著作者(条文解説)

著作権法において、「著作者」とは、「著作物を創作する者」と定義されています(法2条1項2号)。
当たり前のような規定ですが、実務上はしばしば「著作者は誰か」で問題となる場合があります。つまり、ある著作物の創作過程に複数の者が関与した場合に、これらの者の中で誰が(又は誰と誰が)「著作者」になるか、ということが、裁判上もしばしば争われる問題なのです。

著作権法上、現実に当該著作物の創作活動に主体的に携わった者が「著作者」となるのであって、作成に当たり単にアイデアや素材を提供しただけの者、補助的な役割を果たしたにすぎない者など、その関与の程度、態様からして当該著作物につき自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価できない者は、「著作者」に当たりません。
裁判例においても、著作物の創作的な表現と認められるところを作成した者は誰か(逆に言うと、著作物の創作的な表現とは認められないところに関与したに過ぎない者は著作者ではない)という基準で「著作者」を認定しているようです。若干の具体例で見てみると、創作に動因を与えたに過ぎない者(例えば、創作の企画を発案した者、小説家等にヒントやテーマを与えた者など)は、通常、「著作者」に当たりません。著作物の創作を他者に委託した場合の委託者(例えば、絵画やイラスト・写真等の制作を依頼した注文主など)は、その者が創作費用を負担したか否かにかかわらず、「著作者」に当たりません。また、著作物の創作に際し補助的な作業に従事したに過ぎない者も「著作者」ではありません。
「著作者は誰か」という問題に対しては、一応、以上のように考えて差し支えないと思います。

≪著作者の推定≫

著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する、という規定があります(法14条)。つまり、著作物の原作品に、又はその複製物の公衆への提供・提示の際に、「実名」(氏名・名称)又は「周知の変名」(よく知られている雅号・ペンネーム・略称・芸名など)が著作者名として通常の方法により表示されている場合には、その者は、その著作物の著作者と「推定」されます。「著作者」の認否をめぐって具体的紛争が生じた場合、創作者自身、自分が真の著作者である旨を立証することはなかなか困難な場合もあります。本規定によって、著作物の原作品又はその複製物に一定の要件の下に著作者名が表示されている者は、当該著作物を実際に創作したことを自ら立証しなくても、相手方からの反証がない限り、当該著作物の著作者として扱われることになります。著作者の利益のために立証責任の転換を図った規定です。
なお、「推定」の効果としては、立証責任の軽減の他に、著作権侵害訴訟等民事上の争訟において当事者適格の推定を受けること、著作権侵害罪等において、刑事上、告訴権者(法123条1項参照)として推定されることといった効果があります。

本条により著作者の「推定」を受けるには、次の3つの要件を備えた表示をしている必要があります。
① 著作者名が、著作物の原作品に表示されていること、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に表示されていること。
著作者名(実名又は周知の変名)の表示は、著作物の原作品に付しても、その複製物に付してもどちらでも良いのですが、後者の場合には、複製物の公衆への提供(販売やレンタルなど)の際か、公衆への提示(上演や演奏、放送など)の際に付していなければなりません。
② 著作者名として、その「実名」又はその「周知の変名」が表示されていること。
「実名」とは、著作者の「氏名又は名称」をいいます。「周知の変名」というのは、「雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるものとして周知のもの」をいいます。例えば、「横山大観」(雅号)、「司馬遼太郎」(筆名)、「正岡子規」(俳号)、「坂東玉三郎」(芸名)、「JETRO」(略称)など、「実名」(氏名又は名称)以外の呼称で、著作者本人を表示するために用いられるもののうち、それが著作者本人を示すものとして一般人によく知られたものをいいます。
③ 著作者名が通常の方法により表示されていること。
「通常の方法により」とは、一般的な社会慣行ないし取引慣行に従って、という程度の意味ですが、例えば、絵画における署名や落款、書籍の奥付、CDジャケットやレーベルへの記載、上演会での場内放送、演奏会のプログラムへの記載、放送でのテロップなどによる方法が通常これに該当すると思われます。

無名」(一切実名を明かさない)又は「変名」(周知かどうかを問わない)で公表された著作物の著作者は、その著作物について「実名の登録」という文化庁への登録制度を利用することができるのですが(法75条1項)、この「実名の登録」がされている者は、上述①~③の要件を満たさなくても、当該登録に係る著作物の著作者と「推定」されます(法75条3項)。したがって、「無名」又は「変名」での著作物の公表を考えていらっしゃる著作者の方は、著作者の推定(の効果)を受けるために、文化庁への「実名の登録」を検討するのも一考です。



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