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独占的利用権許諾契約の成否が問題となった事例
「円谷プロ国際契約事件A」平成150228日東京地方裁判所(平成13()12140/平成151210日東京高等裁判所(平成15()1532 

【コメント】本件においては、次のような事実関係がありました。

原告は劇場用映画及びテレビ用映画の制作供給等を業とする日本法人であり、被告はタイ王国において映画の制作等に従事するタイ王国人である。

原告は別紙目録記載の各著作物(「本件著作物」)を制作し、著作権を取得した。

本件契約書」には、円谷プロド・アンド・エンタープライズ・カンパニー・リミテッド(代表者・B)が、チャイヨ・フィルム・カンパニー・リミテッド(「チャイヨ社」)の社長である被告に対し、昭和51年(1976年)34日付けで、日本を除くすべての国において、期間の定めなく、独占的に本件著作物についての配給権、制作権、複製権等を許諾する旨の記載がある

原告は、被告に対し、平成8年(1996年)723日付けの書面(「本件書簡」)を交付したが、本件書簡には「本状は,円谷エンタープライズ・カンパニー・リミテッド(代表者・B)が,チャイヨ社社長被告との間で昭和51年(1976年)34日に締結したライセンス許諾契約に従って,タイ王国を含む領域で,ホーム・ビデオを含むすべてのメディアにおいて,不特定の期間中,ウルトラマン・シリーズ及びジャンボーA・シリーズを含む特定の財産を市場に広める独占的権利をあなたが持っていることを明確にするものです。原告は,平成元年(1989年)9月にウルトラコム・インクと世界的販売及びライセンス代理店契約を締結した時,チャイヨ・フィルムに許諾されていた上記権利を除外しなかったことをここに言及します。それは全くの間違いによるもので,故意で行ったことではありません。(中略)更に,ウルトラコム・インクとタイ王国における特定のライセンシーらとの間で既に締結されている現行の契約をかかる契約が満了となるまで尊重し,タイ王国におけるかかるライセンシーら,ウルトラコム・インク,及び原告に対し請求を行わないというあなたのご親切なお言葉に感謝します。」との記載がある。

被告は、タイ王国における本件著作物の著作権は被告にあると主張し、タイ王国における原告のライセンシー及びサブライセンシーに対して、被告の著作権侵害を理由に刑事告訴をし、民事訴訟を提起している。

本件は、原告が被告に対し、原告は本件著作物の著作権者であり、被告に対して著作権の譲渡又は利用許諾をしていないと主張して、被告が日本において本件著作物についての著作権を有しないことの確認、被告が日本以外の国において本件著作物についての著作権及び利用権を有しないことの確認等を請求した事案です。 


【原審】

 本件契約は,後記認定のとおり,日本において,日本法人である原告とタイ王国人である被告との間で締結されたものであるところ,本件契約書には準拠法についての規定がないこと,本件契約の対象は日本以外の地域の本件著作物であり,タイ王国のそれに限るものではないことからすると,上記当事者の意思が明らかとはいえないから,法例72項により,本件契約の成立及び効力の準拠法は行為地法である日本法であると認められる。
 
[本件契約書は真正に成立したものであるかどうかについて]
 
被告は,本件契約書が作成された時の状況につき,次のとおり記載及び供述している(被告本人)。
 
「被告は,昭和5132日に原告の事務所で,Bに対し同人が被告に無断でフィルムを売却したことによって得た金員を返済するよう求めたところ,同人は『借金は返せないけれども,その代わりに海外でのウルトラマンの権利をあげる。』と提案したので,被告はこれを承諾した。翌3日午後4時ころ,円谷エンタープライズの事務所で上記提案につき話し合った。この時の出席者はB,同人が『先生』と呼んでいた人物,被告,チャイヨ・フィルムのパートナーであるH4名だった。『先生』はBより年上で,眼鏡をかけないで目がちょっとでっぱ目で英語が堪能な人物だった。Bは,既に本件契約書の草稿を用意しており,その草稿にはタイプされたものと手書きのものとがあり,文章は英文で書かれていた。この際,被告は契約書中『HANUMAN』とされるべきところが『HARUMAN』となっていることに気付き,Bに指摘したが,同人は『同じ映画だとわかるから大丈夫。』と言って取り合ってくれなかった。翌4日,午後4時ころ,上記4人が円谷エンタープライズの事務所に集まった。Bは,サインに当たり『この契約書は,C(管理人注:被告の子)への誕生日プレゼントだ。』と言っていた。また,サインの直前になって,『先生』に対し,『この契約書には円谷エンタープライズしか記載されておらず,原告が抜け落ちてしまっている。』と指摘して,契約書を手直しするように伝えた。手直しの方法は便宜上,全文を打ち直す代わりに,契約書を修正し,スペースが許す限りで『prod. and』という語を挿入すると言う方法を取った。『先生』はこの作業に5分から10分ほどかかった。その後,Bは,被告の面前でサインをすると共に,テーブルの上に置かれていた丸い判子と四角い判子を本件契約書に押した。同人は,本件契約書の作成に当たり,サインは原告を代表して行うものであること,判子は円谷エンタープライズの代表者として行うものであること,判子だけだと契約書が海外で信用されない恐れがあることなどを説明し,『私は円谷エンタープライズと原告の両者の社長なのだから,私がサインをすれば心配ない。』と言っていた。」
 
