著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権侵害罪(2)
「名古屋市全住宅案内図帳‘偽作’事件」昭和350817日名古屋高等裁判所(昭和35()306 

【コメント】旧法下における事件ですが、現在でも参考にできる部分を含んでいます。

[参考:旧著作権法37条(著作権侵害の罪)]

偽作ヲ為シタル者及情ヲ知テ偽作物ヲ発売シ又ハ頒布シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五万円以下ノ罰金ニ処ス 


 著作権法37条にいわゆる著作権侵害行為として「偽作を為した者」とは、他人が著作権を有する著作物について、発行の意図をもつて、その著作権者の許諾を得ず該著作物と同一のものを再製し、あるいはその枝葉において多少の修正、増減を加える等の方法により第三者をして原著作物の再生と感知せしめ得る模造物を作成した者をいうものと解すべく、罪となるべき事実として、右37条に該当する事実を判示するには、右の各要件を充足するに足りる事実を具体的に摘示すれば足りるわけである。そして、この場合、犯人の偽作した原著作物について、そのいかなる部分が著作権の対象となつているかについて逐一、詳細にこれを判示する必要はなく、原著作物について他人が著作権を有することを示せば足りるものというべきである。そして、この理は、地図についても又同様である。(本件において、原判示名古屋市全住宅案内図帳(中区)昭和32年度版なるものは、単なる市街図の類と異り、住宅案内の目的のためにAが独自の考案を施し集成、整理した著作物であることは、後記説明のとおりである。)次に又、偽作の方法を示すについても、必ずしも所論の如く原著作物のいかなる部分に、いかなる修正、増減を加え、そして、その結果偽作とされた物のいかなる程度において原著作物の模造物として認められるかを逐一判示する必要はなく、著作権者の許諾を得ずに、その著作物に多少の修正、増減を加え、結局原著作物の模造物を作成した事実さえ摘示すれば足りるものというべきである。本件において、原判決は、被告人らの偽作の対象となつた名古屋市全住宅案内図帳(中区)昭和32年度版についてAが著作権を有すること(従つて、それが著作権法上の著作物に該当すること)、被告人らが、右Aに無断で、右全住宅案内図帳を利用し、これに若干の修正、増減を加え、名古屋市全商工、住宅案内図(中区)の標題を附した模造物を謄写印刷して作成した事実を摘示している。(もつとも、原判決は右被告人らの作成にかかる全商工住宅案内図が全商工住宅案内図帳の模造物であることを明示していないが、原判決に、被告人らが云々全住宅案内図帳の偽作をなした、というだけであるが、その意味するところは、右模造物を作成したことをいうものと解すべきである。)果して然らば、原判決は被告人らの著作権法37条該当の罪となるべき事実を摘示するについて欠くるところはないものというべく、論旨は理由がない。
 
(略)
 
所論にかんがみ、本件記録を検討し、原判決引用の各証拠、特に…によれば、被告人Dは、原判示名古屋市全住宅案内図(中区)昭和32年版が住宅協会から発行されたものであり、当時相当に市販されていることを承知しながら、被告人Eを通じてこれを購入し、作成者の許諾を得ないで、これを利用して、それに当時異動のあつた住宅、会社等について訂正を加え、あるいは多少の修正、増減を施したものの(元来、被告人Dは当初右全住宅案内図帳と同一のものを作成するはずであつたが、歳月の経過による住宅、会社等の異動のあつたことを考慮して、この点の訂正を図つたものである。)結局、右全住宅案内図帳を殆んど引き写した原判示全商工住宅案内図の原稿(それは、既存の右全住宅案内図帳を利用し、それに鉛筆を以つさて訂正、増減の箇所を記入したものである。)を作成し、これを販売の目的で原判示Fをして謄写印刷させたというのであるから、同被告人において著作権法37条にいう偽作することの犯意のあつたことは、明らかなものというべきである。同被告人は、右全住宅案内図帳について他人が著作権を有することは知らなかつたと弁疏しているが、たとえ同被告人において、かかる事実があつたとしても、未だその不知の故を以つて、同被告人が本件事実について故意を欠くものということはできないし、同被告人の本件についての責任を阻却すべき事由となすに足りないものである。なお、同被告人は他人の著作物と同一又は模造物を作成しても法に触れるところはないものと考えていた、と検察官に対して述べているが、それこそ単なる法の不知であつて、同被告人の罪責を左右するものではない











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