コンテンツビジネスを成功に導くために

≪コンテンツとはなにか≫

「コンテンツビジネス」とは、文字通り、「コンテンツに関わるビジネス」のことですが、それでは、「コンテンツ」とは何でしょうか。「コンテンツ」とは、要するに、「著作物」のことをさしているのでしょうか。
[コンテンツ=著作物] という等式は必ずしも正しくありません。[コンテンツ≧著作物] とイメージした方は実態に近いと思います。
平成16年に「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」(以下、「コンテンツ促進法」といいます。)という法律がつくられたのですが、この中に「コンテンツ」とは何か、その定義規定が置かれています(同法2条1項)。この規定では、「コンテンツ」を、次のように定義しています:

『映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラムであって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するもの』

また、一般的にも、「コンテンツ」は、より広義に、ファッションや食、地域ブランド等を含む概念としても使われているようです。つまり、「コンテンツ」は、そのほとんどが著作権法によって保護される「著作物」の射程範囲に入りますが、著作権法上の「著作物」に該当しないような人間の知的創造物も「コンテンツ」として扱われる場合がある、ということです。そのため、「コンテンツ」に対する権利保護の中心は著作権法であるといって差し支えありませんが、「コンテンツ」の具体的な中身によっては、著作権法以外の法律、特に、特許法や意匠法、商標法などの知財法が、単独で、または著作権法と重畳的に、当該「コンテンツ」の保護にかかわる場面も出てきます。

≪コンテンツビジネスにかかわる法律≫

コンテンツビジネスの遂行には、さまざまな法律が係わってきます。
「コンテンツビジネス」と言っても、およそ「ビジネス」である以上、車の売買や不動産取引とった一般的な「ビジネス」に関わる「民法」や「商法」の知識は欠かせません。「ビジネス」には通例、株式会社等の会社が関わりますから、「会社法」の知識も必要になります。「税務や会計」に関する知識も外せません。「労務に関わる法律」の知識が問われる場面も出てくるでしょう。「コンプライアンス」(法令遵守)の視点を強調すれば、不公正な取引方法を規制する「独占禁止法」や「刑法」(例えば、名誉棄損罪)、さらには表現の自由、プライバシー侵害にかかわる「日本国憲法」の規定さえ関係してきます。スキームの選択に「LLP法」(有限責任事業組合契約に関する法律)や「LPS法」(投資事業有限責任組合契約に関する法律)がかかわってくることもあれば、事情によっては「破産法」をチェックしなければならない場面も出てきます。コンテンツの「海外戦略」・「国際展開」ということになると、いわゆる「国際私法」や「準拠法」、相手国の関係法にも気を配らなければなりません。
上で挙げただけでも、とても一人ですべての法律(知識)を押さえることは、法律の専門家にとっても容易なことではありません。ましてや、表現者(クリエーター、アーティスト)やプロデューサーにとってはなおさら困難な作業です。

コンテンツビジネスの根幹は、それが「権利(処理)ビジネス」であるということです。かかる「権利(処理)」の中で最も重要なのが「著作権(処理)」(広義)です。したがって、「コンテンツ」―上述したように、最近ではこの用語をかなり広い意味合いで用いる傾向にありますが、ここではコンテンツ産業の中心的な分野である「劇場用映画」・「アニメ」・「ゲームソフト」・「テレビ番組」・「音楽」・「マンガ」・「キャラクター」・「出版」を特に念頭に入れていますに特有な法分野として「著作権法」がとりわけ重要です。ネーミングに関わる「商標法」も重要です。ビジネス上の不正競争を規制する「不正競争防止法」や下請取引を規制する「下請法」も知っておかなければなりません。「契約法」の一般法である民法の諸規定の知識も必須です。

表現者やプロデューサーを含めてコンテンツビジネスに携わる者にとって大切なことは、コンテンツビジネスの遂行に関わる法律のすべての知識を持つことではありません。コンテンツビジネスの特性を把握した上で、「どの場面にどのような法律問題(ビジネスの円滑な遂行を阻害するような法律問題)がかかわってくるのか」ということを把握すること(予測すること)が大切なのです。「この場面にはあの法律が関係しそうだ」、「この問題に対処するには〇〇の専門家と話をすればよさそうだ」といった具合です。

以上のように、コンテンツビジネスには実にさまざまな法律が関係してきますが、その中心はやはり「著作権法」です。ですので、コンテンツビジネスに携わる方は、まず、著作権法の基本的な知識を身に付けておきましょう。

