著作権重要判例要旨[トップに戻る]







利用許諾契約の解釈(19)-契約の成立を否定した事例B-
小中学生対象‘月例テスト’無断複製事件」平成190228日東京地方裁判所(平成16()27086 

【コメント】本件は、原告が、原告作成に係る小中学生を対象とした学力テスト問題、同解答用紙等について、被告が無断で複製し、原告の著作権(複製権)を侵害したと主張して、著作物の許諾料相当額の損害賠償の支払い等を請求したのに対し、被告が、複製には原告の許諾を得ていた等と主張して争った事案です。 

 対象文書1及び2の複製についての原告の許諾の有無について
 
[事実認定]
 
(略)
 
[対象文書1の複製についての原告の許諾の有無]
 
(略)
 以上によれば,平成56月に,甲が被告代表者に対し,対象文書1の複製を許諾したことを認めることは困難であり,他に,これを認めるに足りる証拠はないから,同事実は認められない。
 
[対象文書2の複製についての原告の許諾の有無]
 
次に,対象文書2の複製に係る原告の許諾の有無について,以下,検討する。
 
(被告の主張)
 
被告は,平成13119日,当時小中学生の学習指導要領の改訂により学習内容が削減されることに悩んでいた被告代表者が,甲に対し,学習内容の削減されない月例テストがあれば購入したいこと,削減されないものがないのであれば,過年度の月例テストを購入したい旨の申入れを行ったところ,同年27日,甲が被告代表者のもとを訪れて,上記申入れには応ずることができないが,平成12年度の月例テストは過年度のもので無価値であり,無償で提供するので,それを複製して使用することを提案し,同月15日,被告代表者は甲の同提案を承諾し,同年38日,全学年分の平成12年度月例テストを,本件リスニングCDなどとともに受領した旨主張する。
 
(対象文書2を含む平成12年度月例テスト及びその他の見本品の交付)
 
甲は,上記のとおり,平成12128日に平成12年度の月例テストのうち4月分から12月分のもの等を,平成13124日に平成12年度月例テスト1月分を,同年38日に同2月分及び本件リスニングCDを,被告に交付したことが認められる。そして,原告は,上記のとおり,同年52日,平成13年度のテスト2か月分を見本品として被告に交付している。
 
これらの事実に基づいて検討するに,まず,同年124日に,甲から被告に対し,平成12年度月例テスト1月分が交付されたことは,当事者間に争いがないところ,この事実と,甲が,同年119日に被告代表者から過年度分等の購入の申入れを受け,同年27日に複製を許諾した旨の被告の主張とを整合させる,合理的な説明は困難である。すなわち,被告の主張によれば,同年124日は,上記申入れを受けて同年27日に回答を伝えるまでの間の,対応方を検討している時期となるが,このように,被告からの申入れに答えないままに(同年124日に甲と被告代表者の間で,関連するやりとりがされたかについては,主張もなく,それをうかがわせるような証拠もない。),甲が一方的に平成12年度月例テスト1月分を交付することは,交付の目的が見本品としてのものであるか否かを問わず,不自然であるし,被告にとってもいずれの趣旨であるか分かり難く,そのような事態を招く営業活動を行うとは考え難いからである。
 同様に,平成1352日に平成13年度月例テストの2か月分が見本品として被告に交付された事実と,同年2月に平成12年度月例テストの複製許諾がされた旨の被告の主張とを整合させる,合理的な説明は困難である。すなわち,被告として,要望する内容の月例テストがないためにその代わりとして平成12年度月例テストの複製許諾を受けたというのであれば,平成13年度の月例テストとして,上記許諾に基づく平成12年度月例テストの複製物の使用を開始することが,当然予想されるのであり,その場合でも月例テスト受注に向けた営業活動をすること自体は考えられるものの,平成13年度開始直後に,被告の要望に沿わない同年度月例テストを見本品として送付することは,その効果が期待できないからである。
 
(月例テストの販売の重要性)
 
さらに,月例テストの販売は,上記で検討したとおり,他の教材販売と比較して従属的な地位にあるわけではなく,かえって,取引額の増大を図りやすく,継続性も得やすい製品であることからすれば,他の教材の販売額を上げるために,無償で月例テストの複製許諾をするという営業活動をすることは,販売政策上不合理である。
 