上記(1)の内容について検討すると,被告の記載及び供述は全体的に詳細であり,殊に,本件契約書中に被告の作品が「HARUMAN」とされていたことに対して被告が抗議したことや「prod. and」の語が挿入された経緯について具体的に述べており,その内容自体も特に不自然,不合理なところはない。また,上記で認定した事実によると,当時被告はBと親しい間柄にあったこと,Bは被告制作映画@,Aについて権利を許諾し,その代金を被告に交付していなかったこと,原告は当時多額の負債を有し,Bは上記代金を返済できない状況にあったことが認められ,かかる事実からすると,本件契約を締結する動機があったものといえる(なお,この点について,原告は,上記映画の代金について借用書等の書面が作成されていないのは不自然である旨主張するが,当時の被告とBの関係を考えれば,借用書等がなくても不自然ではない。)。
 
…によると,本件契約書の円谷エンタープライズの代表取締役印の印影と円谷エンタープライズにおいて昭和51年当時印鑑登録の上使用されていた代表取締役印の印影とが一致するので,本件契約書の円谷エンタープライズの代表取締役印は,円谷エンタープライズの真正な印章によるものと認められる。この点について,原告は,円谷エンタープライズが海外への再放送権を許諾した場合にはフィルムを輸出しなければならず,フィルムの通関手続が必要であったが,同社は専門の通関業者に対し,あらかじめレターヘッドの下部に円谷エンタープライズの社判と代表者印のみを押したブランクフォームを常時数枚預け,新たな契約ができるとすぐにそれを用いてインボイス等を作成できるようにしていたし,また,被告は,当時円谷エンタープライズの事務所に劇場用映画制作の打合せ等のために出入りしており,当時円谷エンタープライズは被告に対し,テレビ映画のタイ王国における再放送権等を許諾したことがあるから,被告が上記ブランクフォームを入手することは不可能ではなかったと主張する。しかし,昭和51年当時上記原告が主張するようなインボイスが用いられていたとしても,…によると,昭和51年当時円谷エンタープライズが発行したインボイスには,上記原告が主張するものとは異なる様式のものがあったことが認められるから,果たして上記原告が主張するようなインボイスがどの程度用いられていたか疑問である上,それを被告が入手したことを認めるに足りる証拠もない(円谷エンタープライズが被告に対しテレビ映画のタイ王国における再放送権等を許諾したことがあったとしても,そのインボイスが上記原告主張のようなものであったことを認めるに足りる証拠はない。)。本件契約書には,印鑑登録された代表取締役印が押されているのであるから,そのような書類については,厳格に管理するのが通常であって(現に,…によると,円谷エンタープライズにおいては,この代表取締役印をかぎのかかる金庫に保管していたことが認められる。),それを入手して目的外に利用することは一般に困難であると考えられる。
 
したがって,本件契約書に真正な円谷エンタープライズの代表取締役印が押されていることは,上記認定の被告の供述の信憑性を強く推認させるものということができる。
 
原告は,本件契約書にある「B」の欧文字の署名はB本人の筆跡と異なると主張する。
 
筆跡鑑定書には,本件契約書の「B」の欧文字の署名は,Bの他の書類における筆跡とは相違し,別人の筆跡である旨の記載がある。
 
しかし,@鑑定資料はフォトコピーを使用しており,筆順,筆圧等を含む筆跡の質的要素を必ずしも正確に検査することはできないこと,A対照資料相互間もそれぞれ外観上必ずしも一致するものではないし,それぞれの書写条件も不明であること,B本件契約書の署名と外観上類似する契約書のBの署名が存するところ,この契約書は,前記認定の被告制作映画@の制作に関する契約書であること,C…によると,検乙4の欧文字のBの署名の上の漢字のBの署名は,同人がふざけて署名するときの署名のやり方であると認められるところ,このように特徴的な署名を偽造することは考え難いから,検乙4Bの署名であると認められるが,検乙4の欧文字のBの署名は,本件契約書の署名と外観上類似し,他にも同様の署名が存すること,D外観上鑑定資料と対照資料とは字体が異なる箇所が少なからず存するものの,類似するところも見られることからすると,上記鑑定書の鑑定結果のみで直ちに上記署名がBの筆跡ではないと断ずることはできない。
 
