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宅建試験教材の図表(説明図・一覧表)の著作物性
「‘出る順’宅建事件」
平成60725日東京地方裁判所(平成4()3549/平成70516日東京高等裁判所(平成6()3132 

【原審】

 原告各表の著作物性について
 
法令は、その性質上国民に広く開放され、伝達され、かつ利用されるべき著作物であり、そのため著作権法131号においても、憲法その他の法令は著作者の権利の目的とならない旨規定されている。したがって、このような性格を有する法令の全部又は一部をそのまま利用したり単に要約したりして作成されたものは著作物性を取得しないというべきである。このような観点に留意しつつ、以下、原告各表の著作物性、並びにこれが認められる場合に更に被告各表が原告各表の著作権を侵害しているかどうかについて検討する。
 
[原告表(1)について]
 
原告表(1)は、…宅建業法…の規定により、建設省及び都道府県にそれぞれ備えられている宅地建物取引業者名簿に登載しなければならない事項及び右事項のうち変更があった場合に同法…の規定により建設大臣又は都道府県知事に届け出なければならない事項を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(1)は法文の内容を法令記載の順番に従い、引用条文のあるものはその引用を含めて簡潔に要約し、条文のとおりの順に配列したにすぎないものであり、表形式でまとめた点、届出の要否を○、×の符号で表現した点を含めて、誰が作成しても表によってまとめようとする限り同様の表現となるものと思われるから、原告表(1)の表現形式についても表現内容についても著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることができない
 
(略)
 
[原告表(2)について]
 
原告表(2)は、…宅建業法…の規定による宅地建物取引主任者の登録を受けている者についての、同法…の規定による都道府県知事への届出義務の発生事由及び届出義務者を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(2)は、法文の内容を引用条文も踏まえて、法文の字義どおり明らかにしたものであり、またその配列も、複数の事由の、ある本人が届出義務者となる場合を一つの欄にまとめて配列すれば、誰が行っても同じような表現になると思われ、原告表(2)の表現形式についても表現内容についても著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることができない
 (略)
 
[原告表(3)について]
 原告表(3)は、…都市計画法…の規定による都市計画の決定権者に関し、各種の都市計画とその決定権者を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(3)は、都市計画法が数か条にわたって定める都市計画で定めるべき区域、地域、地区等の内主要なものを選択し、条文の順序にとらわれず、独自の観点から分類、配列し、これに対応する決定権者を同法と同法施行令の定めの中から拾い上げて、一覧表の形式にまとめて表現したもので、法令の規定内容を出るものではないとはいえ、一定の主題についての複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約した点に創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物であると認められる
 
(略)
 
[原告表(4)について]
 
原告表(4)は、…都市計画法…の規定及びこれに関連する規定により開発行為をしようとする場合に都道府県知事の許可が必要かどうかについて、開発行為の内容と都市計画区域との関係での都道府県知事の許可の要否を一つの表にまとめたものであり、その表現は、次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(4)は、都市計画法の本則と附則、同法施行令の本則と附則にわたって規定された都市計画区域ごとの開発行為についての都道府県知事の許可の要否を一覧表の形式にまとめて表現したもので、基本的に法令の規定内容を出るものではないとはいえ、一定の主題についての複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約した点に創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物であると認められる
 
(略)
 
[原告表(7)について]
 
原告表(7)は、…国土利用計画法…及び関連法令に規定された監視区域の指定手続を時系列的に図表化したものであり、その表現形式は、国土利用計画法…に示された監視区域の指定手続きの要点を6個のブロックにまとめ、これを時系列的に上から下へ並べているというもので、その内容は次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(7)は、国土利用計画法…に規定された監視区域の指定手続及び指定後の調査に関する事項について、準用された条文を合わせて、手続の流れに沿って整理して法文の内容を簡潔に要約し、ブロック化して配列したものであって、創作性が認められ、著作権法により保護される著作物と認められる。

【控訴審】

 
[原告表(5)について]
 
原告表(5)は、…建築基準法…の規定によって定められる建ぺい率を算定するための建築物の建築面積の計算方法の説明図であって、次のとおり表現されているものである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(5)は、建ぺい率計算の基礎となる建築面積を算定するに当たって注意すべき建築基準法施行令…の「建築物…の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。」との規定内容を視覚的に理解しやすいように具体例を持ち出して略図化したものであり、かつ、右規定とは直接関係のない窓や柵等が描かれていて、右規定内容を説明するためにそれなりに工夫されたものとして著作者の個性が表出されているものと認められ、したがって、著作権法で保護されるべき著作物と認めるのが相当である。
 