コンテンツビジネスの要は「権利処理」である

先ほども言及しましたが、コンテンツビジネスとは、これを一言で称すると、「権利(処理)ビジネス」です。そこでは著作権を中心としたさまざまな権利著作権(この中にさまざまな種類の権利(支分権)があります)の他に、著作隣接権や商標権、商品化権、パブリシティ権などを基本として「ライセシング(利用許諾)」が行われ、ときには、これらの権利自体が「譲渡」(無償譲渡や売買)されることもあります。つまり、コンテンツビジネスの円滑な遂行はもちろん、当該ビジネス自体の成否も、このような「権利処理」の出来不出来にかかっていると言っても過言ではありません。コンテンツ自体がどんなに素晴らしいものでも、その事業展開における権利処理がまずかったためビジネスとしては頓挫してしまった例が非常に多く見られます。

コンテンツの製作(制作)とその事業展開には、さまざまなプレーヤーが関与します。そのプレーヤーの種類や関与の程度は、コンテンツの内容により、また、事業展開の具体的な中身により、ケースバイケースですが、特に映画やアニメの製作には多数の関係者(プレーヤー)が登場します。原作者に脚本家、プロデューサーに監督、美術やカメラ等のスタッフ陣、出演者(実演家)主役からエキストラまで、主題曲やBGMの作曲者・作詞者・レコード製作者・演奏家、さらには、コンテンツ完成に至る過程でさまざまな作業を担う下請に孫請、フリーの個人スタッフなど、挙げていけば切りがありません。このような、その立場やかかわり方の程度もさまざまな者と、それぞれその間に生じる権利関係を契約上適切に処理できているかが、当該ビジネス全体の成否を左右することになるのです。

コンテンツの製作(制作)過程からその事業展開において、その時々のビジネスシーンを把握した上で、「どの段階でいかなる権利が誰に発生し帰属するのか」を正確に見極め、当該コンテンツの将来における事業展開(利用態様)を考慮した上で、権利処理を適切に行う(関係する権利者から利用の許諾を得たり、場合によっては当該権利自体の譲渡を受けたり、権利行使をしない旨等の契約を、理想的にはすべて書面で事前に取り交わす)ことが、決定的に重要な作業となります。コンテンツビジネスにおいては、「権利処理」こそ、完成したコンテンツを安全かつ円滑に、マルチ(多方面)に利用・展開し、収益の最大化を図っていく上で最も重要な作業なのです。

コンテンツビジネスを成功に導くための「秘訣」は何か

優れたコンテンツが「売れるコンテンツ」とは限りません。「コンテンツは水もの」ともよく言われるところです。確実に売れる(儲かる)コンテンツとは何か、また、コンテンツで確実に儲ける手段はあるか、これらは、非常に難しい質問です。しかし、コンテンツビジネスを成功に導くための「秘訣」は何か、尋ねられれば、私は、「それは、無用な失敗をしないことだ」と答えます。それでは、「無用な失敗」とは何か。それは、「避けることができたはずのリスクにやられること」です。事前にひと手間かけておけば回避できたのに、その「ひと手間」を惜しんだばかりに、後にリスクが顕在化して、ビジネス全体が頓挫してしまう…とりわけコンテンツビジネスでは、こんなことは日常茶飯事です。コンテンツ自体が粗悪過ぎて放っておいてもコケるようなビジネスはさておき、コンテンツ自体はなかなか優れたもので、その展開次第では「売れる(儲かる)」可能性があったにもかかわらず、「リスク回避のひと手間」を惜しんで、これを事前に十分に検討しなかったために、(それをしなかった当事者にとっては)予想外の段階で予想外のところから「クレーム」が入り、もめることになります。この「クレーム」=「リスク」は、コンテンツビジネスの場合、そのほとんどがある種の「権利主張」だと思って差し支えありません。なぜなら、コンテンツビジネスは「権利ビジネス」であり、その「クリアランス」(権利処理)がリスク管理の主要な位置を占めているからです。法廷闘争にでもなれば最悪の事態です。円滑なビジネスの遂行という観点から言えば、「裁判沙汰」になることは、たとえそこで最終的に勝訴判決を得たとしても、何もいいことはありません。そこにつぎ込まなければいけない費用、時間、労力を想像してみてください。この意味が容易にわかるでしょう。

避けられるリスクは極力事前に排除しておくこれこそが、コンテンツビジネスにおいて「無用な失敗」をしないための極意なのです。




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