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JASRACを図案化したシールの偽造行為が問題となった事例
「‘JASRAC’シール偽造事件」昭和500311日東京高等裁判所(昭和49()2347 

【コメント】本件(刑事事件)は、日本音楽著作権協会の英文略称JASRACを図案化した本件シールを偽造した行為が、刑法1591項にいう「他人ノ署名ヲ使用シテ事実証明ニ関スル図画ヲ偽造シ」た場合に当たると認定した事例です。

[参考:刑法159私文書偽造等1]

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 


 所論は、「C」と表示された本件偽造シールについて、原判決は、これを署名を使用した私図画の偽造(刑法1591項)であると認定したが、(1)右シールは、発音的記号(文字)だけが用いられているものであるから図画ではない、また、署名が同時に図画であるというのは概念矛盾であるから原判決には法令適用の誤りがある、(2)右文字は私記号(あるいは印章)であつて署名ではないから原判決には事実誤認がある、私記号であれば刑法で処罰されないから原判決には法令適用の誤りがある、また私記号でなく私印であるとしても本件は単なる印章偽造(同法1671項)と解するのが相当であり、原判決には法令適用の誤りがある、と主張する。
 
しかし、原判決の事実認定および法令適用は相当であり、所論にかんがみ記録および証拠物を精査・検討しても、原判決には所論のような事実誤認あるいは法令適用の誤りがあるとは考えられない。
 
記録・証拠物によれば、本件シール(本件偽造の対象とされたシールをいう。以下同じ。)は、本来音楽著作権者から信託されて音楽著作物を管理している社団法人D協会、略称「C」、「C」(同協会は10年来この略称を使用している)が録音テープによる音楽著作物の使用者に対し、使用を許諾した際、その事実を証するために、使用者が製品に貼付することを条件として、原則として使用料の担保となる契約保証金と引き換えに交付しているものであること、本件シールは、昭和4111月ころから本件当時まで5年以上も使用され、音楽著作物の取引業界では右シールの意味が十分に知られていたこと、本件偽造シール(末尾添付)は、本件のシールに酷似しており、横幅約2.4センチ、中央部の縦幅約0.8センチの楕円形の白銀色台紙の上いつぱいにCという黒色のローマ字6字を左から右に配列・印刷されたものであること、誰でも多少注意すれば、これがローマ字つづりで何かの略称であると判読できるけれども、その字体は、通常の活字体とは異なり、字線の幅が太く、形態も特異で、両端よりも中央部の文字が大きくなつているなど、シールの台紙も相まつて全体的に図案化されていること、現在この図柄について商標登録申請中であること等が明らかである。
 
以上の事実を前提に検討すると、まず、右の「C」という文字自体は、D協会の英文略称をそのまま印刷した・文字による同協会の自己表現と認められるから、単なる印章・記号の類ではなく、署名にあたると解するのが相当である。また、本件シールは、多年協会が音楽著作物の使用を承認したことを証明するために交付・使用されていたものであるが、その趣旨は、業界内部ではもちろん、かなり一般的にも知られ、理解されていたと思われるから、右シールは、協会の自己同一性を表示すると同時に、さらに右の使用承認およびその証明という意味(思想性)をもち、この点も保護法益になつていると考えられる。したがつて、本件シールは、刑法1591項にいう私文書あるいは私図画のいずれかにあたると解される。ところが、本件シールは、形状その他を全体的に観察すると、高度に図案化されており、文字的(発音記号的)要素よりも象形的要素の方が強いとみられる。このことは、Cという文字自体を読解できないものでも、多年の流通過程を通じその趣旨を理解し得るに至つている状況からもうかがわれる。したがつて、本件は、原判示のとおり、「協会の署名を使用して…を証明する図画を偽造し」と解するのが妥当である。論旨は理由がない。











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