著作権重要判例要旨[トップに戻る]







未公表の手紙の書籍への掲載が問題となった事例
「三島由紀夫手紙事件」平成111018日東京地方裁判所(平成10()8761/平成120523日東京高等裁判所(平成11()5631 

【コメント】本件は、原告ら(亡F(筆名G、以下「G」という。)の相続人)が、Gが書いた未公表の手紙を掲載して、書籍を発行した被告らの行為が、@原告らが相続したGの当該手紙に係る複製権を侵害する行為であり、また、AGが生存していたならばその公表権の侵害となるべき行為であると主張して、当該書籍の出版等の差止め、損害賠償の支払及び謝罪広告等を請求した事案です。 

【原審】

 
損害額
 
そこで、被告らの右複製権侵害及び著作権法60条の規定に違反する共同不法行為によって生じた損害について検討する。原告らに生じた損害額は、以下のとおり算定するのが相当である。
 
被告会社は、本件書籍を価額1429円(消費税を除く。)で、約9万冊(90527冊)を販売したこと、その販売総額は約13000万円弱であること、書籍を出版する場合の著作権の使用料は、販売額のおおむね10パーセントと解するのが相当であること、さらに本件書籍中における本件各手紙の占める分量的割合、Gの執筆に係る本件各手紙の本件書籍に占める重要性等一切の事情を考慮すると、複製権侵害によって、原告らに生じた損害額は、右販売総額のおおむね4パーセント弱に当たる500万円と認めるのが相当である。
 
よって、原告らそれぞれが被った損害額は、右金額の21に当たる250万円となる。
 
なお、原告らは、複製権侵害による損害は、被告会社が本件書籍を販売したことによる利益額を基礎として算定すべきであると主張するが、原告ら自らは、書籍の出版を行っていないことに照らして、採用できない。さらに、著作権法60条の規定違反による損害を認めることもできない。

【控訴審】

 
損害賠償について
 
控訴人らは、何人かの文学評論家が控訴人【C】の文学を評価し、本件各手紙の本件書籍における重要性に言及していないことを根拠として、損害賠償についての原判決の判断を非難する。
 
しかし、著作権侵害による損害賠償は、文学的価値ではなく財産的価値の侵害による賠償であって、【F】(管理人注:原審の「G」)と控訴人【C】の知名度や文学者としての名声を比較すれば、本件各手紙が本件書籍において、財産的に重要なものであること、すなわち、本件書籍購入の意欲をそそり、本件書籍の商業的成功をもたらすという点で重要なものであることは明らかである。評論家が、文学的観点から、控訴人【C】の文学を評価し、本件各手紙の重要性に言及していないとしても、そのことによって、本件書籍における本件各手紙の商業的重要性が否定されるものではない。
 
また、控訴人らは、本件各手紙が著作権者によって公表される可能性はゼロ、したがって逸失利益もゼロというのが通常の感覚であると主張する。
 
しかし、本件各手紙は、著名な文学者である【F】の著作物であるから、その文学的価値が高いか否かはともかくとして、これについての著作権に相当な財産的価値があることは明らかである。そして、このように財産的価値のある著作権を侵害された場合には、著作権者に損害が発生すると推認すべきであることは当然である。控訴人らは、本件各手紙が著作権者によって公表される可能性がゼロであると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。本件各手紙を公表すれば【F】の名誉声望が低下することはあるとしても、そのことを受忍した場合には、著作権者において本件各手紙を複製して販売する等して経済的利益を得ることが容易であることは明白である。そうである以上、そのようにして経済的利益を得るか否かは、著作権者の意思次第であって、著作権者である被控訴人らがそのような選択をする可能性がゼロなどということは到底できないのである。控訴人らの主張は、採用できない。











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