著作権重要判例要旨[トップに戻る]







資格スクールに求められる注意義務
中小企業診断士試験用講座テキスト事件」平成181115日東京地方裁判所(平成18()4824等) 

【コメント】本件は、原告が、当時被告研究所からの依頼により、中小企業診断士試験用教材の原稿を著作したところ、被告研究所の代表者であった被告Bが原告に無断で、上記原稿に基づいて別の原稿を作成して被告東京LMに引き渡したため、被告東京LMが原告の複製権等を侵害する教材を作成したと主張して、被告らに対し、複製権侵害及び著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)侵害による損害賠償の支払を請求した事案です。

 
本件における「前提事実」は、概ね、次のとおりです。

原告は、被告研究所から、平成1346日、通産資料調査会から発行予定であった「中小企業診断士合格ポイントマスター()」の所定部分の執筆依頼を受け、同月20日、その著作を完了し、被告研究所に対しその原稿を引き渡した。

通産資料調査会は、同年530日、「中小企業診断士合格ポイントマスター()」を発行した(以下、原告が著作し、この文献に掲載された部分を「原告著作物」という。)

原告著作物のうち本件侵害部分として使用された部分の大半は、他の参考文献に記載された文章や図表を引用し、又は要約したものである。

被告東京LMと被告研究所とは、平成1311日、被告東京LMが被告研究所に対して、中小企業診断士試験用講座に関し、講義及びテキスト作成等を委託することを内容とする業務委託契約(「本件業務委託契約」)を締結した。本件業務委託契約中には、著作権処理に関し、以下の条項がある。
「第5(著作権等)
1 委託業務の過程で発生した著作権(著作権法第21条乃至第28条に定める全ての権利)等の一切の権利は,発生と同時に甲(注:被告東京LM)に移転する。
また,乙(注:被告研究所)が委託業務遂行以前より権利を有している著作物を使用する場合には,乙は,条件を付さずして甲及び甲の指定する者に対してその使用(複製,翻案,改変等を含む。)を許諾する。
2 乙は,甲及び甲の指定する者に対して,前項所定の著作権に関する著作者人格権を行使しない。
3 乙は,委託業務の実施にあたり,第三者の権利を尊重するとともに,第三者の権利を侵害しないように細心の注意を払い,万一紛争となった場合には,自己の責任において,これを処理・解決しなければならない。」

被告Bは、被告研究所の代表取締役として、平成13420日に原告から原稿を引き渡された後、その原稿に基づき、本件業務委託契約に基づく「中小企業診断士試験2次ストレート合格講座・基礎編」(以下「本件講座」という。)の教材として使用するため、原告著作物を一部省略して約2分の1の分量とし、順序を入れ替えた原稿を作成し、被告東京LMに対し引き渡した。なお、本件業務委託契約書51項の存在によっても、被告Bが原告著作物について著作権を有しない以上、被告Bが作成した原稿を被告東京LMに引き渡したことにより、原告が原告著作物について有する著作権が被告東京LMに譲渡されることはあり得ない。

被告東京LMは、同年4月末ころ、本件講座の教材として、「本件テキスト」を350部印刷し、そのころ、池袋校及び横浜校の受講者合計70名に対し、各1部配布し、講師用に数部使用した。本件テキストが講義で使用されたのは、平成1351日以降である。本件テキストは、本文全部で50頁であり、13頁から22頁までの記載は、被告Bが作成した上記原稿のとおりである(以下、この部分を「本件侵害部分」という。)

本件テキストを著作、出版する被告B及び被告東京LMの行為は、本件侵害部分について、原告の複製権を侵害する行為である。

本件テキストが前記のとおり受講生らに公表された当時、原告著作物はいまだ公表されていなかった。また、本件テキストには、著作者名として原告の氏名が表示されていない。さらに、前記のとおり、本件侵害部分は、原告著作物の一部が省略されたり,順序を入れ替えられている。

よって、上記のような本件テキストを著作、出版する被告B及び被告東京LMの行為は、本件侵害部分について、原告の複製権及び著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)を侵害する行為である。原告は、これらの行為により、精神的苦痛を被った。

原告は、被告Bが本件テキストを使用して本件講座の講義を行ったから、原告が原告著作物について有する口述権を侵害した旨主張する。しかしながら、口述とは、「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。」(著作権法2118)と規定されているところ、本件講座において、本件侵害部分を含む本件テキストが口述されたと認めるに足りる証拠はないから、原告のこの点の主張は理由がない。 


 被告らの故意・過失
(1) 被告B及び被告研究所
 
…によれば,被告Bは,原告の承諾を得る必要があることを認識しながら,原告から承諾を得ることなく,原告著作物に基づき本件侵害部分の原稿を作成したものであるから,原告の複製権及び著作人格権の侵害につき,故意があったものと認めるべきである。
 
よって,被告Bは,本件における複製権及び著作人格権の侵害行為により原告に生じた損害を賠償する義務がある。
 
そして,前提事実のとおり,被告Bは,被告研究所の代表取締役として,本件侵害部分の原稿を作成し,被告東京LMに引き渡したものであるから,被告研究所は,民法441項に基づき,被告Bの著作権及び著作人格権の侵害行為により原告に生じた損害を賠償する義務がある。
(2) 被告東京LM
 
前提事実のとおり,被告東京LMは,資格取得講座を開講し,受講生用の教材等を発行することを業として行っている会社であり,教材等の作成及び発行に当たり,第三者の著作権等を侵害することがないよう十分確認すべき義務を負っていると認められるところ,その注意義務を尽くしたことを認めるに足りる証拠はない
 
よって,被告東京LMは,本件における複製権及び著作人格権の侵害につき,過失があったものと認めるべきであり,複製権及び著作人格権の侵害行為により原告に生じた損害を賠償する義務がある。











相談してみる

ホームに戻る