著作権重要判例要旨[トップに戻る]







遺稿追悼集の編集者の注意義務
「遺稿追悼集原稿無断掲載事件」
平成111222日東京高等裁判所(平成11()3483 

 控訴人らは、本件原稿における著者名の記載等の体裁、F自身の私小説ともいうべきその内容、Fによる生前の言動、控訴人Aが原審被告Gから告げられた平成2年夏当時の体験等から、本件原稿がFの作品であると信じたものであり、他方、本件雑誌は、教職員間における同人誌的なものであって、本件遺稿追悼集の発行の約20年も前に刊行された書籍であるから、本件小説が本件雑誌に掲載されていたことを知るのは到底無理であり、しかも、Fの遺品中に本件雑誌が存在していなかった以上、控訴人らが対象物件を本件遺稿追悼集に掲載した行為について故意・過失は存在せず、不法行為は成立しないと主張する。
 
確かに、本件原稿の体裁及びその内容からすれば、本件原稿がFの作品であると信じることにも一応の根拠があり、また、本件雑誌の性格や刊行年月日を考慮すれば、それについての調査が極めて容易であるとはいい難い面があることは否定できないところである。
 
しかしながら、控訴人Bの依頼により正名(管理人注:Fの実弟)から送られた送付原稿の冒頭には、「昭和50年夏草稿 同51年春“文芸広場”掲載のもの」との書き込みがあり、このことから本件雑誌の存在自体は容易に知り得たものと認められるところ、前示のとおり、対象物件についての自筆の原稿が見つけられず、本件遺稿追悼集に収録されたFの作品の中で、F自筆の草稿が見つからず、かつ、出典が明らかにならなかったものが、対象物件だけである以上、教職員の関係者はもとより、実弟の正名等を含む近親者に対してその出典等の調査を行うべきことは、本件遺稿追悼集を刊行しようとする控訴人らにおいて、当然、かつ、容易な事柄であると認められ、正名が隔地に居住していることや勤務上多忙であろうことを理由に、それを怠ることは許されるものではないといわなければならない
 
したがって、控訴人らが、この点についての調査を怠ったまま、対象物件を本件遺稿追悼集に掲載した行為については、過失が存するものと認められ、不法行為が成立しないとする控訴人らの主張を採用することはできない。











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