著作権重要判例要旨[トップに戻る]







商標権の譲渡行為が詐害行為として取り消された場合における債権者代位権行使の可否
「『
NEOS』商標権譲渡担保事件」平成131116日最高裁判所第二小法廷(平成12()1666 

1 本件訴訟は,株式会社D(以下「訴外会社」という。)の債権者である被上告人が,同訴外会社の上告人に対する担保としての商標権の譲渡につき,詐害行為取消権に基づいて同行為の取消しを求めるとともに,債権者代位権に基づいて,上告人に対し,上告人が譲渡担保によって取得した前記商標権につき他に使用許諾をして得た使用許諾料相当額の内金2000万円及びその遅延損害金の支払を求める事案であり,原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
1) 訴外会社は,資本金1億円,コンピューター及びその周辺機器の製造販売,工業所有権及びソフトウエアの著作権の使用許諾等を営業目的とする会社である。訴外会社は,昭和63930日に商標「NEOS」を登録してその商標権(以下「本件商標権」という。)を有していた。
(2) 被上告人は,昭和6310月にした保証契約に基づき平成33月に訴外会社のE銀行に対する債務5000万円を代位弁済し,訴外会社に対し同額の求償債権を有している。
3) 訴外会社は,平成7年末の時点で2億円を超える累積赤字を抱え,平成81月から3月にかけて,毎月2000万円から6000万円の赤字が生じ,手形決済資金が恒常的に不足する状態になった。
4) 訴外会社は,平成888日,上告人に対し,訴外会社の上告人に対する債務の担保として本件商標権を譲渡することを合意し,本件商標権を無償で譲渡したことに相違ない旨を記載した同日付けの譲渡証及び本件商標権につき上告人が単独で移転登録申請することを異議なく承諾する旨を記載した同日付けの単独申請承諾書を交付した。
5) 訴外会社は,平成894日ころ,2度目の不渡りを出して事実上倒産した。訴外会社は不動産を所有しておらず,本件商標権が上告人に譲渡された時点では,本件商標権が訴外会社の唯一の資産であった。
6) 上告人は,訴外会社から受領していた本件商標権の譲渡証等に基づき,平成81029日に本件商標権の移転登録を申請し,同年1216日に同年88日譲渡を原因とする移転登録を受けた。
7) 上告人は,F株式会社との間の平成9127日付けの覚書によって,本件商標権の使用を同社に許諾し,同社から使用許諾料の支払を受ける旨の使用許諾契約を締結した。この使用許諾契約に基づき,上告人が同年722日から平成1182日までの間に同社から支払を受けた使用許諾料は,合計22021716円である。
2 原審は,上記事実関係の下で,大略次のとおり判示して,被上告人の本訴請求を全部認容した。
1) 本件商標権は,当時,訴外会社の唯一の資産であり,本件商標権を上告人に譲渡する行為は,訴外会社が特定の債権者のために唯一の資産を譲渡担保に供したものとして詐害行為に当たる。そして,上告人が訴外会社からの説明及び資料の開示によりその財産状態を知っていたことは明らかで,善意とは認められない。そうすると,詐害行為取消権に基づいて本件商標権の上告人への譲渡行為の取消しを求める被上告人の請求は,理由がある。
2) 訴外会社の上告人に対する本件商標権の譲渡が取り消されたときは,上告人が本件商標権の使用許諾料として得た金員は上告人が取得すべき法律上の原因を欠くことになるので,債権者代位権に基づく被上告人の請求は理由がある。
3 しかしながら,原審の上記2の(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 
詐害行為の取消しの効果は相対的であり,取消訴訟の当事者である債権者と受益者との間においてのみ当該法律行為を無効とするに止まり,債務者との関係では当該法律行為は依然として有効に存在するのであって,当該法律行為が詐害行為として取り消された場合であっても,債務者は,受益者に対して,当該法律行為によって目的財産が受益者に移転していることを否定することはできない
 
そうすると,上告人が本件商標権の使用許諾契約を締結して,F株式会社から支払を受けた使用許諾料は,訴外会社との関係で法律上原因がないとはいえない
4 以上のとおり,訴外会社は上告人に対して不当利得返還請求権を有しないのであるから,被上告人の債権者代位権に基づく商標権使用許諾料相当額の支払請求を認容した原審の判断には,民法424条,425条の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決中被上告人の上告人に対する金銭支払請求に係る部分は破棄を免れない。以上説示したところによれば,被上告人の上告人に対する金銭支払請求は理由がなく,これと結論を同じくする第1審判決は正当であって,金銭支払請求に係る部分についての被上告人の控訴を棄却すべきである。











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