著作権重要判例要旨[トップに戻る]







既存の著作物への依拠性(11)-写真の依拠が問題となった事例-
「すいかの写真事件」平成130621日東京高等裁判所(平成12()750
 

 被控訴人写真が本件写真に依拠したものかどうかについて
 
本件写真と被控訴人写真との表現の類似性
 
本件写真と被控訴人写真とを,その使用する素材について比較すると,いずれも,大きい円球の西瓜1個,小さい円球の西瓜2個,楕円球の西瓜ないし冬瓜1個,半分に切った大きい楕円球の西瓜ないし冬瓜1個,略三角形に切った西瓜6切れ,葉や花を伴った西瓜の蔓1本,青いグラデーション用紙を選択しており,相違するのは,氷の有無,籐の籠とざるの違い,西瓜と冬瓜の違い,籠ないしざるに入った楕円球の西瓜あるいは冬瓜の大きさの違いだけである。西瓜を主題(モチーフ)とする写真を撮影する場合,多種多様な西瓜があり,その数も任意に選択できるのであり,切り方も自由に選べるのである。本件写真と被控訴人写真のように,西瓜の種類,個数,切り方から,葉や花を伴った西瓜の蔓があること,青いグラデーション用紙を使用することまで一致することは,偶然には生じ得ないこととはいえないであろうが,偶然に生じる確率を大きいものとすることもできないであろう。
 
また,本件写真と被控訴人写真とを,被写体の配列の観点からみると,いずれも,前面中央の半分に切った大きな楕円球の西瓜ないし冬瓜の上に,略三角形に切った6切れの西瓜を傾斜させて一列に並べて配置し,その背後には,大きい円球の西瓜を配置し,その左側に小さい円球の西瓜を配置し,右側には籐の籠ないしざるを用意して,同所に大きい楕円球の西瓜ないし冬瓜を配置し,その右前方に小さい円球の西瓜を配置し,これらの西瓜の上には,葉や花を伴った西瓜の蔓1本を配置し,背景として,グラデーション用紙により盛夏を思わせる青色の色彩としていることが認められる。
 
本件写真の素材自体は,西瓜(切ったもの,丸のままのもの),西瓜の蔓,ブロック状の氷,籐の籠,背景としての青であって,日常生活の中によく見られるありふれたものばかりであることが明らかである。しかし,その構図,すなわち,素材の選択,組合せ及び配置は,全体的に観察すると,西瓜を主題(モチーフ)として,人為的に,夏の青空の下でのみずみずしい西瓜を演出しようとする,作者の思想又は感情が表れているものであり,この思想又は感情の下で,前記のありふれた多数の素材を,本件写真にあるとおりの組合せ及び配置として一体のものとしてまとめているものと認められる。
 
他の者が,このような作為的な表現についての発想を,控訴人とは全く別個に得る可能性を全くないものとすることはできないであろう。しかし,このように一致した配置及び構図の着想に至ったのが偶然であったとしたら,相当に珍しいことが生じたものということは許されるであろう
 
被控訴人Bは,こうした配置は,写真家であれば誰でも思いつく定石の範囲を超えるものではない旨主張する。
 
しかしながら,被控訴人Bは,上記主張を裏付けるための何らの立証をもしていない。もし,本件写真がありふれたものであるならば,本件写真のような素材を選択し,配置した写真,西瓜の背景としてグラデーション用紙を利用した写真等を,証拠として提出できるはずである。しかし,そのような作品は,証拠として全く提出されていない。すなわち,本件全証拠を検討しても,そのような作品を見いだすことはできない。被控訴人Bは,自分自身プロの写真家なのであるから,上記主張が正しいなら,自己が過去に撮影した膨大な写真の中から,被控訴人写真と類似する写真を提出することができるのではないかと思われるのに,これをしていないのである。被控訴人Bが自己の撮影した写真として提出する…号証によれば,同人は,北海道の大自然,風景,動植物,食材等のありのままの姿を撮影することを作風としていることが認められ,同事実からすると,被控訴人写真においてなされている作為的な表現は,被控訴人Bの作風とは,著しく異なっているものと考えざるを得ないのである。
 
以上,検討したところによれば,本件写真と被控訴人写真との上記類似性は,被控訴人写真が本件写真に依拠して作成されたものであることを強く推認させる事情となっているものというべきである。
 
(略)
 
以上の認定を総合すると,被控訴人Bは,本件写真に依拠して被控訴人写真を撮影したと認められ,かつ,被控訴人Bは,本件写真に依拠しない限り,到底,被控訴人写真を撮影することができなかったものと認められる。











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