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映画投資組合が購入した映画が減価償却資産に当たらないとされた事例
「映画投資組合配給契約事件平成180124日最高裁判所第三小法廷(平成12(行ヒ)133 

 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである(以下,外国法人等の名称の表記については原判決の略称による。)。
 
上告人は,平成元年,Dから,次のとおり説明を受けて,取引への参加を勧誘された。
 
日本の投資家を集めて,Eと称する民法上の組合(以下「本件組合」という。)を結成する。本件組合は,組合員の自己資金及び銀行からの借入金を原資として,Fから映画を購入し,Gとの間で映画の配給契約を締結し,Gが配給会社を使って全世界に配給する(以下,この取引を「本件取引」という。)。
 
組合員が投資によって得る利益は,Gとの間の配給契約に基づき本件組合が受け取る金員と,組合員における税務処理,すなわち,映画の減価償却費を損金処理することによる法人税の負担軽減から成る。
 
平成元年519日付けで,上告人ら投資家を組合員とする本件組合の結成に係る契約書が作成された。また,同日付けで,いずれも本件組合を一方当事者として,H銀行からの借入れに係る契約書,Iが制作した2本の映画(以下「本件映画」という。)のFからの購入に係る契約書,Gに対する本件映画の配給権付与に係る契約書,同契約書に基づきGが本件組合に対して負担する金員の支払債務についてのJ銀行の保証に係る契約書等が作成された(以下,上記の各契約書による契約を,それぞれ「本件借入契約」,「本件売買契約」,「本件配給契約」,「本件保証契約」という。)。
 
上告人は,本件取引に参加することとし,本件組合に13795万円を出資した。本件組合は,H銀行から637463万円余(以下「本件借入金」という。)を借り入れ,これに各組合員からの出資金合計262105万円を加えた金員(総額899568万円余)をもって,Fに対し本件映画の代金856159万円余を支払い,その余はD及びH銀行に対する手数料の支払に充てた。
 
他方,Iは,Fを通じて,本件組合が支払った本件映画の代金を受領した。また,Iは,Gとの間で,本件映画に関する第二次配給契約を締結し,同契約に基づき,Iは本件借入金相当額である6000万ドルをGに対して支払い,Gは本件組合から許諾された本件映画の配給権をIに与えた。
 
上告人は,昭和63111日から平成41031日までの4事業年度の法人税等の各確定申告に当たり,本件映画のうち,自己の出資持分相当額(19分の1)に応じた金額を器具備品勘定に計上し,耐用年数を2年として減価償却費を損金に算入した。所轄税務署長は,上告人が計上した上記の減価償却費の損金算入を認めず,上記各事業年度の法人税等について,更正及び過少申告加算税賦課決定をした。
 
本件は,上告人が,本件映画の減価償却費の損金算入は認められないことを理由としてされた上記の各処分は違法であると主張して,これを争っている事案である。
 原審は,以下のとおり判断して,上記各処分を適法であるとした。
 
本件取引において,Iや本件組合が前記各契約を締結した私法上の真の意思は,Iにおいては本件映画に関する権利の根幹部分を保有したままで資金調達を図ることにあり,本件組合においては専ら租税負担の回避を図ることにあったものと認められる。したがって,組合員たる上告人の出資金は,その実質において,本件組合を通じてIによる本件映画の興行に対する融資を行ったものであって,本件組合ないしその組合員である上告人は,本件取引により本件映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではなく,単に上告人ら組合員の租税負担を回避する目的の下に,本件取引に関する契約書上,本件組合が本件映画の所有権を取得するという形式や文言が用いられたにすぎない。そうであるとすれば,上告人が本件映画を本件組合の減価償却資産に当たるとしてその減価償却費を損金の額に算入したことは相当ではない
 
論旨は,本件組合は本件売買契約により本件映画の所有権を取得し,これをリース事業に供しているのであるから,本件映画は減価償却資産に当たるというべきであり,本件組合は本件映画の興行に対する融資を行ったものであるとして減価償却費の損金算入を否認した原審の判断には,法令の解釈適用の誤りがあるという。
 
しかしながら,前記事実関係に加えて,原審の適法に確定した事実関係によれば,@本件組合は,本件売買契約と同時に,Gとの間で本件配給契約を締結し,これにより,Gに対し,本件映画につき,題名を選択し又は変更すること,編集すること,全世界で封切りをすること,ビデオテープ等を作成すること,広告宣伝をすること,著作権侵害に対する措置を執ることなどの権利を与えており,このようなGの本件映画に関する権利は,本件配給契約の解除,終了等により影響を受けず,Gは,この契約上の地位等を譲渡することができ,また,本件映画に関する権利を取得することができる購入選択権を有するとされ,A他方,本件組合は,Gが本件配給契約上の義務に違反したとしても,Gが有する上記の権利を制限したり,本件配給契約を解除することはできず,また,本件映画に関する権利をGの権利に悪影響を与えるように第三者に譲渡することはできないとされ,B本件組合が本件借入契約に基づいてH銀行に返済すべき金額は,Gが本件配給契約に基づいて購入選択権を行使した場合に本件映画の興行収入の大小を問わず本件組合に対して最低限支払うべきものとされる金額と合致し,また,Gによる同金額の支払債務の大部分については,本件保証契約により,J銀行が保証しており,Cさらに,上告人は,不動産業を営む会社であり,従来,映画の制作,配給等の事業に関与したことがなく,上告人が本件取引についてDから受けた説明の中には,本件映画の題名を始め,本件映画の興行に関する具体的な情報はなかったというのである。
 
そうすると,本件組合は,本件売買契約により本件映画に関する所有権その他の権利を取得したとしても,本件映画に関する権利のほとんどは,本件売買契約と同じ日付で締結された本件配給契約によりGに移転しているのであって,実質的には,本件映画についての使用収益権限及び処分権限を失っているというべきである。このことに,本件組合は本件映画の購入資金の約4分の3を占める本件借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあり,本件組合に出資した組合員は本件映画の配給事業自体がもたらす収益についてその出資額に相応する関心を抱いていたとはうかがわれないことをも併せて考慮すれば,本件映画は,本件組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず,本件組合の事業の用に供しているものということはできないから,法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)311項にいう減価償却資産に当たるとは認められない。したがって,本件映画の減価償却費を損金に算入すべきではないとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。











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