著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権の信託的譲渡の範囲が問題となった事例
「‘ビートルズ’公演差止仮処分事件」昭和540831日東京地方裁判所(昭和54()7991 

【コメント】本件における「申請の理由」及び「債務者の抗弁」は、次のとおりです。

債権者は、「本件楽曲」の著作権者である。

債務者は、「ビートルズ」の4人のメンバーに扮して本件楽曲等を演奏(歌唱も含む。以下同じ)することを目的として結成されたところの、ABCD4人からなるグループが本件楽曲を演奏することを主たる内容とする「ビートル・フイーバー」の公演(以下、「本件公演」という。)を日本で行うことを企画して、同グループを日本に招聘し、右企画に基づいて別紙記載の年月日に、同記載の場所で本件公演を主催及び実施した。そして債務者は、今後別紙記載の年月日に、同記載の場所で、本件公演を継続する予定であつて、右公演において本件楽曲を演奏する予定である。

債権者は、昭和547月ころに日本で開催予定の「ビートルマニア」という公演において、本件楽曲を演奏することを許諾しており、「ビートルマニア」は、「ビートルズ」の4人のメンバーに扮したところの4人の音楽家が「ビートルズ」の4人のメンバーの演奏と極めて類似する演奏を行うものであつて、アメリカ・ニユーヨーク市・ブロードウエイにおいて長期公演をなして極めて好評を博した。ところで、本件公演は「ビートルマニア」の公演を模倣し、これと極めて類似する内容のものであるから、仮に本件公演が予定通り全て開催された場合には、「ビートルマニア」の日本における公演が中止される公算が大きく、また中止されないまでもその公演に対する影響は多大なものがあり、その結果債権者は不測の損害を蒙るおそれがある。

よつて、債権者は、「債務者は別紙第三目録記載の「ビートル・フィーバー」の公演において、別紙第一目録記載の楽曲を演奏してはならない。」旨の本件仮処分決定の認可を求める。

債務者の抗弁:「債権者は、社団法人日本音楽著作権協会(以下、「協会」という。)に対し、本件楽曲について、著作権の管理権を信託譲渡した。しかして協会は、この管理権に基づき、使用許諾権、使用料徴収権並びに無断使用者に対する使用差止請求権を有するに至つたから、著作権者である債権者は債務者が本件楽曲を債権者の許諾なく演奏したとしても、協会との右信託譲渡契約の結果、債務者に対し、本件楽曲の使用すなわち演奏の差止めを請求する権利を有しない。」 


 そこで、債務者の抗弁につき判断する。
 
…を総合すれば、次の事実が一応認められる。
 
債権者は、昭和5221日、株式会社新興楽譜出版社との間で、本件楽曲に関する契約を締結する際、本件楽曲を「ビートルズ」のグループ又はそのメンバーをテーマとするなどの演劇の上演において又はこれに関連して使用(演奏)することを他へ許諾する権利を自己に留保しつつ、そのような演劇の上演に伴わず、又はこれと関連をもたずに使用(演奏)する場合につき、右契約により本件楽曲の使用(演奏)を他へ許諾する権利を株式会社新興楽譜出版社に付与したこと。
 
その後株式会社新興楽譜出版社は、債権者から付与された、本件楽曲の使用(演奏)を他へ許諾する権利を協会へ信託譲渡したこと。
 
本件公演は、BCほか2名がそれぞれ「ビートルズ」の4人のメンバーに扮して登場して本件楽曲を「ビートルズ」の4人のメンバーが行つた演奏そのままに演奏すると同時に、舞台中央のスクリーンに1960年代の「ビートルズ」全盛時の社会的事件並びに「ビートルズ」の公演の実況が映写され、これら演奏とスクリーンの映写とが融合して、「ビートルズ」そのものを表現していること。
 
(略)
 以上の認定事実を総合すれば、本件公演はまさに「ビートルズ」そのものを描くところの音楽劇であつて、その中で本件楽曲が使用すなわち演奏されているものと解すべきところ、このような態様における本件楽曲の演奏について許諾を与える権利を有しているのは債権者であつて協会でないのであるから、債務者が債権者の許諾を得ることなく、本件公演において本件楽曲を演奏するおそれがある場合には債権者においてその差止請求をなしうるものといわなければならない。
 
よつて、債務者の抗弁は採用できない。











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