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将来的な事業スキームの合意の成立を否定した事例
次世代インターホンシステム契約事件」平成180210日東京地方裁判所(平成16()14468 

【コメント】本件における原告の第1の請求は、「本件システム」の開発・運用に関する原告・被告間の「本件事業スキーム」の合意に基づき、被告は、原告が本件システムの開発・運用に当たり費やした各種開発費・作業費等を回収するまで本件事業スキームを実現し、原告による開発費等の回収を妨害しない債務を負うにもかかわらず、被告が「本件保守契約」を破棄して原告の開発費等の回収を妨害するなどしたとして、債務不履行(本件事業スキームの合意違反)又は不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求めたものです。

 
なお、「本件システム」とは、被告がその開発を企画した、従来のインターホンを機能高度化した次世代インターホンシステムのことで、「本件事業スキーム」とは、本件システムの開発・運用に関する原告・被告間の事業スキームとして、原告・被告間で合意したと原告が主張する事業スキームのことです。 


 本件事業スキームの合意の成否について
 
(略)
 以上の事実によれば,本件システムのプロジェクト立上げ当初,原告と被告の担当者レベルでは,プロジェクトが順調に展開された場合,被告が本件システムの営業・販売を担当し,原告は,本件システム端末の調達を行い,利益を上乗せしてこれを被告に販売するとともに,本件システムのリモート保守を受託するという取引に発展することがプロジェクトの方向性として想定されていたことが認められる。また,その後も,その時々の状況に応じて軌道修正しながらも,原告・被告の各担当者は上記の方向性に基づいてプロジェクトを進捗・展開させたことが認められ,本件使用許諾契約及び本件保守契約はその一環として位置づけられるということができる。
 
しかしながら,本件事業スキームの合意が成立したことを示す覚書等の文書は存在しないし,また,被告の担当者であったDは被告を代表する権限を有しなかったところ,本件事業スキームを合意するについての被告社内の決裁手続が行われたとの事情も認められない。さらに,その後の本件使用許諾契約及び本件保守契約の締結に至る経緯,とりわけ,本件保守契約の締結に至るまでは,原告が被告に対し,飽くまで要望として本件システムの運用・保守業務を受託することを提案していたこと,被告は,台湾メーカーによる発注台数の確約をできないことを理由の一つとして「協定書」の締結を拒否したこと,原告と被告は,保守契約の締結に向けて交渉を継続し,長期間での契約を望む原告の要望にもかかわらず,契約期間を1年とし,期間満了の1か月前までに終了の意思表示があれば更新されないことを内容とする本件保守契約を締結したことにかんがみると,本件事業スキームの合意の存在を認めることはできないといわなければならない。
 
したがって,被告が本件保守契約を破棄して原告の開発費等の回収を妨害したことが本件事業スキームの合意違反の債務不履行又は不法行為であることを理由とする原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
 
(略)
 
本件使用許諾契約の錯誤無効について
 
【管理人注:「本件使用許諾契約」とは、被告・原告間で締結した、本件システムの端末ソフトウェアに関する使用許諾契約のこと】
 本件使用許諾契約の錯誤無効に関する原告の主張は,原告・被告間で本件事業スキームの合意が成立したことが前提とされているところ,前記に説示のとおり,本件事業スキームの合意の成立は認められない。
 
原告が目論見として有していた本件事業スキームないしこれに類する事業計画は,本件使用許諾契約締結の動機として位置付けられるものであるところ,原告が本件使用許諾契約の締結に際し,このような目論見を意思表示の内容として被告に表示したことを認めるに足りる証拠はない
 
よって,本件使用許諾契約の錯誤無効をいう原告の主張は,理由がない。











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