また,タイ訴訟における筆跡鑑定人の回答内容も,文字の一般的特徴を対比し,本件契約書の署名と対照資料との類似点は全くないと述べているにとどまり,これもまた本件契約書の署名の偽造を裏付けるものとはいえない。
 
原告は,「株式会社円谷プロド・アンド・エンタープライズ」の表記につき,このような会社は実在していないと主張する。
 
しかし,上記認定のとおり,「円谷プロド」の部分はBが気づいて後に挿入したものであり,その説明に不自然な点はないし,…によると,原告も自らの略称として「Tsubura Prod.」ないし「TSUBURAYA PROD.」の名称を使用していることが認められる。そうすると,上記表記は,原告と円谷エンタープライズの両方を指すものというべきである。
 
(略)
 
【前記認定のとおり,本件書簡は,平成8723日,1審原告会社代表取締役のIが同社取締役会の承諾の下にこれに署名した上,Gに交付したものであり,その際には,1審原告及び1審被告双方が公証手続という慎重な手続を履践している。また,その内容は,前記争いのない事実等記載のとおり,本件契約書の内容を全面的に肯定した上,1審原告とウルトラコムとの間の契約が本件契約に違反したものであることについて謝罪する趣旨のものである。このような事実は,本件契約書が真正に成立したものであることを裏付ける事情というべきである。…】(管理人注:控訴審で変更)
 
以上のような本件書簡をめぐる事情は,本件契約書の成立の判断に当たって,原告に不利益な事情として考慮されねばならない。
 
以上述べてきたところからすると,本件契約書は,真正に成立したものと認められ,本件契約は成立しているものといえる。
 
[本件契約の内容について]
 
本件契約書は,ライセンス付与契約書という表題の下に,第1条で映画を特定した上,第2条で「契約地域及び契約期間」として「日本を除くすべての国における無期限の独占権」と記載されており,第3条で「ライセンスの範囲」として「配給権」「複製権」等が列挙されている。そして,第3条の権利が列挙されている中には,「配給権」等と並んで「著作権」が含まれているが,上記認定の事実からすると,本件契約書は,全体としては,第1条で特定した映画についての独占的な利用権をライセンスするものであると認められ,著作権の譲渡契約であるとは解されないから,本件契約書によって,被告に本件著作物の日本国外における著作権まで移転したものと認めることはできない。
 
被告は,本件契約締結の際に,原告が被告に対し,本件著作物のみならず,ウルトラマンシリーズの将来の作品の著作権ないし独占的利用権についても与えたと主張し,被告の陳述書には,本件契約書の「Article33」が新たなウルトラマン作品の制作権を指すとの記載があり,被告は,本人尋問において同旨の供述をする。しかし,これらの記載及び供述は,本件契約書が第1条で映画を特定していることや「Article33」の「Reproduction Right(複製権)」という記載とは相容れないから,信用できない。
 
そして,他に上記被告の主張を認めるに足りる証拠はないから,上記被告の主張は認められない。
 
[本件著作物の著作権及び利用権の帰属について]
 
…によると,本件著作物の著作権は原告が取得したものと認められ,上記のとおり,その後,日本国外における著作権が被告に移転した事実は認められず,また,本件書簡の内容からすると,本件書簡の意思表示によって日本国外における著作権が被告に移転したという余地はなく,日本における著作権が被告に移転した事実も認められないから,被告は,日本及び日本国外において本件著作物の著作権を有しない。
 
しかし,本件契約書が真正に成立していることからすると,被告は,日本国外における本件著作物の独占的な利用権を有するものと認められる。

【控訴審】

 
当審における1審原告及び1審被告の主張に対する判断
(1) 本件契約書の署名について,1審原告は,「献呈者が献呈本に署名するに際して,2種類の署名をするというのは不自然である。現に,(証拠)は,昭和58年にAが献呈本に署名したものであるが,ここには英文の署名のみがされている。
 
