著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権譲渡の黙示の合意の成立を否定した事例(7)
写真集『写真で見る首里城』事件平成200924日那覇地方裁判所(平成19()347 

 被告らは,被告東亜は,平9成年929日に原告を面接した際,原告との間で,原告が被告東亜に就職する前に撮影した写真の買取りの趣旨で金員を支払ったから,本件原写真18等については,原告から著作権の譲渡を受けたか,又は複製等の許諾等を受けた旨を主張する。
 
しかしながら,著作者が自己の著作物につき複製権や翻案権等の著作権を他人に譲渡するときは,以後自己が作成した物であるにもかかわらず複製や翻案等を行うことができなくなるという重大な結果を生じることになるし,著作権の譲渡を受ける者としてもその後の独占的利用を確保する必要があり,かつ権利を主張する第三者が出現するときはその営業活動上重大な不都合を生じることになるから,著作権の譲渡に当たっては,契約書等の書面を作成して,その合意内容を明確にするのが通常である。
 
しかるに,本件全証拠によっても,原告が被告東亜との間で,本件原写真18等の,原告が被告東亜に就職する以前に作成した写真の著作権を被告東亜に譲渡する旨の契約書等の書面を作成したことを認めることはできない。
 
その上,前記の支度金20万円のうちに,原告が被告東亜に就職する前に撮影した写真の著作権の譲渡代金が含まれていたことを認めるに足りる証拠はない。前記のとおり,Bは熱心に原告に対し被告東亜に就職するよう勧めていたものであったし,…によれば,原告は,被告東亜に就職した初日(平成9101日)に早速,国営沖縄記念公園・海洋博覧会地区に出かけて,被告東亜の業務として,イベントの集合写真を撮影したことが認められるから,上記支度金は,原告の就職を後押しし,原告に当面生じる費用の支弁を援助する趣旨のものであったと推認することができる。
 
結局,被告東亜が,平成9929日に原告を面接した際,原告との間で,本件原写真18等の,原告が被告東亜に就職する前に撮影した写真の著作権の譲渡を受けた旨の,被告らの上記主張は理由がない。
 (略)
 
被告らは,原告が被告東亜を退職するときに,被告東亜に対し,自己が職務外で撮影した,被告東亜が保管中のフィルムに係る権利を放棄するとの意思表示をしたから,本件原写真18等の,被告東亜の職務と無関係に撮影した写真に係る著作権等を放棄したか,又は被告東亜に上記著作権等を無償で譲り渡した等と主張する。
 
しかしながら,原告が被告東亜に対し,自己が職務と無関係に撮影した写真に係る著作権を無償で譲渡又は放棄したことを認めるに足りる証拠はない。
 
むしろ,前記のとおり,原告は被告東亜に対し,その退職に際して自己が撮影した写真のフィルムを返還するよう要求しており,他方被告東亜も,原告に対し,原告が退職した後に,原告が被告東亜に就職する前に撮影して,被告東亜に預けた写真のフィルムのうち,本件原写真18以外の写真のフィルムを返還したものであった。
 また,前記と同様に,原告が本件第3版に自己が被告東亜に就職する前に撮影した写真が使用されていることを知りながら,被告東亜に対して使用料を要求しなかったのは,自己が被告東亜の従業員及び取締役であった当時に,その掲載がほぼ決まっており,退職当時には制作作業が終盤にさしかかっていたからにすぎなかった。
 
そうすると,原告が被告東亜を退職する際に,自己が被告東亜に就職する以前に撮影し,被告東亜のフォトライブラリーに登録する等して,被告東亜においてフィルムを管理中であった写真の著作権を被告東亜に対して無償で譲渡ないし放棄したというのは困難である。











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