著作権重要判例要旨[トップに戻る]







他誌を誹謗する学界誌の記事につき名誉毀損の成立を否定した事例
「学会誌記事‘
盗載’事件」昭和380416日最高裁判所第三小法廷(昭和34()1019 

 所論は、法人とその代表者との社会的評価が密接に関連する場合には、法人に対する名誉毀損が同時に代表者に対する名誉毀損にも該当しうるとし、「法人と代表者とは人格を異にする」との理由で上告会社に対する名誉毀損が同時に上告会社代表者たるD個人に対する名誉毀損となることはないとした原判示を非難している。
 
外形上直接には法人に対して向けられた名誉毀損の行為が実際には同時に右法人の代表者の名誉を毀損する効果を伴う場合もありうることは、所論のとおりであるが、そのように、法人に対する名誉毀損の攻撃が同時に代表者に対する名誉毀損を構成するとの評価をなすためには、その加害行為が実質的には代表者に対しても向けられているとの事実認定を前提としなければならない。加害行為が法人に対してのみ向けられているに過ぎない場合には、いかに代表者の勢力が強くその法人に対する支配力が大であつても、代表者に対する名誉侵害を云々することはできない
 
所論「法人と代表者との社会的評価の密接な関連性」は、加害行為が何人に対して向けられているかの事実判断に際して考慮すべきものであり、また、考慮せられれば足りるのである。
 
本件について見るに、上告人Dの主張は、同人が上告会社の社長であることは医事関係方面では公知の事実であるから、上告会社に対する誹謗は、そのまま直ちに、同人の名誉を毀損するというにあり、加害行為がD個人にも向けられていたとの主張はないのであるから、原審が論旨指摘のような判示をして同上告人の請求を排斥したことは正当であり、所論の違法ありと言えない。
 
(略)
 
所論は、言論・出版・報道界には、本件E教授の講演内容の如きものは、いかなる紙誌もこれを独占的、排他的に掲載する権利を有しないとの慣習法ないし事実たる慣習があるとの主張を前提として、原審が上告人らの所為を「盗載」と判断したのが違法であるというのである。
 
しかし、講演が著作物として著作権法の保護の対象とならないようなものである場合は格別、著作権法第1条の「演述」として保護されるに値するものである以上は、すべて同法による規制を受けるのであるから、論旨はすでにその前提を缺くのみならず、右「盗載」との点についても、論旨は原判文を誤解している。すなわち、本件は、上告会社による講演内容掲載の行為が「盗載」にあたるかどうかが請求原因であるわけでなく、従つて原判決の事実認定の対象となつているわけでもない。
 
原審は、上告人Dが、E博士から承諾を得ていないのにかかわらず、F通訳から不明朗な手段で講演の訳文原稿を入手し、博士から正規の承諾を得たG会雑誌への掲載に先がけて発表に及んだ行為を非として、これを非難するのに「盗載」とか「悪徳行為」とかの激越な言辞を用いてはいるけれども、事実を曲げて虚偽を語るものではないと判断しているに過ぎないのである。所論は原判旨を正解せずしてこれを攻撃するものであつて原判決に所論の違法はない。また、F通訳がH誌上に全文が掲載されるであろうことを知悉して上告人Dに訳文を交付したとの点は、原認定に添わない事実を前提とする議論であつて、上告適法の理由とならない。
 
(略)
 
所論は、要するに、原判文では、被上告人らの行為が上告人らの名誉を侵害しないとするのか、侵害するが違法性阻却事由があるとするのか曖昧であるが、その趣旨は後者にあると解するほかなく、而して言論の応酬について正当防衛等の観念を容れる余地はないから、そのような見解に立つ原判決は違法であるというのである。
 
案ずるに、所論原判示部分がその措辞においていささか明晰を欠くことは否み難いが、その趣旨においては、被上告人らの言動は違法に上告会社に損害を加えたものでないことを判示するにあることはこれを看取するに難くない。しかして、自己の正当な利益を擁護するためやむをえず他人の名誉、信用を毀損するがごとき言動をなすも、かかる行為はその他人が行つた言動に対比して、その方法、内容において適当と認められる限度をこえないかぎり違法性を缺くとすべきものであるから、本件被上告人らがE博士の承諾を得て、その講演内容をG会の機関誌であるG会雑誌に掲載する権利を有していた以上、右講演内容が先に他誌に掲載されたことにつき、真実を公表弁明して、その権利名誉を擁護するにあたり、被上告人らが採つた処置の方法・内容は、原判決の確定した客観的事情の下では、いまだ上告人らの名誉・信用を害したものとなすをえないとした原審の判断は、これを肯認しえないではなく、原判決に所論の違法があるとはいえない。











相談してみる

ホームに戻る