したがって,検乙3の上部の「A2」及び検乙4の下部の「A3」の各署名は偽造されたものである。」旨主張する。しかしながら,献呈者が献呈本に漢字と欧文字等2種類の署名をすることもあり得ることであり,それが直ちに署名の真正性を疑わせるほど不自然であるということはできない。(証拠)に1種類の署名がされている事実のみをもって,他の場合もすべて同様でなければ不自然であるということは到底できない。
 
(略)
 
さらに,1審原告の指摘する(証拠)の筆跡鑑定書及び(証拠)の証言調書についても,原判決)記載の事情に照らせば,これのみをもって,直ちに本件契約書の署名がAの署名ではないと断ずることはできない。
 
(なお,1審被告の主張の有無は別として,本件契約は1審原告代理人の円谷エンタープライズと1審被告との間で成立したと解する余地もあるところ,この解釈を前提とした場合には,前記認定のとおり,本件契約書の円谷エンタープライズの代表取締役印は,円谷エンタープライズの真正な印章によるものと認められるから,本件契約書は当時円谷エンタープライズの代表取締役であったAの意思に基づいて作成されたことが推認される。したがって,上記のケースでは,本件契約書の「A3」の署名の真正の問題は,本件契約の当事者が1審原告及び円谷エンタープライズと解した場合ほど重要なことではないという背景事情にも留意すべきである。)
(2) 本件契約書の当事者の表記について,1審原告は,「昭和54年に日本で劇場用映画「ウルトラマン怪獣大決戦」が公開された際に,1審原告が関係者に配布した記念品のパーカー・ペンに「TSUBURAYA PRO」と記載されていること,1審原告が昭和60年に発足させた会員組織「円谷プロファンクラブ」の同年発行の会員証には英文では「TSUBURAYA PRO FAN CLUB」と記載されていること,及び同年6月発行の円谷プロファンクラブ創刊準備号には,英文で「TSUBURAYA PRO. FAN CLUB.」と記載されていることから,1審原告は昭和60年末ころ以前は,「Tsuburaya Prod.」ないし「SUBURAYA PROD.」の表記を使用せず,「TSUBURAYA PRO」という表記を使用していたことが明らかである。」旨主張する。なるほど,上記各証拠によると,1審原告が昭和60年末ころ以前に「TSUBURAYA PRO」という表記を使用していたことは認められるけれども,1審原告が上記時期以前において自己の表記方法を上記のとおり統一しており,「Tsuburaya Prod.」ないし「SUBURAYA PROD.」の表記を使用していなかったことを認めるに足りる的確な証拠はない。
 
(略)
(3) 本件契約の対価について,1審原告は,「Aの著書の記載から,(証拠)の作成時とされる昭和4910月や昭和502月の時点において,1審原告は経済的に困窮していなかったことが明らかであり,1審原告及びAは1審被告の金員を着服したり,1審被告から金員を借用する必要が全く存在しなかったから,そのようなことはあり得ない。」旨主張する。確かに,…によれば,A著「Aウルトラマンを語る」には,「第2次の怪獣ブームが起きることによって赤字でドン底をはい回っていた円谷プロは昭和44年の決算でわずかながら黒字に転じる。…昭和45年,46年と大幅な黒字が続き,それによって当初無理だと思われていた赤字解消5年計画も,わずか3年で達成できたんです。新会社の円谷エンタープライズのほうも,ちょうど同じ頃,軌道に乗りだし…会社スタート後,2年間の赤字は,3年目にして解消することができたわけです。」との記載があり,1審原告及び円谷エンタープライズの経営は,昭和456年当時,順調に推移していたことが認められる。しかしながら,…によれば,昭和49年に製作された「ウルトラマンレオ」の視聴率は,シリーズ途中で1桁台まで落ち込んでしまったこと及び同年発生のオイルショックが,1審原告の経営に多大のマイナス影響をもたらしたことが認められ,これらの事実によると,A及び同人経営の1審原告は,昭和4910月や昭和502月当時,経済面で苦しい立場に陥っていたものと容易に推認することができる。
 
