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画家と画商との関係(絵画の売買契約か販売委託契約かが争われた事例)
『一枚の繪』絵画事件平成120118日東京高等裁判所(平成11()3988 

 右事実から、被控訴人の作品に付された販売価格及びその作品の販売によって被控訴人に支払われる金額は、平成4年から平成610月の間には、ほとんど変動がなかったものと認めることができる。
 
以上の事実に原判決の事実及び理由…を加えて総合すれば、平成4年ころの被控訴人の作品には、6号の絵について約9万円前後、10号の絵について約13万円前後、15号の絵について約18万円前後、20号の絵について約20万円前後の価格が付けられ、実際にもその程度の価格で画商から消費者に販売されていたこと、画商により、また、買取契約か販売委託契約かにより多少の違いはあるものの、その販売価格(上代)の約20ないし30パーセント(額付きの場合は約40パーセント)が画商から被控訴人に支払われていたことが認められる。
 
本件絵画について、…号証に記載された各絵画の大きさ及び右認定に係る平成4年ころの被控訴人の作品に付された価格と画商から被控訴人に支払われていた金額の割合を考慮すれば、これが40万円で売買されるようなものであったとは到底考えられない
 
控訴人は、「一枚の繪」に掲載されている価格は、絵画の制作者自身に支払われる対価とはかけ離れたものであると主張する。確かに、被控訴人に支払われた金額は、「一枚の繪」に掲載されている価格の25ないし30パーセントであるけれども、そのことを前提としても、なお、本件絵画が40万円で売買されるようなものであったと考えられないことは前認定のとおりである。
 
また、控訴人は、「一枚の繪」について、画商が評価する価格とも大きく異なった独特の価格付けをしており、客観性のある評価ではないとも主張する。しかし、前記認定の事実からみれば、「一枚の繪」が被控訴人の作品に付した価格は、画商である株式会社サンスが被控訴人の作品に付した価格とも一致しており、しかも、画商である有限会社ダンシングギースギャラリー及びアートヨシムラのそれと比べても不自然なところはないものというべきである。
 
さらに、控訴人は、平成58月以後の価格は、平成4年当時とは全く事情を異にしていると主張する。しかし、被控訴人の作品に付された販売価格及びその作品の販売によって被控訴人に支払われる金額は、平成4年から平成610月の間には、ほとんど変動がなかったことは、前認定のとおりである。
 
控訴人の主張は、いずれも採用することができない。
 
控訴人は、被控訴人は控訴人を全面的に信用し、被控訴人は控訴人にすべてを任せていたから、被控訴人が控訴人に進んで引き渡した本件絵画は、売買されたものとみる以外にないと主張する。
 
しかし、被控訴人が控訴人を信頼していたからこそ、まだ所有権を移転しておらず、対価も受け取っていないのに本件絵画を引き渡したともみることができ、そうすると、被控訴人が控訴人を信頼していたことは、被控訴人から控訴人への本件絵画の引き渡しが販売委託契約であったことを推認させる事情ということもできるところである。
 また、控訴人の主張するところが、被控訴人は、控訴人に対し、売買とするか否か、売買とする場合の代金額をいくらとするか等を含め、本件絵画につきどのように処理されても異議を述べないとの限度まで任せていた、との趣旨であるならば、本件全証拠によってもそのような事実を認めることはできない。
 
控訴人は、被控訴人は、控訴人に見出されたことにより、実質的に得たものとして、ある程度の画家としての評価があるから、このような関係を取引としてみるときは、売買契約と認定されるべきであると主張する。しかし、被控訴人の作品は、平成4年ころには既に複数の画商や美術雑誌によって一定の価格で評価され、販売されていたものであるうえ、平成4年末ころから平成5年にかけての本件に係る控訴人の宣伝・販売活動は、被控訴人の作品に付された販売価格及びその作品の販売によって被控訴人に支払われる金額を平成610月の間には、ほとんど変動させるものではなかった程度のものと認められる。そうすると、被控訴人にとって、控訴人との取引は、被控訴人が従来他の画商から評価されていた価格とかけ離れた低い金額で控訴人に自分の作品を売却するという経済的損失を被ってまで、これをする必要があったものとは認められない。したがって、本件における控訴人の宣伝・販売活動によって、画家としての被控訴人の評価が多少高まったとしても、そのことは、控訴人と被控訴人との契約が、売買であることの証左となるものではない。
 
控訴人は、被控訴人が原審における本人尋問において、「アート・トップ」に被控訴人の作品が掲載される理由について、「ご自分(判決注・控訴人を指す。)で私の絵を売るために載せるのかなと思いました。」という趣旨を繰り返し供述していることをもって、控訴人が被控訴人から買い取った絵画を、控訴人が売りに出すということを述べていると主張する。しかし、右供述は、控訴人が被控訴人から販売委託された本件絵画を、控訴人が販売しようとしていると思ったという趣旨に十分理解され得るものであるから、原告の主張は、採用することができない。











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