二次的著作物(条文解説)

≪二次的著作物は、4つに大別されます

著作権法上、「二次的著作物」とは、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」をいうとされています(法2条1項11号)。
つまり、「二次的著作物」というのは、ある著作物を「翻訳」し、「編曲」し、若しくは「変形」し、又は脚色し、映画化し、その他「翻案」することにより創作される著作物をことです。要は、もとになる著作物(これを「原著作物」と呼んでいます。)があって、これに一定の創作的な手(表現)が加えられて作られるもの(著作物)が「二次的著作物」となるわけです。そして、その創作的な手(表現)の加え方によって、「二次的著作物」は、「翻訳著作物」・「編曲著作物」・「変形著作物」及び「翻案著作物」の4つに大別されます。
二次的著作物にかかる著作権が有効に発生するためには当該二次的著作物が「適法に創作されたこと」(いわゆる適法要件)は要求されていません。したがって、二次的著作物の創作過程に違法性があっても、当該二次的著作物にかかる著作権及び著作者人格権は有効に成立し得ることになります。

翻訳著作物

「翻訳著作物」とは、言語の著作物を他の言語で表現し直し、新たな創作性を加えることによって創作される著作物をいいます。例えば、日本語の小説を英語に翻訳したものがこれに当たります。
翻訳には、原典に対する正確な理解と、他の言語に表現し直す際の当該言語の精通力等が要求されるため、翻訳者が、原典(原著作物)の内容・雰囲気を壊さないよう、自己の学識等を用いて適切な訳語を選び出し他の言語に移し変える行為は、精神的創作作業であるといえます。そのため、同一の原典(原著作物)について複数の者がそれぞれ独立して翻訳を行うときは、それらの者の数だけ当該原著作物に関する二次的著作物が存在することになります。

編曲著作物

「編曲著作物」とは、音楽の著作物である楽曲をアレンジして、新たな創作性を加えることによって創作される著作物をいいます。例えば、クラシック曲をジャズ調にアレンジしたもの、古典音楽を現代風にアレンジしたものなどがこれに当たります。もっとも、例えば原曲を単に1オクターブ上げ下げしただけの改作では、「編曲著作物」に当たらない(「新たな創作性」が加えられていない)と解されます。

変形著作物

「変形著作物」とは、主に、美術の著作物を他の表現形式に変更して、新たな創作性を加えることによって創作される著作物をいいます。例えば、彫刻を絵画にしたもの、絵画を彫刻にしたもの、写真を絵画にしたもの、平面地図から作られた地形の模型などがこれに当たります。

翻案著作物

「翻案著作物」とは、原著作物に依拠しつつ、そこに表現される主題やストーリー性などの基本的内容・本質的な特徴を受け継ぎながら、新たな創作性を加えて作られる著作物をいいます。「脚色」されたもの、「映画化」されたものも、「翻案著作物」です。例えば、小説やマンガを脚色したもの、脚本を映画化したもの、小説をマンガにしたもの、マンガを小説にしたもの、外国の小説や映画を日本を舞台にしてリメイクしたもの、大人向けの小説を児童向けに書き改めたもの、学術論文等の長い文章を要約したもの(ダイジェスト版)、古典を現代語訳したもの、方言を標準語に変えたもの、速記文や暗号文を解読したものなどは、一般的に、この「翻案著作物」に該当すると考えられます。
最高裁は、「言語の著作物の翻案」について、これを、「既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」と判示しました。この最高裁の判例では、「言語の著作物の翻案」として判示していますが、既存の著作物への「依拠性」と本質的特徴の「直接感得性」という最高裁の示した要件は、「言語の著作物」以外の著作物にも妥当するものと解されており、さらに、「翻案」だけでなく、「翻訳」・「編曲」・「変形」にも当てはめて考えるようになってきています。非常に重要な判例です。
既存の著作物に依拠した場合であっても、そこから単に創作のインスピレーションやヒント、アイディアを得たのみで、当該既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができないようなやり方で新たな創作的表現がなされたときには、その新たに創作された著作物は、もはや「二次的著作物」とは言えず、当該既存の著作物とは別個独立した独自の著作物と評価されることになります。

≪法11条について≫

著作権法11条は、「二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」と規定しています。
本条は、翻訳著作物、翻案著作物等の二次的著作物に対する保護は、その原著作物に対する保護とは、それぞれ別個のものであることを注意的に規定したものです。
二次的著作物は、原著作物に依拠しているとはいえ、そこに新たな創作性を付加して作られるもので、原著作物とは別個の著作物ですから、原著作物とは区別して独立して保護されます。例えば、二次的著作物と原著作物の保護期間は、それぞれ別個に計算され、二次的著作物の保護期間が原著作物の存続期間(の残存期間)に従属することはありません。
もっとも、二次的著作物の著作権者であっても、原著作物の著作権者の許諾なく当該二次的著作物を利用することは許されないと解されます。原著作物の著作権者は、二次的著作物の利用に関して、当該二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を有することになるためです(法28条)。同様の理由から、二次的著作物の利用を欲する者は、当該二次的著作物の著作権者のみならず、その原著作物の著作権者の許諾をも得ておく必要があります。なお、原著作物の著作権者は、二次的著作物の著作権者の許諾なく当該原著作物を利用することができますが、原著作物の著作権者が、二次的著作物の著作権者の許諾なく「当該二次的著作物」を利用することができるかについては、否定的に(原著作物の著作権者であっても、当然には当該二次的著作物を自由に利用することはできない、と)解されます。
二次的著作物を巡る権利関係及び利用関係は、ときとして、非常に複雑なものになります。そのため、他人の原著作物を利用して二次的著作物を創作し、さらにそれを利用しようとする場合には、当事者間で事前にしっかりとした話し合いをして、約束事項を書面にしておくことが賢明であると言えます。



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