アメリカにおける著作権登録の効能

著作物の著作権者又はその排他的権利者は、①「納付物」(deposit)、②「申請書」(application)、③「手数料」(fee)を「著作権局」(the Copyright Office)に引き渡すことによって、「著作権主張の登録」(registration of copyright claim)を受けることができます(米国著作権法408条(a))。
この著作権局に対する登録は、日本における文化庁に対する登録と同様、著作権による保護の条件ではありません。しかしながら、米国著作権局には年間60万件以上の登録申請があるとされており、その利用度は日本の登録制度に比べて、はるかに大きいといえます。
それではなぜ、米国ではこれほど登録制度が利用されているのでしょうか?それは、かかる著作権主張の登録には、一般的に言って、著作物の内容並びに著作者及び著作権者を実質的に公示する機能がある(この機能については日本でも同じです。)ほか、具体的には、次に述べるように、米国著作権法によって強力な法的効果(利点)が認められているからです。

上述しましたように、著作権主張の登録は、著作権による保護の条件ではありません。しかしながら、アメリカ連邦著作権局へ著作権主張の登録をしておきますと(登録証明書を入手しておきますと)、以下のような法的効果(利点)が得られます。

登録が著作物の最初の発行の前に又は最初の発行から5年以内になされた場合には、いかなる司法手続においても、その登録証明書(the certificate of a registration)は、当該著作権の有効性及び当該登録証明書に記載された事実の「一応の証拠」(prima facie evidence)となります(米国著作権法410条(c))。この規定により、登録証明書に記載された事実が一応すべて事実であるという法律上の推定を受けるため、登録を備えておけば、著作権が第三者に侵害された場合、自分がその著作物の正当な権利者であることを証明する責任等から解放されることになり、立証責任が軽減されるというメリットがあります。

登録が著作物の最初の発行後3ヶ月以内になされているか、又は著作権が侵害される前になされている場合には、著作権侵害訴訟において、「法定損害賠償金」(statutory damages)と「弁護士報酬」(attorney's fees)を受けることができます(米国著作権法412条)。

著作権が侵害された場合、侵害者は、原則として、①著作権者が被った「現実的損害賠償額」(actual damages)及び当該侵害者が受けた「利益額」(profits)か、又は②「法定損害賠償額」のいずれかを支払う責任が生じます(米国著作権法504条(a))。しかし、原告(著作権者)側で「現実的損害賠償及び利益」を求めるよりも、「法定損害賠償」を請求するほうが有利であると考える場合には、終局判決が言い渡される前はいつでも、現実的損害及び利益に代えて、裁判所が正当と考える金額の法定損害賠償(原則として、侵害にかかる「1つの著作物」(one work)について750ドル以上30,000ドル以内。侵害の故意が認定されれば、最高額で150,000ドルを限度として増額されうる。)の支払いを選択することができます(米国著作権法504条(c)。また、侵害訴訟において勝訴した場合には、裁判所は、勝訴当事者(prevailing party)に対して、訴訟費用の一部として「妥当な弁護士報酬」(a reasonable attorney's fee)を裁定して、これを当該勝訴当事者に認めることができるとされています(米国著作権法505条)。

アメリカ連邦著作権局へ著作権主張の登録しておきますと、日本においても、裁判において強い事実上の推定力が認められる可能性があります(「ジョイサウンド仮処分事件」(東京高裁平成9年8月15日)判決参照)。ただし、この点は、日本にも国の機関で文化庁に対する各種の登録制度が用意されていますので、日本において著作権に関する事実上の推定力(登録による実質的な公示機能)を期待するのであれば、そちらを利用する方が妥当と言えます。

米国著作権法では、例えば、「アメリカ合衆国で最初に発行された(発行)著作物」などを「合衆国著作物」
(
United State work)と定義していますが(米国小作健法101条参照)、そのような「合衆国著作物」については、著作権主張の登録等がなされるまでは、原則としていかなる著作権侵害訴訟も提起することはできません(米国著作権法411条(a))。すなわち、「合衆国著作物」について著作権侵害訴訟を提起しようとする場合には、原則として登録が必要条件となります。

≪〝貧者の著作権〟poor man's copyright とは

アメリカでは、「貧者の著作権」(poor man's copyright)と呼ばれる慣例が一部で行われているようですが、これは正規のやり方ではなく、米国著作権法にそのような取扱いを認める条項はありません。
「貧者の著作権」とは、自らが著作者であること(著作権を主張できること)を確保するために、自分の作品のコピーを自分で自分に対して郵送して、その創作事実を証明しようとする慣例をいいます。当然、これをもって著作権局に対する正規の登録に代えることはできません。




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     カネダ著作権事務所


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