著作権重要判例要旨[トップに戻る]







同一書籍に内容の異なる「はしがき」を掲載した行為を同一性保持権侵害と認定した事例
「書籍『だれでもできる在宅介護』事件-差戻審-
平成160929日東京地方裁判所(平成16()4605/平成170224日東京高等裁判所(平成16()5468 

【コメント】本件は、原告が、被告らに対し、@「被告書籍」は「原告書籍」を複製したものである、A被告書籍の表紙及びはしがき部分は、原告書籍の表紙及びはしがき部分を改変したものである、B被告書籍は著作者として原告の氏名を表示していないから、被告書籍を印刷、製本、頒布した被告らの行為が、原告書籍について原告の有する著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害に当たると主張して、損害賠償を求めた事案です。

 
なお、原告書籍と被告書籍の態様は、概ね次のとおりです。

 原告書籍と被告書籍とは、目次及び本文は同一であるが、以下の部分において異なる。
@ 表紙及び背表紙部分:表紙部分について、原告書籍には、その上部に、三段に分けて「さしのべる手・ふれあう心」、「だれでもできる在宅介護」、「−いざというときに−」と記載されているのに対し、被告書籍には、その上部に、三段に分けて「さしのべる手・ふれあう心」、「だれでもできる在宅介護」、「−いざというとき編−」と記載され、その下部に被告組合の名称が記載されている。背表紙部分について、原告書籍には、その上部に、「だれでもできる在宅介護」、「−いざというときに−」と記載されているのに対し、被告書籍には、その上部に、「だれでもできる在宅介護」、「−いざというとき編−」と記載され、その下部に被告組合の名称が記載されている。
A はしがき部分:はしがき部分について、原告書籍には、「発刊にあたり」と題する、作成名義人の記載がない文章(以下「原告書籍はしがき」という。)が掲載されているのに対し、被告書籍には、「発刊にあたり」と題する被告Y名義の文章(以下「被告書籍はしがき」という。)が掲載されており,両者の記載内容は異なっている
B 奥付部分:奥付部分について、原告書籍には、同書籍を東京都在宅介護研究会が発行し、原告が編集したことを示す記載があるのに対し、被告書籍にはそのような記載はなく、その他の部分を含めても被告書籍には著作者として原告の氏名は表示されていない。 


【原審】

 
[発刊にあたりの変更,氏名を表示しなかった点について]
 
前記認定のとおり,被告書籍のはしがき部分には,原告書籍にはない被告書籍はしがきが掲載されており,かつ,被告書籍には著作者として原告の氏名が表示されていない。そして,…によれば,被告書籍,前訴被告書籍及び前訴目録記載の書籍のはしがき部分に掲載されている「発刊にあたり」と題する文章の内容がほぼ同一であるのに対し,原告書籍はしがきはこれらと全く異なっていることが認められることからすれば,原告書籍はしがきを著作した者は,原告書籍を作成した原告であると推認することができる。
 
したがって,被告らが被告書籍のはしがき部分に被告書籍はしがきを掲載した行為,及び,被告組合及び被告共立が被告書籍に原告の氏名を表示しなかった行為は,いずれも【原告書籍】(管理人注:控訴審で変更)について原告が有する著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害に当たるということができる。
 [表紙部分の変更について]
 
前記認定のとおり,表紙部分に記載されている原告書籍の題号と被告書籍の題号の一部が異なる。
 
もっとも,その差異は,原告書籍の題号のうち,「いざというときに」という文言の末尾の「に」が「編」となっているものであるにすぎない上,この差異があることによっても,両者の文言は,ともに,原告書籍又は被告書籍がいざというときのためのものであるという意味であると認めることができるから,原告書籍の題号を被告書籍の題号に改める行為が,著作権法201項の「改変」に当たるとすることはできない
 
したがって,原告書籍の表紙部分の「−いざというときに−」という記載を「−いざというとき編−」に変更した被告組合及び被告共立の行為は,原告の著作者人格権(同一性保持権)侵害に当たらない。

【控訴審】

 本争点に対する当裁判所の判断は,下記のとおり,控訴人らの当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決…のとおりであるから,これを引用する。
 
控訴人らの当審における主張に対する判断
 
控訴人らは,被告書籍のはしがき部分の記載は,控訴人組合が被告書籍の購入に当たり控訴人共立から見本として示された甲15書籍のはしがき部分の記載を一部改変したものであるから,控訴人らによるはしがき部分の改変は,甲15書籍のはしがきの改変ではあっても,原告書籍のはしがきの改変ではない旨主張する。
 
しかしながら,被告書籍のはしがき部分が,原告書籍のものと異なっていることは,上記において引用した原判決摘示のとおりであり,そうである以上,被告書籍のはしがき部分の記載内容が,直接には甲15書籍のものに基づくものであるか否かは,同一性保持権侵害の成否には影響しないというべきである。したがって,控訴人らの上記主張は採用の限りではない。











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