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控訴審における新請求原因追加の可否
「プーシキン美術館所蔵作品等テレビ番組製作事件」
平成160518日東京高等裁判所(平成15()4395 

【コメント】本件は、被控訴人らが、控訴人に対し、合計5編のテレビ放送番組(「本件各作品」)の製作業務一般(「プロデューサー業務」)を依頼したにもかかわらず、控訴人を中途で同業務から排除したり、報酬及び経費を支払わなかったりした等として、控訴人が、被控訴人らに、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。控訴人は、また、控訴審において、被控訴人会社との関係では、控訴人と被控訴人会社との間に、本件各作品について、プロデューサー業務委任契約が成立したとして、同契約に基づく相当な報酬の支払を求める、との請求原因を追加しました。
 
被控訴人らは、原審において、本件各作品について、控訴人が主張するプロデューサー業務を依頼したことはない、調査を依頼した作品についての必要な経費はすべて支払ったなどと主張し、控訴審においては、控訴人による請求原因の追加が、原審の審理経過に照らし、禁反言ないし信義則に反するとして、その追加的変更を許さない旨の裁判を求めました。
 
原判決は、控訴人の不法行為についての主張及び経費未払についての主張を認めず、控訴人の請求をすべて棄却しました。

[参考:民事訴訟法143条(訴えの変更)]

1 原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
2 請求の変更は、書面でしなければならない。
3 前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
4 裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。 


 控訴審における新たな請求原因の追加について
 
本件記録によれば,控訴人は,原審において,そこで行われた不法行為に基づく請求原因の主張が,契約責任に基づく主張と密接に関連するため,裁判所から,たびたび,契約責任を主張するか否かについて釈明するように求められたにもかかわらず,不法行為に基づく主張のみをし,契約責任については主張しない,と答えていたことが認められる。このような原審の審理経過に照らすと,控訴審における新たな請求原因の追加は,信義則に反するということも可能である。
 
しかし,原審における不法行為に基づく請求原因の主張と,当審において追加された契約責任に基づく主張とは,もともと表裏一体の関係にあり,相互に密接に関連するものである(見方によっては,請求権発生の根拠となる事実としては同一のものを主張しつつ,発生する請求権についての法的見解を変えただけである,ということも可能である。当事者の任務は,事実を主張することであり,それに対する法的評価を下すのは,裁判所の専権である,との民事訴訟の原則に照らすと,見方によっては,控訴人は,上記事実を主張した以上,発生する法的性質については,単に意見を述べることが許されるだけである,とみることもできよう。)。そのため,原審においても,控訴人と被控訴人会社との間の契約に基づき報酬請求権が生じるかどうかとの争点も含めて審理がなされており(この争点に関し,多数の書証が提出された上で,本人尋問がなされている),原判決も,控訴人と被控訴人会社との間の契約に基づき報酬請求権が生じるかどうかとの争点を,中心的な争点として判断した上で,それを不法行為についての判断として結論を下しているのである。そのため,当審において,控訴人が契約に基づく報酬請求権を新たな請求原因として追加することを認めたとしても,既に必要な審理はすべて終了しているため,著しく訴訟手続を遅滞させることにはならないことが明らかである。
 
また,このような請求原因の追加的変更は,仮に,信義則に反することを理由にこれを許容しないとすれば,控訴人は,契約に基づく報酬請求権について,別訴を提起することが可能となるのであり,仮に,別訴が提起されるとすると,被控訴人らにとっては,再度,別訴における主張立証を余儀なくされることにもなりかねず,むしろ,結果的には,より過重な負担を強いられる結果となるおそれがある,ということも考慮する必要がある。
 
以上からすれば,控訴人が,本件において,契約に基づく報酬請求権を請求原因として追加的に主張することは,信義則に反する事情があることを考慮しても,請求の基礎に変更がなく,これにより訴訟手続を遅滞させることとならないことが明らかであるものとして,認めることにするのが相当である(民訴法297条,143条)。











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