Q&A(著作物性)

今までにない独創的なレシピ(料理法)を考案したのですが、これは著作権法によって保護されますか?

レシピ、すなわちアイディアとしての「料理法」そのものは、著作権法によっては保護されません。
わが国の著作権法で保護される「著作物」は、何らかの表現形式(文字・記号・音・色など)を用いて外部に具体的に表現されたものでなければならなりません(法
2条1項1号)。つまり、著作権法は「表現」を保護する法律なのです。したがって、アイディアそのものは、それがいかに独創的であっても、「著作物」には該当せず、よって、著作権法によっては保護されないことになります。もっとも、そのレシピ(料理法)を文章として(又は写真・イラストなどとともに)「解説書」や「レシピ集」という形で「表現」すれば、その「解説書」や「レシピ集」などの表現物は、それが他の著作物性(単に材料を羅列したに過ぎないような表現では、著作物性を否定されるでしょう。)を満たすものであれば「著作物」に該当し、著作権法によって保護されることになります。
以上と同様なことは、「新しいゲームのルール」や「新しい教育メソッド」などにおいても当てはまります。ルールやメソッド、理論、ノウハウといったものは、それ自体では保護対象となりません。これらが「解説書」等といった形で外部に「表現」されている限りにおいて保護されることになります(この場合でも、その表現の背後にあるルールやメソッド、理論、ノウハウそのものを保護するわけではありません。あくまでそれらを「表現したもの」を保護するにとどまります。)。
産業の発達を目的とする特許法等の工業所有権(産業財産権)の分野では、新規性・進歩性といった要件を備えた「アイディア(技術的思想)」を保護します。ここでは、「アイディア」に同一性がある限り、その「アイディア」を用いて外部に表現されたモノが異なっていても、当該アイディアの発明者・発案者の権利が及びます。一方、著作権法の分野では、かりに同一のアイディアが利用されていても、「その表現」において異なるところがあれば、原則として(翻案等に該当する場合を除いて)、両表現物の著作者の権利は抵触しないことになります。
繰り返しになりますが、「表現を保護し、アイディアを保護しない」というのが、著作権法の大原則なのです。

他人の撮った写真の構図をまねることは、著作権の侵害になりますか?

著作権の侵害には当たらないと考えます。
他人の撮った写真の「構図」をまねることは、当該写真を「複製」(法
21条2条1項15号)することには当たらず(当該写真そのものを印刷したり、複写する場合等が典型的な「複製」に該当します。)、また、一般的に、「変形」ないし「翻案」(法27条、2条1項11号)に該当するとも言い難いからです。
(注)例えば、ある写真を絵画にしたような場合、その絵画は、当該写真の「変形」ないし「翻案」と評価される場合が考えられ、その場合には、当該行為(写真の絵画化)に写真の著作者の権利(二次的著作物の創作権)が及ぶことになります。
著作権法は、具体的な表現物そのもの(本件であれば「写真」そのもの)を保護する法律です。その背後にあるアイディアや理論、表現手法といったもの(写真の「構図」はこれらに該当するものと解されます。)は、そもそも「著作物」に該当せず、著作権による保護もありません。したがって、他人の撮った写真の構図をまねることは、一般的に言って、当該写真の著作権を侵害することには当たらないと解されます。以上と同様のことは、絵画の「構図」や「作風」、書などの「画風」といったものにも当てはまります。

ノンフィクション作家をしております。現在ある実在した人物の一代記を執筆しております。この人物についてはこれまで数人の作家や研究者による関連本が発行されております。私は、この人物について一般的に知られている事実をベースにしながらも、先人たちとは違ったアプローチでの構想を練っているところです。そこで質問です。歴史的な事実をもとにある歴史的な解釈(見解)を採用する場合、その「歴史的な解釈(見解)」は著作物をして保護されるものでしょうか。

「歴史的な解釈(見解)」そのものは「思想」であり、「思想」そのものは「著作物」として保護されることはありません。
著作権法による保護の対象となる「著作物」は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」でなければなりません(法2条1項1号)。したがって、「思想」や「感情」そのもの(両者を合わせて「アイディア」とします。)は「著作物」ではありません。「著作物」は、あくまでも、アイディアを「表現したもの」でなければならないのです(したがって、また、「事実」をそのまま記述(表現)したものも「著作物」ではありません、つまり、「歴史的な事実」のそのままの表現にも著作物性は認められません。)。
客観的な事実をもとに何かを表現する場合でも、通常、その表現の仕方にはさまざまなバリエーションのものがあり得ます。つまり、「歴史的な事実をもとにある歴史的な解釈(見解)を採用する」場合、その「歴史的な解釈(見解)」そのものには、上述のように、著作物性を認めることはできませんが、かかる「歴史的な解釈(見解)」を、その依拠する「歴史的な事実」との関係で、具体的にどのように「表現」するかには多様性があり(例えば、収集した事実の取捨選択、選択した事実の配列や組合せ、具体的な用語の選択やその言い回し、文章技法、解釈に至る展開など)、表現上の創意工夫の発揮される余地があります。そのため、あなたのおっしゃる「先人たちとは違ったアプローチでの構想」が具体的に「表現」されていれば、それはまさに、あなたの「アイディアを表現したもの」であり、著作権法の予定する「著作物」として保護されることになります。
なお、「著作物」であるためには、その「表現したもの」がさらに「創作的」なものでなければなりませんが、この創作性の要件については、厳密な意味で、独創性や新規性が発揮されていることまでは要求されません。筆者であるあなたの何らかの個性(個々の歴史的事実に対する評価や当該人物に対する称賛や批判など)が発揮されていれば足りるものと考えられます。

わいせつなビデオやDVDも著作権によって保護されるのですか?

その「わいせつなビデオやDVD」の中の一連の映像が著作権法上の「著作物」(2条1項1号)に該当すれば、著作権によって保護されます。
著作権法上、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(法2条1項1号)。ここで、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」というのは、知的・文化的精神活動の所産全般をさすと広く捉えるのが通説です。そして、この著作物の定義規定(著作物性)には、「倫理性」や「道徳性」といった「モラル」の基準は含まれていません。したがって、ビデオやDVDに固定(録画)された「わいせつな」映像であっても、それが作者の「思想又は感情を創作的に表現したもの」であれば、著作権法上「映画の著作物」(同法2条3項参照)として保護されることになります。
なお、刑法175条(わいせつ物頒布等)は、「わいせつな文書、図画…その他の物」の頒布等をした者を処罰する旨規定しています。しかし、何をもって「わいせつ」と捉えるかは、それだけで非常に難解な刑法上の論点です。著作権法にいう「著作物」又はその複製物が同時に刑法175条の「わいせつな文書、図画…その他の物」に該当する場合はあると思います。しかし、刑法によってその頒布等が禁止される場合であっても、そのことのみによって著作権法による保護が排除されることにはならないと考えます。公法的な規制の問題と私権の保護の問題とは一応分けて考えるべきだと思います。



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