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「盗作」との事実の摘示の真実性が問題となった事例
平和モニュメント盗作ビラ事件平成131011日東京地方裁判所(平成12()2772 

【コメント】本件は、原告(地方公共団体)が、被告に対し、被告が、「本件作品」が盗作ではないにもかかわらず、盗作の疑いがある作品であると公然指摘することは、原告の社会的信用を毀損する行為であって、原告に対する不法行為を構成すると主張して、民法723条の「名誉を回復するに適当なる処分」として、謝罪文の掲載を求めた事案です。

 
本件においては、次のような事実関係がありました。

原告は、市制施行30周年を迎えるに当たり、その記念事業の一環として都市宣言モニュメントを制作・設置するため、「平和都市宣言」についてモニュメント作品を公募することに決定し、応募作品の中から訴外Cのスケッチ図面による「平和の門」と題する作品(「本件作品」)を入選作品に決定した。そして、原告代表者市長は、東久留米市…所在の広場内に、本件作品のデザインに基づくモニュメント(「平和都市宣言モニュメント」)を設置することとした。

被告は、自ら作成するインターネットのホームページ「Bのページ」(「本件ホームページ」)上において、本件作品による平和都市宣言モニュメントの設置イメージ図を載せた上で「平和モニュメントに盗作の疑い」との見出しを付した記事(「本件記事」)を掲載した。被告は、また、本件ホームページの本件記事をプリントアウトし、それに日経産業新聞紙面に掲載された株式会社マグナのボールジョイント磁石の広告写真(「本件広告写真」)の切り抜きや「妙ににているデザイン この写真からヒントを得て作られる彫刻と思われます。」との手書きの文言等を加えて作成したビラ(「本件ビラ」)を東久留米市民らに配布した。 


 請求原因のとおり,本件記事は,本件作品による平和都市宣言モニュメントの設置イメージ図を載せた上で,「平和モニュメントに盗作の疑い」との見出しを付したものであり,…によれば,上記の「平和モニュメントに盗作の疑い」との見出しは,ゴシック体の太字で大きく記載されていることが認められる。また,請求原因のとおり,本件ビラは,本件ホームページの本件記事をプリントアウトし,それに本件広告写真の切り抜きや「妙ににているデザイン この写真からヒントを得て作られる彫刻と思われます。」との手書きの文言等を加えて作成されたものであり,…によれば,本件ビラには,上記の手書きの文言の外にも,本件広告写真について,「2年前から公表されている写真」,「この写真が公になった時期によって盗作かどうかはっきりします」との手書きの文言が記載されていることが認められ,これらの記載を前提とすれば,本件記事及び本件ビラの内容は,本件作品につき,本件広告写真ないしその対象物の盗作である疑いがあるとの指摘をしているものと認めるのが相当である。
 
(略)
 
盗作」とは,一般に,他人の作品の全部又は一部を自分の作品として発表することをいうが,これを著作権法上他人の著作権に触れる行為に当たるか否かという観点から定義すると,「他人の既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを,無断で,自己の作品中に再製させること」と解される
 
そして,被告は,本件記事及び本件ビラにおいて,本件作品につき,本件広告写真ないしその対象物の盗作である疑いがあるとの指摘をしているが,それは,本件作品について,マグナ社の有する本件広告写真ないしその対象物の著作権に違反しているという指摘をしていることと同視することができるので,以下,本件作品がマグナ社の著作権に違反しているか否かについて検討する。
 
まず,本件作品がマグナ社の製作している本件磁石の著作権に違反するか否かという点について検討すると,本件磁石は,量産される工業製品であるから著作権法21号の「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と認めることはできず,同条の「著作物」に該当しないと解されるので,その再製行為は,そもそも著作権違反の問題になり得ないというべきである。
 
次に,本件広告写真の著作権に違反するか否かという点について検討すると,写真が,著作権法1018号の「写真の著作物」として著作権法の保護の対象となるためには,それが対象物の単なる機械的複製ではなく,写真の被写体の選定,写真の構図,光量の調節,シャッター速度などの工夫によって,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められることを要すると解されるところ,…によれば,本件広告写真は,合成写真的な技法によってネジ部分の回転の軌跡を映像化することによって,円筒形の部分とその上部の球形の部分とのジョイント部分が自由に回転することができるようになっていることを強調しているところに特徴があり,それに加えて,円筒形の部分及びその上部の球形の部分に左右からの光線を当てることによって,本件磁石の両側の白く光った部分とその間の影となった部分が相まって,本件磁石の円筒形の部分及びその上部の球形の部分の金属的な質感を強く印象させているものと認められ,上記事実によれば,本件広告写真は,撮影者のこのような思想内容が表現されているものとして,著作権法1018号の「写真の著作物」に該当するというべきである。ところが,…によれば,本件作品は,前面を約10個の正方形状に区切った2本の石造りの角柱とその上部の金属製の2本の円弧からなる高さ315メートルのモニュメントのデザインであることが認められるから,上記のような本件広告写真の撮影者の思想内容が,本件作品に再製されていると認めることはできないといわざるを得ない。
 
(略)
 
以上のとおり,本件作品が,マグナ社の本件広告写真ないしその対象物の著作権に違反していると認めることはできないのであるから,本件作品については,本件広告写真ないしその対象物の盗作であると認めることはできず,したがって,本件作品につき,本件広告写真ないしその対象物の盗作の疑いがあるとの本件記事及び本件ビラの事実の摘示は真実であるとは認められないといわざるを得ない。











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