被告は,当時,被告代表者が,学習指導要領改訂による学習内容削減で悩んでいた旨を主張するが,丙社からの提供により,被告代表者が希望するところの学習内容が削減されていないテストは既に入手していたはずであり,それにもかかわらず,学習内容削減の悩みを甲に伝えて,上記申入れをする理由も明確ではない。
 
また,被告は,過年度分の月例テストは無価値であり,追加コストの負担なく一定の営業サービスを提供できるものとして経済的な合理性を持っている旨主張するところ,過年度分の月例テストは,それ自体新たな制作費用を要しないとしても,これを複製許諾して使用を認めることによって,当該年度,次年度,次々年度等と,今後の月例テスト販売の機会を失う可能性が高くなるのであるから,必ずしも経済的合理性を有するものとはいえない。
 
(平成13119日,27日の甲と被告代表者との面会の有無)
 
被告は,平成13119日に,被告代表者から甲に対し,過年度分テスト等の購入申入れをしたこと,同年27日には,甲から対象文書2の複製許諾があったことを主張するが,いずれの日も,以下のとおり,甲と被告代表者とが面会していたことを認めるのは困難である。
 
まず,同年119日について,甲の本件手帳にも,本件被告手帳にも,面会の予定を示すと思われる記載がされているが,本件手帳の記載は,削除する二重線が引かれている。そして,甲も同日の予定はキャンセルされた旨を述べている。また,同年27日について,本件被告手帳には,2箇所原告名称が記載されているのであるが,甲は,前日の6日から同日にかけて,甲信営業所に出張しており,同日の帰京は午後8時過ぎであったことが認められ,この帰京時刻からすれば,帰京後に被告代表者と面会することも考え難い。
 
被告代表者は,いずれの日も甲に面会して,上記のやりとりがあった旨述べるが,上記事実に照らして,同供述を採用することはできず,他にこれを裏付けるに足りる客観的証拠はない。
 
(本件リスニングCDの交付)
 
原告から被告に対しては,上記のとおり,対象文書2とともに,本件リスニングCDも被告に交付されているが,見本として,リスニングCDを受領したことがある学習塾も存することからすれば,見本としてリスニングCDを交付することは,通常あり得ない,あるいは,リスニングCDの授受は,共に交付されるテスト等の複製許諾を前提にするものであると,直ちに結論付けることは困難である。
 
したがって,本件リスニングCDの交付から,月例テストの複製許諾を認めることはできない。
 
複製許諾に関する文書等の不存在
 
被告代表者は,対象文書2の複製許諾について,大事な話であり,原告の許諾の存在について大丈夫なのかと思い,甲に再確認したが,テストの複製許諾を受けている丙社との間で文書を作成していないこともあり,その点について文書化することは考えなかった旨を供述する。
 
しかしながら,丙社からは,上記のとおり,昭和612月の開業以来複製許諾を受けており,既に長年問題がなく取引が続けられているのであるが,原告と被告とは,取引は継続しているものの,被告の取引高に占める原告の割合はそれほど高くなかったのであるし,上記のとおり,被告代表者自身は,対象文書2の複製許諾を得たことについて不安を感じたのであるから,丙社による複製許諾の場合とは,置かれている状況は異なるものである。そうであれば,単に甲に再確認するだけでなく,より確実な対応を得ておくことを考え,許諾に係る文書等を作成するのが通常であるといえる。
 
(被告代表者の陳述について)
 
被告代表者は,被告主張のとおり,平成1327日に甲が被告代表者に対して対象文書2の複製を許諾した旨を陳述している。
 
確かに,甲の発言に関する被告代表者の陳述が具体的である一方,複製の許諾を否定する甲の証人尋問における供述は,曖昧であって必ずしも措信できない点も見受けられるところ,前記認定のとおりの,被告代表者と甲との従前からの親密な関係及び甲による熱心な営業活動をも考慮すれば,日時の点はさておき,甲が当該営業活動の中で,被告代表者に対し,対象文書2の複製を認めるかのような発言をしたこともあり得ないではないところである。しかしながら,仮にそのような発言がなされたとしても,それはあくまでも営業活動の一環としての担当者の一発言にすぎず,上記認定の客観的な諸事情にかんがみれば,それをもって,被告に対する明確な複製許諾が行われたとまで認めることはできないというべきである。
 
(小括)
 
以上によれば,平成1327日に,甲が被告代表者に対し,対象文書2の複製を許諾したことを認めることは困難であり,他に,これを認めるに足りる証拠はないから,同事実は認められない。











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