著作権重要判例要旨[トップに戻る]







過失相殺が問題となった事例
100円ショップDVD『SL世界の車窓』販売事件平成220421日東京地方裁判所(平成20()36380)/平成221110日知的財産高等裁判所(平成22()10046 

【コメント】本件は、世界各地のSLのビデオ映像を撮影した原告が、原告に無断で当該ビデオ映像を編集して作成されたDVD「SL世界の車窓」を被告が販売等したとして、被告に対し、当該ビデオ映像についての著作権(複製権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)の侵害を理由とする損害賠償金の支払等を求めた事案です。

 
本件においては、次のような事実関係がありました。

被告は、いわゆる「百円均一ショップ」の最大手として、物品を廉価に販売している流通業者である。

補助参加人(以下、被告と併せて「被告ら」ということがある。)は、テレビ用映画フィルムの配給等を業とする株式会社である。Bは、補助参加人の前代表取締役であり、補助参加人のほか、映像制作を行うことを業とする会社である「オスカ企画を経営している。Cは、補助参加人の専属映像ディレクターである。

原告は、世界各地を取材し、平成14年ころから世界の鉄道動画をデジタルビデオテープ(「DVテープ」)に記録していた(テープ本数15本、撮影時間は約25時間。以下、当該鉄道動画を「本件映像」といい、本件映像が記録されたDVテープを「本件DVテープ」という。)。原告は、本件映像について、その撮影者として、著作権及び著作者人格権を取得した。

被告は、平成1910月ころから、「本件DVD」を税込み315円で販売した。本件DVDは、補助参加人が本件映像を利用して編集・作成したものである。 


【原審】

 [過失相殺について]
 
被告らは,原告が,本件DVテープを補助参加人に保管させたまま,何ら対応をしなかったことをもって,原告に過失があると主張する。
 
確かに,前記のとおり,原告は,オスカ企画において本件映像を利用した放送番組の制作の企画を検討していることを告げられ,本件映像の説明書の作成を依頼されながら,当該説明書を作成せず,また,本件DVテープの交付を求めることもなく,補助参加人に本件DVテープを保管させたままであったことから,Cにおいて,自ら資料等を調査した上で,本件映像を利用して本件作品1及び2並びに本件DVDを制作するに至ったものである。このような経緯に照らすと,原告は,遅くとも,本件映像の説明書の作成を依頼された段階では,補助参加人又はオスカ企画において本件映像を利用した放送番組を制作することを予想し得たものといえ,それにもかかわらず,放送番組を制作する企画の進行を顧慮することなく,補助参加人に本件DVテープを保管させたまま,補助参加人に対し特段の連絡等もしなかったものであり,この点について過失があると認められるから,過失相殺として,原告の損害額から1割を減ずるのが相当である。
 
なお,原告には過失がなかったとする原告の主張は,前記認定事実に照らして,いずれも採用することはできない。

【控訴審】

 
[過失相殺について]
(1) 原判決の認定について
 
被控訴人等は,控訴人が,本件DVテープを補助参加人に保管させたまま,何ら対応をしなかったことをもって,控訴人に過失があると主張する。
 
確かに,争点(1)についての判断で指摘したとおり,控訴人は,Aから,オスカ企画において本件映像を利用した放送番組制作の企画を検討していることを告げられ,本件映像の説明書の作成を依頼されながら,当該説明書を作成せず,また,本件DVテープの交付を求めることもなく,補助参加人に本件DVテープを保管させたままにしていたことから,Aにおいて,自ら資料等を調査した上で,本件映像を利用して本件作品1及び2並びに本件DVDを制作するに至ったものである。
 
このような経緯に照らすと,控訴人は,遅くとも本件映像の説明書の作成を依頼された段階では,補助参加人又はオスカ企画において本件映像を利用した放送番組を制作することを予想し得たものといえ,それにもかかわらず,放送番組を制作する企画の進行を顧慮することなく,補助参加人に本件DVテープを保管させたまま,補助参加人に対し特段の連絡等もせず,さらに,Aからの複数回の問合せに対しても何ら応答しなかったことは,いささか常識に欠けるものであったといえる。
 
(略)
(3) 過失相殺の可否について
 
前記(1)のとおり,控訴人は,遅くとも本件映像の説明書の作成を依頼された段階では,補助参加人又はオスカ企画において本件映像を利用した放送番組を制作することを予想し得たものということができ,その後の控訴人の対応は,いささかとはいえ,常識に欠けるものであったといえる。
 
しかしながら,控訴人の対応が常識に欠けるものであったとしても,著作権者である控訴人の許諾を得ないで,その著作物である本件映像を利用して本件DVDを制作することが著作権侵害及び著作者人格権侵害となることは,補助参加人又はオスカ企画においても,当然に認識していなければならないことであるから,控訴人の許諾を得られると見込んでいたとしても,その許諾を得ないままに本件DVDを制作したことが是認される余地はないといわざるを得ない
 
しかも,争点(1)についての判断で指摘したとおり,Aが控訴人に対し,本件映像を利用した放送番組制作の企画を検討していることを伝えた段階では,当該企画自体が明確に確定していたわけではなく,補助参加人は,本件作品1及び2が地方テレビ局において放送された後,博美堂からこれらの各作品を被控訴人向けのDVD作品として商品化することを提案されたのであるから,控訴人が本件映像の説明書の作成を依頼された段階では,放送番組制作のみならず,DVD化までが検討されていたわけではなかったのであって,控訴人において,放送番組を制作する企画が検討中であることを知らされたことをもって,補助参加人又はオスカ企画が本件映像を利用した放送番組を制作することを予想し得ることが可能であったということはできても,当該番組を更に被控訴人向けのDVD作品として具体的に商品化することまで予想することは困難であったものというほかない。
 
したがって,本件DVテープに対して何らの対応も取らなかったことをもって,控訴人に被控訴人等の主張する過失があるとまで認めることは困難であって,過失相殺に関する被控訴人等の主張は,その前提を欠き,これを採用することができない
 
(略)
 
[予備的主張(著作権法1143項)について]
 
(略)
 
によれば,控訴人が受けるべきDVD1枚当たりの著作権料相当額を算定するに当たって基礎とすべきDVD1枚当たりの販売価格としては,本件DVDの映像が世界各地の貴重なSLを収録したものであること,その収録時間(46分),同種のDVD商品の価格等を考慮すれば,4000円が相当であると認められる。
 
他方で,被控訴人による本件DVDの販売価格である315円(税込み)は,前記の本件DVDの内容や同種のDVD商品の販売価格に照らして,相当程度低廉であって,かつ,被控訴人による販売価格は,控訴人に無断で放送された本件作品1及び2を利用して本件DVDが作成されたことから可能となったものであることからすれば,これを基準に控訴人の著作権料相当額を算出するのは相当でない
 
(略)
 
以上からすると,補助参加人及びオスカ企画が関与して制作された本件DVDについて,販売枚数1枚当たりの控訴人が受けるべき著作権料相当額は,販売価格の5パーセントと認めるのが相当である。
 
被控訴人における本件DVDの販売枚数は6581枚であり,原判決は,かかる枚数について控訴人の損害を算定しているが,本件映像の複製権侵害は,納品された9984枚において生じているものであって,控訴人が受けるべき著作権料相当額は,9984枚について算定すべきである。
 
したがって,本件映像の著作権の行使につき控訴人が受けるべき金銭の額に相当する額は,1996800円であると認められる。
(計算式)4000円×5パーセント×9984枚=1996800











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