著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ハウツー本のビデオ化による翻案性が問題となった事例
「自転車の乗り方ビデオ化事件」
平成110917日東京地方裁判所(平成10()3297/平成120329日東京高等裁判所(平成11()5087 

【原審】

 
…を総合すると、本件著作物は、大人になってから自転車に乗れるようになった原告Aの体験に基づいて、自転車の練習法について文と絵で記載した、全体で50頁の書籍で、次のような構成になっていることが認められる。
 
(略)
 
…を総合すると、本件コーナーは、幼稚園の年中児に対して補助輪なしで自転車に乗れるこつを教えるためのもので、自転車マンと男の子の対話によって進行すること、その内容は別紙の本件コーナー欄記載のとおりであり、全体の時間は417秒であること、以上の事実が認められる。
 
以上認定したところに基づき、本件著作物と本件コーナーを対比して、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たるかどうかについて判断する。
 
本件著作物は、原告Aの体験に基づいて自転車の練習法について文と絵で記載したもので、読者は特に限定されていないのに対し、本件コーナーは、幼児向けに補助輪なしで自転車に乗れるこつを教えるもので、自転車マンと男の子の対話によって進行するという違いがある。
 
本件著作物、本件コーナーともに、練習前の準備として、自転車の点検を取り上げているが、練習前に自転車を点検するのは、それ自体としては当然のことである。そして、本件著作物では、点検項目は、サドルの高さ、ハンドル、ブレーキ、タイヤの空気の順で記載されているのに対し、本件コーナーでは、タイヤの空気、ハンドル、ブレーキ、サドルの高さの順で点検を行っている上、その具体的な点検方法も異なっている。すなわち、本件著作物では、サドルの高さについては、サドルがいちばん低く固定されているかどうかという点検方法が記載されているのに対し、本件コーナーでは、足が地面にちゃんと着くかどうかという観点から点検を行っているし、ハンドルについても、本件著作物では、ハンドルが前輪と直角に交わるように固定されているかどうかという点検方法が記載されているのに対し、本件コーナーでは、そのような点検方法の指摘はない。また、ブレーキについても、本件著作物では、ブレーキが後輪前輪ともよく効くかどうかという記載であるのに対し、本件コーナーでは、ブレーキのかけ方を説明するのみであり、タイヤの空気についても、本件著作物では、タイヤの空気が抜けていないかどうかという記載であるのに対し、本件コーナーでは、具体的に点検方法を説明している。なお、以上のような点検項目は、自転車の点検項目としてはありふれたものである。
 本件著作物、本件コーナーともに、自転車の練習を、両足を蹴って自転車を走らせ、それができるようになると、ペダルを蹴って進むという順序で行うことを述べているが、そのような自転車の練習方法自体は、アイデアであって、著作権法で保護されるものではない。
 
本件著作物では、まず、自転車に乗って、サドルに左右いずれへも傾かないように座ると、両足先を同時に地面から離しても、少しの間であれば、倒れないという状態について記載し、その後、前輪と後輪が地面に接する点を結んだ線が真っ直ぐ前方に引き伸ばされているところを想定し、その先の方を見ることが重要であることが述べられているが、本件コーナーでは、少し体を前に倒して、両足を地面から離す動作をすることを勧めており、右のような目を向ける方向には触れられていない。
 
本件著作物では、両足で地面を蹴って自転車を発進させる場合の記載の中で、右に述べた目を向ける方向についての記載があるが、本件コーナーでは、体をまっすぐにして前を見るという当然の事項についての説明しかない。続いて、本件著作物、本件コーナーともに、倒れそうになったときの運転方法について触れており、「左のブレーキをかけて、両足を地面に着ける。」という点では、両者ともに同じことを述べているが、そのこと自体は、あたりまえのことである上、具体的な表現はかなり異なっている。
 本件著作物、本件コーナーともに、両足を蹴って自転車を走らせることができるようになると、ペダルを踏む次の段階へ進むとされているが、そのこと自体は、右のとおりアイデアに過ぎない上、両者の具体的な表現はかなり異なっている。
 
本件著作物では、ペダルを踏む際に、上にあがっているほうのペダルを踏むことが記載されているが、本件コーナーには、そのような説明はない。本件著作物、本件コーナーともに、交互にペダルを踏むと述べているが、それは、ペダルの踏み方としてはあたりまえのことであって、ペダルの踏み方を説明する以上、そのようにならざるを得ない。続いて、本件著作物、本件コーナーともに、倒れそうになったときの対処の仕方と止まるときの方法について述べているが、初めてペダルを踏んで進むことを説明する場合に触れるべき重要な点がこの二点であることは明らかである。また、その内容においても、本件著作物と本件コーナーでは、似かよった点があるが、そこで説明されていることは、自転車の運転方法としては、広く知られている常識的な事項であるということができる。そして、両者の具体的な表現は異なっている。
 以上述べたところを総合すると、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たるとまで認めることはできない

【控訴審】

 
本件著作物と本件コーナーの各内容を対比した結果に照らして、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たるものと認めることができないことは、前示(原判…)のとおりである。
 
控訴人らは、被告エヌエイチケイにおいて、本件著作物を入手するまでは本件コーナーの台本の作成に取りかかれず、また、本件著作物を参考にしてもまともな台本を作成できずに、本件著作物の著者自らが台本を完成させた旨主張し、あるいは本件著作物の自転車練習法が誰にでも通用し、いかなる状況の設定にも対応するものである旨主張するが、本件著作物と本件コーナーのそれぞれの内容が前示のとおりである以上、控訴人ら主張の事実が仮に存在するとしても、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たることを認めるまでには至らない。











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