著作権重要判例要旨[トップに戻る]







他人の著作権と抵触する商標に対する商標法417号適用の可否
「キューピー人形商標登録無効審判事件」
平成130530日東京高等裁判所(平成12(行ケ)386 

 [特許庁における手続の経緯]
 
被告は、別添審決謄本別掲本件商標の人形の図形からなり、指定商品を…「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」とする商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。原告は、本件商標登録の無効審判の請求をし、特許庁は、同請求を平成10年審判第…号事件として審理した結果、平成12829日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年927日、原告に送達された。
 
[審決の理由]
 
審決は、別添審決謄本記載のとおり、本件商標が公の秩序又は善良の風俗(以下「公序良俗」という。)を害するおそれがある商標に当たるから商標法417号に規定する商標に該当するとの原告の主張について、@その使用が他人の著作権と抵触する商標であっても、同号に規定する商標に当たらない、A…、B…から、本件商標は、商標法417号の規定に違反して登録されたものではないとした。
 
(略)
 
[他人の著作権との抵触について]
 
著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいい(最高裁昭和5397日第一小法廷判決)、その翻案とは、既存の著作物に依拠し、その本質的特徴を直接感得することができるものを再製することをいう(最高裁昭和55328日第三小法廷判決参照)。また、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分についてのみ生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である(最高裁平成9717日第一小法廷判決)。
 
そこで、図形等からなる商標について登録出願がされた場合において、その商標の使用が他人の著作権を侵害しこれと抵触するかどうかを判断するためには、単に当該商標と他人の著作物とを対比するだけでは足りず、他人の著作物について先行著作物の内容を調査し、先行著作物の二次的著作物である場合には、原著作物に新たに付与された創作的部分がどの点であるかを認定した上、出願された商標が、このような創作的部分の内容及び形式を覚知させるに足りるものであるかどうか、このような創作的部分の本質的特徴を直接感得することができるものであるかどうかについて判断することが必要である。著作権は、特許権、商標権等と異なり、特許庁における登録を要せず、著作物を創作することのみによって直ちに生じ、また、発行されていないものも多いから、特許庁の保有する公報等の資料により先行著作物を調査することは、極めて困難である
 
また、特許庁は、狭義の工業所有権の専門官庁であって、著作権の専門官庁ではないから、先行著作物の調査、二次的著作物の創作的部分の認定、出願された商標が当該著作物の創作的部分の内容及び形式を覚知させるに足りるものであるかどうか、その創作的部分の本質的特徴を直接感得することができるものであるかどうかについて判断することは、特許庁の本来の所管事項に属するものではなく、これを商標の審査官が行うことには、多大な困難が伴うことが明らかである。
 
さらに、このような先行著作物の調査等がされたとしても、出願された商標が他人の著作物の複製又は翻案に当たるというためには、上記のとおり、当該商標が他人の著作物に依拠して作成されたと認められなければならない。依拠性の有無を認定するためには、当該商標の作成者が、その当時、他人の著作物に接する機会をどの程度有していたか、他人の当該著作物とは別個の著作物がどの程度公刊され、出願された商標の作成者がこれら別個の著作物に依拠した可能性がどの程度あるかなど、商標登録の出願書類、特許庁の保有する公報等の資料によっては認定困難な諸事情を認定する必要があり、これらの判断もまた、狭義の工業所有権の専門官庁である特許庁の判断には、なじまないものである。
 
加えて、上記のとおり、特許庁の審査官が、出願された商標が他人の著作権と抵触するかどうかについて必要な調査及び認定判断を遂げた上で当該商標の登録査定又は拒絶査定を行うことには、相当な困難が伴うのであって、特許庁の商標審査官にこのような調査をさせることは、極めて多数の商標登録出願を迅速に処理すべきことが要請されている特許庁の事務処理上著しい妨げとなることは明らかであるから、商標法417号が、商標審査官にこのような調査等の義務を課していると解することはできない。
 
したがって、その使用が他人の著作権と抵触する商標であっても、商標法417号に規定する商標に当たらないものと解するのが相当であり、同号の規定に関する商標審査基準にいう「他の法律(注、商標法以外の法律)によって、その使用等が禁止されている商標」には該当しないものというべきである。そして、このように解したとしても、その使用が商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触する商標が登録された場合には、当該登録商標は、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により使用することができないから(商標法29条)、不当な結果を招くことはない。











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