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ソフトウェア使用許諾契約の債務不履行が問題となった事例
短文情報配信サービス事件平成220311日大阪地方裁判所(平成19()15556 

 本件ソフトウェアの使用中止等合意の成否(予備的請求)
 
[920日の会合における合意]
 
(原告・被告間における本件ソフトウェアの使用許諾契約の存否)
 
前記のとおり,原告は,P1に対し,本件ソフトウェアの使用を許諾したことが認められるが,当時,設立が予定されていた新会社に対し,直接の使用許諾をしたと認めるに足る証拠はない。
 
もっとも,短文情報配信事業は,会社が事業の主体となることも予定されており,本件ソフトウェアの使用を許諾されたP1が,新会社において,短文情報配信サービスのために,本件ソフトウェアを使用することは当然の前提となっていたと認められる。
 
P1の使用権限の期限)
 
前記のとおり,原告は,P1に対し,本件ソフトウェアの使用を許諾するにあたり,P1が新会社の事業から離れたときは,本件ソフトウェアを削除することを前提として使用許諾し,P1は,同事業から離れるときには,本件ソフトウェアの使用を中止し,サーバから削除することを合意したことが認められる。
 
920日の会合における合意)
 
前記のとおり,平成17920日に開かれた会合において,P1P5(管理人注:被告代表者)の関係を調整することにより,本件事業を継続できるよう協議されたが,その際,P2(管理人注:原告部長)やP6は,P5に対し,前記の事情を踏まえた上で,P1が本件事業から退いた場合には,本件ソフトウェアの使用を中止することになる旨説明し,P5においてこれを了承した
 
なお,上記会合における会話の録音結果には,P5が,本件ソフトウェアの使用を中止し,サーバ等から削除すること及びその時期について,明確に言及した部分は見あたらないが,前記の事実に加え,証拠及び弁論の全趣旨によると,原告が本件ソフトウェアの使用を許諾している相手はP1であること,P1が本件事業から退いた場合には,P1は,本件ソフトウェアの使用を中止し,サーバ等から削除する義務を負うところ,P5は,これらの事情を知りながら,P2らとの会合に際し,特に反対の意見を述べることなく,被告においても同様の義務を負うことを認識している趣旨の発言をしたと認めることができる(少なくとも,前記録音結果には,被告が,無条件に本件ソフトウェアの使用を継続することを前提とした言及はP5からもなく,会話の内容は,むしろ,上記認定に沿うものということができる。)。
 
したがって,被告は,上記会合において,P1が復帰することがないことが確定的となることを期限として,これらの義務を履行する旨約したと認めるのが相当である。
 [P1の本件事業からの撤退]
 
前記のとおり,P1は,平成17822日,本件短文情報配信事業を引き継いだ被告(前記の「新会社」に相当する。)の取締役を退任し,同月末日までに被告を退社し,その後,前記の会合を開いた後,復帰に向けての動きはなく,現在に至るも,本件事業に復帰することはなかった。
 
以上によると,P1は,遅くとも平成179月末日までには,本件事業から確定的に退いたというべきである。
 
[被告の債務不履行]
 
以上によると,被告は,原告に対し,平成179月末日の時点で,本件ソフトウェアの使用を中止し,サーバから削除する義務を負っているというべきであり,被告が,その後も本件ソフトウェアの使用を継続していることは,上記合意の債務の履行を遅滞しているというべきである(ところで,前記によると,P1は,原告から,本件ソフトウェアの使用許諾を受けたが,許諾の期限が経過した場合,P1において,本件ソフトウェアの使用を中止し,サーバ等から削除する義務があると認められる。一方,P1は,被告に対し,本件ソフトウェアを本件事業のために使用することを許諾していたと認められるが,P1への使用許諾が終了した以上,民法613条〔本件のような無償再許諾にも準用を認めるのが相当であると考えられる〕の趣旨を類推し,被告においても,本件ソフトウェアの使用中止とサーバ等からの削除義務が発生していると解することができる。)。
 
[損害]
(1) 債務不履行による消極損害(逸失利益)
 
被告が本件ソフトウェアの使用を継続したことによる逸失利益
 
原告は,被告の債務不履行による逸失利益として,被告が顧客から得た利益640万円と,本件ソフトウェア代金相当額400万円をあげる。
 
しかし,本件において,被告の本件ソフトウェアの使用の継続がなければ得られたであろう原告の利益とは,被告が本件ソフトウェアの使用を中止することにより,本件事業の顧客が,被告との利用契約を解消し,原告と利用契約を締結した結果,上記顧客から得ることのできた利益と解するのが相当である。したがって,被告の得た利益全額をもって,当然に,原告の逸失利益ということはできない(前記の結果,著作権法1142項を適用して損害額を推定することはできない【管理人注:本件における原告の、本件ソフトウェアの著作権侵害を理由とする損害賠償請求等の「主位的請求」については、その請求を退けている】。)。
 
また,原告としては,被告が本件ソフトウェアの使用を中止すべき時点の前後を通じて,他に短文情報配信事業を行う業者が本件ソフトウェアの使用を希望した際,これに使用許諾することに何ら支障はなかったわけであり,本件ソフトウェアの代金をもって,原告の逸失利益ということもできない。
 
そこで,以下,被告が,平成179月末日の経過をもって,本件ソフトウェアの使用を中止することにより,原告が得たであろう利益を検討する。
 
(略)
(2) 債務不履行による積極損害
 
(クレーム対応費)
 
原告は,被告が劣悪な環境下で本件ソフトウェアの使用を継続した結果,苦情処理の対応を行わざるを得なくなったと主張する。
 
証拠には,これに添う供述部分もあるが,具体的なクレームの存在を裏付ける証拠はなく,また,このクレームにより,具体的にどのような損害が生じたのかを認めるに足る証拠もない。
 
(弁護士費用)
 
原告は,予備的請求においても,弁護士費用相当額の損害賠償を求めているが,予備的請求は,合意に基づく債務の不履行から生じる損害であることを考えると,弁護士費用を前記の債務不履行と相当因果関係のある損害ということはできない。
(3) 遅延損害金
 
前記の債務不履行による損害が,履行期である平成179月末日の経過をもって直ちに全額発生するわけではなく,平成17101日以降40か月が経過するまでの間に,継続的に損害が発生し,前記の金額にまでなったと認められる。
 
そして,これらの損害賠償は,請求により履行遅滞となると解するから,請求の趣旨変更の申立書の送達された平成21522日の経過をもって遅滞となり,同月23日から年6%の遅延損害金が発生する。











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