(略)
(4) 1審被告による権利の不行使について,1審原告は,「1審被告は,円谷エンタープライズとの間で,昭和59310日,「ウルトラマンZOFFY」についての再放映権許諾契約を締結し,8000米ドルを支払っているが,「ウルトラマンZOFFY」は主に本件著作物の名場面を集めた物にすぎないから,上記許諾契約締結の事実は,本件契約が成立していないことの根拠となる。」旨主張する。しかしながら,本件著作物以外の著作物が含まれる映画の許諾契約に際して,許諾料が新たに支払われたとしても不自然とはいえないし,8000米ドルという対価の額に照らせば,1審被告の主張するように,上記金員は技術料等の実費の趣旨で支払われた可能性も否定できないから,1審原告の上記主張を直ちに採用することはできない。なお,原告は,実費としては上記金員とは別に270ドルが支払われている旨主張するが,このように低額な実費が支払われたとしても,それ以外に実費の支払がないと直ちにいうことはできない。
(5) 本件著作物に関する1審原告の契約締結状況について,1審原告は,「本件契約書の内容と矛盾抵触する契約が,昭和41年以降,1審原告又はその授権を受けた者により,多数締結されているところ,本件契約が存在すると,これらはすべて本件契約違反となってしまうから,本件契約が締結されたはずがない。」旨主張する。確かに,上記証拠によれば,1審原告の主張する本件著作物に関する許諾契約が締結されたことが認められる。しかしながら,当時1審被告はAと親しい間柄にあったこと,Aは代理人の立場で被告制作映画@,Aについて権利を許諾し,その代金を1審被告に交付していなかったこと,1審原告は当時多額の債務を負担しており,Aは上記代金を返済できない状況にあったこと等のAの当時の状況によれば,1審原告の指摘する点を十分考慮しても,Aが本件契約を締結する動機はなお十分にあったといわざるを得ないから,1審原告の上記主張も採用することはできない。
(6) 1審原告は,「本件著作物は商法2602項所定の1審原告の「重要ナル財産」に該当するから,Aが本件契約を締結するには取締役会の決議が必要であり,同人には上記決議を経ることなく本件契約を締結する権限はない。」旨主張する。ところで,代表取締役は,本来株主総会又は取締役会のした意思決定に基づき各自会社を代表して内部的及び外部的な業務執行行為をする権限を有するから,本件においては,代表取締役が上記決定を経ることなくした対外的な取引行為の効力を問題にすれば足りる。これは,本件契約の成立当時の商法上の取締役会の権限についての「会社ノ業務執行ハ取締役会之ヲ決ス」との規定を前提としても同様である。そして,代表取締役が取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を,上記決議を経ないでした場合でも,原則として有効と解すべきであるから,仮にAが本件契約を締結するに当たり,取締役会の決議を経ていないとしても,原則として,本件契約は有効というべきである。したがって,1審原告の上記主張は理由がない。
(7) 1審被告の供述等の信用性について,1審原告は,「円谷エンタープライズの事務所の受付カウンターに常駐していたDは,本件契約書が作成されたとされる日に1審被告を含むタイ人らが来たことを否定している。」旨主張する。しかしながら,(証拠)は,本件契約が成立した昭和51年から27年間も経過した後の平成15年になって作成された陳述書であるところ,上記Dが,来訪者が外国人であるからといって,遠い過去の事実を正確に記憶しているとは考え難いことであるから,上記証拠は,1審被告らの上記来訪の事実を否定する根拠とはならないというべきである。
 
(略)
(8) 本件契約書の円谷エンタープライズ名下の印影について,1審原告は,上記印影が,円谷エンタープライズの真正な代表者印の印影と異なる可能性が高い旨主張するが,…によれば,両印影を1000倍に拡大しても,両者はほぼ合致していることが認められ,このことはむしろ,本件契約書に円谷エンタープライズの真正な代表者印が押印されたことを裏付ける事実というべきである。
(9) その他,1審原告はるる主張するが,前記認定のとおり,本件契約書に円谷エンタープライズの真正な印章が押印されていること,及び1審原告が本件契約書の内容を全面的に肯定する内容の本件書簡を作成していることは,本件契約の成立を強く推認させる事実であり,1審原告の主張する細かな点をすべて考慮しても,本件契約の成立についての結論を左右する事実とはいえない
10) 本件契約の内容について,1審被告は,「本件契約の内容は,通常の著作物利用権許諾契約とは全く異なる特異なものであるから,本件契約は,著作権の譲渡契約であると解釈すべきである。」旨主張する。しかしながら,1審被告が主張する点を十分考慮しても,なお,本件契約書の標題及び条項中に「ライセンス」の語が一貫して用いられていること等の原判決指摘の事実によれば,本件契約は,本件著作物の独占的利用権の許諾を内容とするものであり,本件著作物の著作権の譲渡を内容とするものではないと解するのが合理的であると判断せざるを得ない。











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