,「ウム」,「エ!」,「ムムム」,「ウソー」といった感嘆詞を記載した上で,次に客の心理を二つに分けて簡潔に描写し,(1)「この営業マンは「違う」」……「でも売り込みだから(な)」,(2)「彼は一味違うな」……「でも(ただし)買う意思はないよ」,(3)「そこまで気配りが」……「彼はなかなかいいセンスだ」,(4)「サスガだよ」……「彼に会うのが楽しみだ」,(5)「マイッタ!」……「何かお礼してあげないと…」,(6)「凄い」……「ともかくサンプル発注を」と記載したものである。
 
被告著作物目録1も,具体的には,「アレ」,「オヤ」,「アラ」,「ウム」,「スゴイ」,「マイッタ」というように同一ないし類似した感嘆詞を使用した上で(ただし,使用順序が少しずつ異なる。),次に客の心理を二つに分けて簡潔に描写する部分も,(1)「この営業マンは違う」・(でも売り込みだから),(2)「彼は一味違うな」・(でも買う意思はないよ),(3)「そこまで気配りを」・(なかなかセンスが鋭い),(4)「おお,さすがだ」・「彼と会うのが楽しみだ」,(5)「もう,まいった!」・(何かお礼しないと),(6)「ウワー,凄い」・「注文してあげよう」)と記載されており,上記(1)ないし(6)は,上記原告著作物と実質的に同一の表現を使用しているものである。したがって,被告著作物目録1の上記(1)ないし(6)の表現は,上記原告著作物の(1)ないし(6)の複製に当たるものと認められる(両者間には,わずかに表現上の差異があるものの,この差異が被告著作物目録1について,上記原告著作物に比べ,何らかの創作性を付与しているものと認めることはできないので,翻案というより,複製と認めるのが相当である。また,六つの感嘆詞の使用も,その使用順序が異なり,この部分を複製ということはできないものの,このことは上記(1)ないし(6)の具体的表現の実質的同一性を否定し得るものではない。)。
 
(略)
 
(被告著作物目録5と原告著作物目録41について)
 
原告著作物目録41と被告著作物目録5とを対比すると,商品説明を重視した営業と感動の提供を重視した営業とを区分し,各営業形態の特徴を簡潔に説明する点において,共通する。
 
原告著作物目録41の表現上の本質的特徴は,現状の営業が商品説明を重視するものであるのに対し,セールス革命においては感動のプレゼントを重視するものであるとし,具体的には,「@現状の営業のやり方」→「商品説明80%」「・一生懸命“商品説明”する・売ろうと…“目がギラギラ・たっ” た“1回のみ”(数回)・最後は“価格で勝負”・あとは“神ダノミ”・数回行って…お終い!」VS「Aセールス革命」→「感動のプレゼント90%」「・商品・価格は前面に出さない・売る意識はなくし・感動のプレゼントをする・6回連続する・喜んでもらうことがセールス」と図枠入りで記載され,各営業形態の特徴を簡潔に説明し,両者を対比的に説明している。
 
一方,被告著作物目録5(被告書籍99頁)は,商品説明を重視した現状の営業と感動プレゼントを重視した感動営業とを区分し,具体的には,「現状の営業」→「売込営業商品説明のみ」「・一生懸命“商品説明のみ”・売ろう…“目がギラギラ”・たった“1回の訪問”・最後は“価格で勝負”・お客様無視の“見積り営業”」⇔「感動営業」→「感動プレゼントのみ」「・商品・価格は前面に出さない・売る意識はなくす・感動のプレゼントをする・喜んでもらうことが仕事・注文は後からついて来る」と図枠入りで記載されており,原告著作物目録41の上記表現の本質的特徴を直接感得させるものである。
 
また,被告著作物目録5(被告書籍98頁)も,「商品説明のみでとにかく売ろうと,目がギラギラと血走っていませんか。たった一回の訪問で,最後は値引きで勝負です。・・・商品・価格は前面に出さない。感動のプレゼントをする,喜んでもらうのが仕事です。」と記載されており,これも原告著作物目録41の上記表現の本質的特徴を直接感得させるものである。
 
したがって,被告著作物目録5の上記記載部分は,いずれも原告著作物目録41の翻案に当たるものである。
 
(略)
 
(原告書籍等と被告書籍全体の対比について)
 
原告らは,原告書籍1をはじめとする原告書籍等は基本部分,応用部分,前提部分の三つに分けることができ,一方,被告書籍も同様の構成をとり,各部分が原告書籍等の複製又は翻案であると主張する。
 
しかし,有効な営業活動はいかにあるべきかを提示するために,現状を分析する前提部分,著者の提唱する方法を説明する基本部分,著者の提唱する方法の実践例を説明する応用部分とに分けて論じることは,一般的な手法であって,かかる構成が共通するからといって,具体的な創作的な表現の保護を旨とする著作権を侵害しているものということはできない
 
したがって,著作権侵害が成立するのは,既に指摘した点にとどまり,被告書籍の全部あるいは一部の章が,全体として原告ら書籍等の著作権を侵害するということはできない。











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