著作権重要判例要旨[トップに戻る]







教科書教材会社の注意義務
小学校用国語教科書準拠国語テスト事件」平成160629日東京高等裁判所(平成15()2467等) 

 一審被告らは,過去30年にわたり,国語教科書に掲載された一審原告らの本件各著作物を,一審原告らの直接の承諾を得ることなく副教材に複製してきたことは,当事者間に争いがない。
 
他人の著作物を利用するに当たっては,それが著作権法その他の法令により著作権が制限され,著作者の承諾を得ない利用が許される場合に該当し,著作権を侵害することがないか否かについて十分に調査する義務を負うというべきであり,そのような調査義務を尽くさず安易に著作者の承諾を得なくても著作権侵害が生じないと信じたものとしても,著作権侵害につき過失責任を免れないというべきである。
 
一審被告らは,昭和4312月ころより,一審被告らを含む図書教材会社が教科書会社に対し謝金を支払うことにより教科書掲載作品の著作権を含む権利処理が行われたものとすることが業界慣行となり,その慣行が今日まで維持されていたなどとし,上記著作権侵害につき,一審被告らに過失がない旨主張する。
 
(略)
 
上記認定の経過に照らせば,一審被告らを含む図書教材会社は教科書掲載作品を原著作者の承諾を得ずに利用することがその著作権を侵害するとの認識を欠いていたものと認められ,一審被告らが加盟する日図協が「小学校国語教科書著作者の会」との間で上記協定を締結したのは,教科書掲載作品の原著作者側から教科書掲載の本件各著作物に係る著作権の侵害を指摘されるなどしたことから,上記のような教科書掲載作品の利用が不適切であることを認識した結果であることを示すものと認められる。
 
しかしながら,…によれば,上記謝金は,図書教材会社が教科書会社の編集著作権を侵害することなく,適法な範囲でこれを利用することを前提にその利用についての教科書会社の協力に対する謝礼の意味で支払われるものであり,原著作者に対する著作権料は含まれておらず,したがって,それが一審原告ら原著作者に分配されていた事実はないことが認められる。そして,上記謝金の支払に関する和解の調書及び上記基本契約に係る契約書には上記謝金に原著作者に対する著作権料が含まれる旨の記載はないし,また,…によれば,上記謝金の支払に関する交渉過程において,教科書掲載作品の原著作者が関わった事実はなく,上記契約ないし上記謝金の支払が原著作権の利用関係に係る問題も含めて解決するものであるかどうかについて協議されたことはうかがわれないし,一審被告らが上記謝金の支払により教科書掲載作品の著作権を含む権利処理が行われたものと考えていたとしても,そのように誤信したことには過失があるといわざるを得ない
 
上記の主張に加えて,一審被告らは本件国語テストへの本件各著作物の複製が適法な引用に当たると信じていたと主張する。…
 
しかしながら,本件国語テストにおける本件各著作物掲載の態様は,前記引用に係る原判決…に認定のとおり,本件各著作物の一部をそのまま掲載したものであって,「その要旨を知ることさえできない。」というようなものではなく,上記仮処分で問題となった学習書とは態様を異にしているから,この決定があるからといって,一審被告らにおいて教科書掲載作品の本件国語テストへの複製が適法な引用に当たると信じていたとしても,そのことに相当の理由があるとはいえない。
 
また,一審被告らは,教科書掲載作品の一部をテスト等に利用することは「適法引用」であり,上記の利用については原著作者の許諾を要しないという見解は,裁判所,検察庁,監督行政庁,教科書会社と図書教材会社との間の教科書掲載著作物の利用をめぐる裁判の当事者双方の各訴訟代理人であった著作権法の権威者たちが,明示的・黙示的に支持してきたものであるとも主張する。
 
しかしながら,教科書掲載作品を本件国語テストのような態様で利用することが「適法引用」に当たり著作者の許諾を要しないという見解を,裁判所,検察庁,監督行政庁,上記裁判の相手方訴訟代理人が支持してきたとの事実を認めるに足りる証拠はない。…
 
また,一審被告らを含む図書教材会社側に立って,教科書会社側との裁判を含む紛争の処理に当たってきた訴訟代理人が,上記の「適法引用」の見解を採りこれを相手方に主張したとしても,その者が当該紛争処理に関してその依頼者側に有利な法律構成をし,これを相手方当事者に主張することは職務上の義務としてなされたものというべきであるから,これを客観的な法律学上の見解と同視することはできず,このことをもって,一審被告らが教科書掲載作品の本件国語テストへの利用が「適法引用」に当たると信じたことに相当の理由があるとすることはできない。
 
さらに,弁論の全趣旨によると,著作者の側から,長年にわたって,本件国語テストにおける本件各著作物の無断利用について権利主張がされてこなかったことが認められるが,権利主張がないからといって違法行為をしてもよいことにならないことは明らかである。
 
以上述べたところからすると,一審被告らには,本件各著作物を本件国語テストに掲載して,一審原告らの本件各著作物に係る著作権(複製権)を侵害したことについて過失があるものというべきであり,また,著作者人格権の侵害についても過失があるものというべきである。











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