著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権譲渡の黙示の合意の成立を否定した事例(5)
「屋台キャラクターの著作権譲渡代金請求事件」
平成120626日東京高等裁判所(平成11()6204 

 本件契約の成否について
 
(略)
 
…によれば、平成61013日、控訴人の自宅兼事務所において、ソーセージの試食会が行われ、控訴人の兄のKらのほか、被控訴人CG及びFも控訴人宅を訪れたこと、その際、控訴人は、被控訴人Cら被控訴人会社の者に対し、被控訴人会社が、前示屋台を使用したソーセージ等の販売営業の他に、本件著作物を使用する場合には、著作権料を請求する旨申し向け、本件著作物に係る著作権を100万円で買い取ることなど三通りの方法を提示して、いずれかを選択するよう要求したこと、これに対し、被控訴人Cら被控訴人会社の者は、右100万円での著作権の買取りを含め、控訴人の要求に応ずる旨の返答はしなかったことが認められる。
 
しかるところ、甲…号証(控訴人の陳述書)及び控訴人の原審における本人尋問の結果中には、同日午後1030分過ぎに、被控訴人C及びFが、被控訴人Cの運転する自動車に乗って控訴人宅を辞去した後、数分してから、右車中のFより控訴人宅に電話があり、「100万円を支払う方法で行きたいと被控訴人Cが言っている。ただし、支払はしばらく待って貰いたい。」との返答があったので、控訴人はこれを了承した旨の供述及び供述記載があり、甲…号証にも、これに沿う供述記載がある。
 
しかしながら、次の各事情に照らして、右各供述及び供述記載部分を直ちに信用することはできない。
 
被控訴人会社の代表取締役には、その設立時からGが就任し、平成61013日当時も同人が代表取締役であったことは、前示(原判決…)のとおりであるところ、…によれば、控訴人は、被控訴人会社代表取締役としてのGの名刺や、被控訴人会社取締役としての被控訴人Cの名刺を作成したことが認められ、平成61013日当時、控訴人は、Gが被控訴人会社の代表取締役であって、被控訴人Cはそうではないことを知っていたものと推認することができるそうだとすると、仮に、前示のFからの電話があって、控訴人において、それが、被控訴人会社としての本件契約締結の意思表示であると考えたとすれば、控訴人としては、被控訴人会社の代表者としてのGとの間で、契約書面の作成に及ぶか、少なくとも、同人との間で本件契約の確認をすることが自然であると考えられるが、かかる契約書面の作成や確認行為があったことを認めるに足りる証拠はない
 
この点について、控訴人は、被控訴人Cが実質的な代表者として被控訴人会社を経営していたとか、契約書面は、その作成の商慣習があるわけでもなく、被控訴人Cが不要であると言ったので取り交わさなかった等と主張するところ、前示のとおり、被控訴人会社の販売するソーセージが株式会社福生ハムの製品であることや、被控訴人会社の当初資金を被控訴人Cの知人から借り入れたこと等に鑑みて、被控訴人Cが被控訴人会社の事業活動の中心となっていたことが窺われるが、同人が実質的な代表者として被控訴人会社を経営していたとの事実まで認めるに足りる証拠はないのみならず、仮に、控訴人において、そのように考えていたとしても、前示のとおり、控訴人は、少なくとも形式上の代表取締役はGであるとの認識を有していたのであるから、控訴人が、被控訴人会社の代表者としてのGとの間で、前示契約書面の作成や確認行為に及ばなかったことが、前示内容の電話がFからあったことを疑わせる事情であることに変わりはない
 
被控訴人会社が、平成6105日までに、控訴人に対し、本件著作物に関するものを含め、第一契約の代金として合計130万円を既に支払っていたことは、前示のとおりであるところ、…によれば、少なくとも第一契約の締結に至るまでは、控訴人から、被控訴人CGらに対し、控訴人が第一契約に基づいて制作する社章及び商章のロゴマーク並びにキャラクターを、屋台を使用したソーセージ等の販売営業の他に使用する場合には、別途著作権料の支払を要するとの説明はなく、被控訴人CGらは、右130万円の支払により、被控訴人会社において、本件著作物を自由に使用することができるものと認識していたことが認められる。そうすると、同月13日に、控訴人から、前示認定の要求を受けたからといって、被控訴人会社が、その日のうちに右要求に応じて、100万円の支払を約したとすることは不自然である。
 
この点につき、…中には、控訴人は、平成61013日以前から、被控訴人Cらに対し、著作権についての話をし、本件著作物の著作権料が右130万円の支払とは別である旨を説明しており、また、同日にも、その旨説明して、納得を得たとの供述及び供述記載があるが、原審における本人尋問において、当該説明を再現するよう求められた際の控訴人の供述内容が、曖昧で説得性に乏しいことに照らして、前示のとおり、被控訴人会社において、本件著作物を自由に使用することができるものと認識していた被控訴人CGらが、控訴人の説明によって、著作権料ないし著作権買取代金を別途支払う義務があることを了承したものとは認め難い。
 
前示のとおり、平成61013日当時、被控訴人会社は、資金的に余裕がある状態ではなかったのであるから、当時行っていた屋台を使用したソーセージ等の販売営業以外の別の営業を行うために、同日の段階で、本件著作物に係る著作権を買い取る契約を締結し、新たに100万円の代金債務を負担したとすること自体、考え難いことであるのみならず、まして、被控訴人Cらにおいて、控訴人の要求に返答を与えないで控訴人宅を辞去したにもかかわらず、わざわざ帰途の車中から控訴人に電話をして、本件契約の締結に及ぶ必要性は何ら考えられず、その点も極めて不自然であるといわざるを得ない。
 控訴人は、この点に関連して、被控訴人会社が、将来はフランチャイズ展開することを企図しており、実際に青山店の店舗展開も実行したから、本件著作物を自由に使用するために、その著作権を取得する必要性があったと主張するが、…によれば、被控訴人Cが控訴人に対し、平成61013日よりも前に、被控訴人会社として全国的にフランチャイズ展開をしたいと述べたことはあるものの、何ら具_体的な計画ないし目途があったわけではなく、青山店開店の企画が持ち上ったのも平成6年末ないし平成7年始め頃であったことが認められるから、いずれも、資金的に余裕のない被控訴人会社が、平成61013日の段階で、本件契約を締結する必要性を裏付けるものということはできない。
 
右のとおり、Fから控訴人に対し、控訴人主張の内容の電話があったとする前掲甲…号証の供述記載及び控訴人の原審における供述は、直ちにこれを信用することはできず、他に、本件契約の締結の事実を認めるに足りる証拠はない
 
よって、その余の事実について判断するまでもなく、控訴人の本件請求は理由がない。











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