著作権重要判例要旨[トップに戻る]







製品取扱説明書の編集著作物性
「浴湯保温器『風呂バンス』vs.『風呂ポット』事件」
平成170208日大阪地方裁判所(平成15()12778/平成171215日大阪高等裁判所(平成17()742 

【原審】

 
原告取扱説明書の編集著作物性
 
…によれば,次の事実が認められる。
 
製品に添付される取扱説明書は,当該製品の購入者に対し,当該製品の使用方法,機能,生じ得る問題点とその対処方法,部品・部分名称,注意・禁止事項などを,文章やイラストで説明しているものである。
 
その際,文章には,その説明内容の重要度に応じて,文字に大小や太細といった変化を付けたり,下線等の修飾を施したり,文章の冒頭に各種注意を促す絵表示を施したりする方法が採られる場合が多い。また,各頁に何が記載してあるのかを明らかにするために,頁上部にタイトルを付けたり,時系列的に説明したりする方法が採られることが多い。
 
また,説明内容を理解しやすくするために,当該製品を簡単にデフォルメしたイラストや製品そのものの写真を使用することがある。その際,イラストや写真は,その説明文章に近接する上部,下部,横部などに配されるのが通常である。
 
(略)
 
編集著作物は,「素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に限り著作物として保護される(著作権法121項)。編集著作権において,保護の対象となるのは,素材の選択,配列方法という抽象的なアイデア自体ではなく,素材の選択,配列についての具体的な表現形式である
 
前記に認定した事実によれば,原告取扱説明書は,原告製品を購入した者に対して,その使用方法,特徴点,生じ得る問題とその対処方法,手入れ方法,各部の名称等,安全上の注意事項及び警告事項等を説明するものであるということができるから,原告取扱説明書は,その性質,目的からして,原告製品に関する各種情報という素材を選択し,これを配列している点の創作性が問題となるということができる。これに対し,被告取扱説明書は被告製品に関する各種情報という素材を扱うものであるから,素材となる情報が原告取扱説明書と被告取扱説明書とで異なる商品に関するものである。したがって,既にこの点において,被告取扱説明書が原告取扱説明書の編集著作権を侵害するものということはできないものというべきである。
 
また,この点をしばらくおくとしても,原告は,原告取扱説明書中の説明文,イラスト,絵表示を素材ととらえ,どのような説明文(文章内容及び文字の大小・太細,下線の有無など),イラスト,絵表示を使用しているかを素材の選択と考え,説明文,イラスト,絵表示の相互の位置関係等を素材の配列と考えて主張を展開しているもの解され,これに対し被告は,上記選択や配列はいずれもありふれたものであると主張している。
 
そこで,原告の主張する説明文,イラスト,絵表示自体が著作権法121項の「素材」ととらえられるとして,その編集著作物性の有無を検討する。
 
原告取扱説明書中の個々の説明文や原告製品のイラストや絵表示自体は,著作物性における創作性を問題とすることはできても,編集著作物性を検討する場合は,個々の説明文,イラスト,絵表示の相互の位置関係の「配列」の創作性を検討する余地が考えられるにとどまる。
 
この点について,原告が原告取扱説明書の配列における創作性と主張するところは,原告製品の使用方法,特徴点,生じ得る問題とその対処方法,手入れ方法,各部の名称等,安全上の注意事項及び警告事項等の章立て,使用方法の説明においては時系列に沿って説明文を配列していること,生じ得る問題点とその対処方法の説明において,問題点を頁の左に,対処方法を頁の右に配置していること,禁止事項についてはイラストに「×」印を付していること,注意事項と警告事項を分け,各事項の説明においては頁の左側に絵表示を,その右側上段に各事項を,その右側下段に説明文を配置していること,説明文に沿って適宜イラストをその横や下に配置していること,注意事項等の前には絵表示を置いて注意事項等であることの注意喚起を促していること,以上の点と解される。しかしながら,これらの点は,製品の取扱説明書における,章立て,文章,イラスト,絵表示の配列としてありふれたものといわざるを得ない
 したがって,仮に本件において素材の配列の創作性を検討する余地が考えられるとしても,原告の主張する点において創作性を肯定することはできない。
 
以上のとおり,原告取扱説明書には編集著作物性を認めることはできないから,争点について判断するまでもなく,原告取扱説明書の編集著作権侵害を理由とする請求は理由がない。

【控訴審】

 
控訴人取扱説明書の著作物性と複製の有無について
 
引用にかかる原判決認定,説示のとおりであって,編集著作物は,「素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に限り著作物として保護される(著作権法121項)ところ,商品の取扱説明書は,当該商品に関する各種情報という素材を扱うものであるから,控訴人取扱説明書と被控訴人取扱説明書とは対象とする商品が異なっており,「素材」となる情報も異なるから,既にこの点において,被控訴人取扱説明書が控訴人取扱説明書の編集著作権を侵害するものということはできない。
 
また,この点をおいて,控訴人の主張する説明文(文章内容及び文字の大小・太細,下線の有無など),イラスト,絵表示自体を著作権法121項の「素材」ととらえて,その編集著作物性の有無を検討しても,控訴人主張にかかる,@控訴人商品の使用方法,特徴点,生じ得る問題とその対処方法,手入れ方法,各部の名称等,安全上の注意事項及び警告事項等の章立て,使用方法の説明においては時系列に沿って説明文を配列していること,A生じ得る問題点とその対処方法の説明において,問題点を頁の左に,対処方法を頁の右に配置していること,禁止事項についてはイラストに「×」印を付していること,B注意事項と警告事項を分け,各事項の説明においては頁の左側に絵表示を,その右側上段に各事項を,その右側下段に説明文を配置していること,C説明文に沿って適宜イラストをその横や下に配置していること,D注意事項等の前には絵表示を置いて注意事項等であることの注意喚起を促していることは,いずれも,商品の取扱説明書における,章立て,文章,イラスト,絵表示の配列としてありふれたものといわざるを得ないから,「配列」の創作性を肯定することはできない。
 
したがって,いずれにせよ,控訴人取扱説明書には編集著作物性を認めることはできないから,複製の有無について判断するまでもなく,控訴人取扱説明書の編集著作権侵害を理由とする請求は,いずれも理由がない。
 これに対し,控訴人は,本件の場合,編集著作物としての「素材」は,「浴湯保温器という商品の各種情報」であり,控訴人取扱説明書と被控訴人取扱説明書とで素材は共通していると主張する。
 
しかし,控訴人商品と被控訴人商品は,「浴湯保温器」という点では同じであるが,既にみたとおり,商品の形態及び商品名とも類似するものとはいえず,別個の会社の製造販売する別個の商品であることは否定できないから,「素材」となる情報は異なるといわざるを得ない。
 
また,控訴人が主張するように,同種商品である「ユーフィー」及び「湯美人」の取扱説明書と控訴人取扱説明書とで,説明文,イラスト,絵文字の配列が異なっているとしても,同種商品の取扱説明書における,説明文,イラスト,絵文字のありふれた「配列」がたった一つしか存在しないとはいえないから,上記同種商品の取扱説明書の存在も,前記認定判断を左右するものではない。











相談してみる

ホームに戻る