著作権重要判例要旨[トップに戻る]







写真の複製権侵害の成否
カーテン用副資材商品カタログ事件平成70328日大阪地方裁判所(平成4()1958 

【コメント】本件における事実関係は、概ね、次のとおりです。

原告代表者【A】は、広告媒体の企画デザイン業を営んでいたが、カーテン用副資材等を製造販売する株式会社パロマインテックス(以下「パロマ」という。)の依頼で、パロマの顧客にその商品を紹介するため商品の写真等を掲載した総合商品カタログを企画制作していた。そして、【A】又は原告は、平成3年、「本件カタログ」を発行した。

被告は、パロマ同様、カーテン用副資材等の製造販売を業とするものであるが、平成3年ころから、自社の商品を紹介するため、商品の写真等を掲載した「被告カタログ」をデザイン事務所に依頼して制作し、頒布している。

原告は、本件カタログに掲載されたパロマの商品の写真、説明文、図表等のうち「本件写真」等についての著作権及び本件カタログ全体についての著作権を主張し、被告カタログはこれら著作物の複製(又は翻案)に当たるとして、被告に対し、被告カタログの複製の停止等を求めた。 


 [著作物の複製]
 
著作権法21条にいう複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形体を覚知させるに足りるものを再製することをいい、既存の著作物への依拠と既存の著作物との同一性が要件となる。そして、その判断に当たっては、著作権が保護の対象とするのはその表現の手法という抽象的なアイデア自体ではなく、具体的な表現形式であることに注意しなければならない
 
この点に関して、原告は、写真の著作物については、他人の絵画を人の手で模写する場合、模写を行う画家の創作性(オリジナリティ)が新たに加わらない限り絵画の複製に当たるのと同様に、他人の著作物たる写真Aの対象物と同一の対象物を被写体として写真Aと同様の撮影方法(被写体の構図、アレンジ、ライティング、シャッターチャンス等写真の著作物としての創作性を決定する諸要素)を用いて写真Bを撮影する場合に、写真Aの創作性に対して写真Bの撮影者の創作性が何ら付加されていないと認められるときは、写真のAの複製であるといって差支えないとし、さらに、このことを前提に、人物や特定の建築物、特定の風景のように個性があり代替性のない被写体を撮影した写真については、被写体自体が著作物としての写真の創作性を基礎付ける重大な要素となっているから、被写体が異なれば撮影方法が同一でも互いに異なった著作物となるが、被写体が個性のない代替性のある商品である場合には、被写体は写真の著作物の創作性を基礎付ける要素ではなく、撮影者が行った構図の設定、被写体のアレンジ、ライティング、シャッター速度の設定こそが著作物としての写真の創作性を決定するのであり、一般人が写真上から被写体の相違を認識することができず、両者の撮影方法の同一性から一方の写真が他方の写真を再製したものであるとの認識を抱く場合には、一方の写真を他方の複製であると解するのが相当であると主張する。
 
しかし、まず、絵画の複製に当たる「他人の絵画を人の手で模写する場合」と対比すべきは、写真Aの対象物と同一の対象物を被写体として写真Aと同様の撮影方法を用いて写真Bを撮影する場合ではなく、写真Aそのものを有形的に再製する場合であるから、写真Aと同一の被写体を同様の撮影方法を用いて写真Bを撮影したからといって、直ちに写真Aの複製になるとはいい難い。まして、写真Bが写真Aの被写体とは異なる対象物を被写体として撮影したものである場合、被写体が個性のない代替性のある商品であり、同様の撮影方法を用いているからといって、写真Bをもって写真Aの複製であると解する余地はない。原告主張のように、一般人が写真上から被写体の相違を認識することができず、両者の撮影方法の同一性から一方の写真が他方の写真を再製したものであるとの認識を抱くというのは、主として、被写体が個性のない代替性のある商品であることによるのであって、撮影方法が同一のものであることによるのではない。
 [被告写真と本件写真の複製]
 
そこで、被告写真を本件写真と対比するに、確かに、被告写真1は、罫線を引いた黒の地色を背景にしてカーテンフックを撮影したものであり、左から順に…の順で配置している点で本件写真1と共通しており、同様に、被告写真2は、ロール状に巻いた二本のカーテンテープの芯地を立てて、その一端を若干前方に引き出して上から垂らしたものを、向かって右斜め前方より撮影し、グラデーションによる背景を用いている点で本件写真2と、被告写真3は、ギャザーテープをカーテンに使用したものと、左側はギャザーを施し右側は平板に引き延ばしたギャザーテープとを上下二段に配した写真である点で本件写真3と、被告写真4は、バルーンテープをカーテンに使用した写真と、上部はギャザーを施し下部は平板に引き延ばしたバルーンテープの写真とを左右に配したものである点で本件写真4と、被告写真5は、色の異なる複数のフレンジを切ってつなぎ合わせ、一本のフレンジに見せるように撮影している点で本件写真5と、被告写真6は、色の異なる複数のタッセルコードを切ってつなぎ合わせ、一本のタッセルコードに見せるように撮影している点で本件写真6と、被告写真7は、縦に延ばした状態で小さく撮影したタッセルを複数配し、大きく撮影したタッセルをその上部が小さなタッセルの上におおいかぶさるように左下から右上へ斜めに湾曲させて配したものである点で本件写真7と、それぞれ共通している。
 
しかしながら、いずれについても、本件写真の被写体がパロマの商品であるのに対し、被告写真の被写体は被告の商品であるから、前説示に照らし、被告写真をもって本件写真の複製という余地はないものといわなければならない(同様に、被告写真をもって本件写真を翻案したものということもできない。)。











相談してみる

ホームに戻る