(略)
 
[原告表(6)について]
 
原告表(6)は、…建築基準法…に規定された建築協定に関する事項のうちから、適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類して、右各項目につき簡潔に要点を列挙し、一つの表にまとめたものであり、次のとおり表現されているものである。
 
(略)
 
建築基準法「第四章 建築協定」には、建築協定の目的(69条)、建築協定の認可の申請(70条)、申請に係る建築協定の公告(71条)、公開による聴問(72条)、建築協定の認可(73条)、建築協定の変更(74条、74条の2)、建築協定の効力(75条)、建築協定の認可等の公告のあった日以後建築協定に加わる手続等(75条の2)、建築協定の廃止(76条)、土地の共有者等の取扱い(76条の2)、建築協定の設定の特則(76条の3)、建築物の借主の地位(77条)につき詳細に規定されているところ、前記認定の事実によれば、原告表(6)は、これらの規定のうちから、宅建試験の受験対策のために必要な事項を選択し、かつ、条文に明示されていない項目をも含めた項目に分類、整理して、各項目の内容につき簡潔な文言で記載し、一覧表にまとめたものであって、全体として創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認めるのが相当である。
 
控訴人らは、原告表(6)における項目の分類は建築基準法第四章の条文配列を基準とするものであって特に目新しいものではなく、創作性が認められるものではないし、8個の項目のそれぞれの内容も条文そのままのもの、あるいは要約した程度のものであって、創作性があるとはいえない旨主張する。
 前記認定のとおり、原告表(6)の8個の項目中には、法文の文言どおり、あるいは法文の要点をほぼ文言どおり記載したものがあり、これら各項目の記載を個々にみる限り、それ自体に著作物性があるとは必ずしも認め難いが、原告表(6)においては、建築基準法69条ないし77条に規定されている事項のうちから、受験対策という特定の目的に必要な事項を選択し、かつ、条文に明示されていない項目をも含めた項目に分類、整理したうえ、各項目の内容につき簡潔な文言で記載して、一覧表にまとめたものであるから、原告表(6)は全体として、著作者の個性が表出されているものとして創作性を有するものと認めるのが相当であって、控訴人らの右主張は理由がない。
 
(略)
 
[原告表(7)について]
 
原告表(7)は、…国土利用計画法…に規定された監視区域の指定手続等を6個のブロックにまとめ、これを時系列的に上から下へ並べているもので、各ブロックの記載内容は次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(7)は、国土利用計画法…に規定された監視区域の指定手続及び指定後の調査、同法…に規定された報告の徴収について、条文に従い、手続の流れに沿って整理し、各規定の内容を要約して記載したものをブロック化して配列したものにすぎず、創意工夫がこらされたものとして著作者の個性が表出されているとは認め難く、著作権法により保護される著作物と認めることはできない
 
(略)
 
[原告表(8)について]
 
原告表(8)は、…国土利用計画法…に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の流れを時系列的に図表化したものであり、その表現形式は、右届出手続の要点をブロック化し、時系列的に関連するブロック間を実線で結び、上から下へ列記しているもので、その内容は次のとおりである。
 
(略)
 
右認定の事実によれば、原告表(8)は、国土利用計画法…に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続及びその後の措置について、必ずしも条文の枠にとらわれずに、また、条文に明示的に記載されていないものも含めて場合分けして整理し、更に、解釈に基づく契約の効力についても含めて要約記載し、ブロック化して配列したものであって、創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認めるのが相当である。
 
控訴人らは、国土利用計画法…に規定されている内容を整理すれば、時系列を軸とするのは当然のことであって、原告表(8)が時系列的に図表化されたものである点に特に創作性があるとは考えられない旨、また、手続の流れについてのブロックの分け方や配列、各ブロックの表現等も条文の記載あるいは解釈から当然のものであって創作性はない旨主張する。
 
しかしながら、前記説示したところ、及び、国土利用計画法…に規定される事項について、どのように選択、分類し、どのような形式で配列するかということは多種多様であり、その点で原告表(8)は著作者の個性が表出されているものと認められることからして、控訴人らの右主張は採用できない。











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