週刊誌「サンデー毎日」取材コメント

以下、毎日新聞東京本社出版局「サンデー毎日」編集部の取材に対して私(金田)がしたコメントです(なお、本コメントの一部が週刊誌「サンデー毎日」2008年5月18日号)記事NHKが落語音源無断使用の玉置宏に払った120万円―中に掲載されています):

以下、取材の件についてコメントいたします。

何が問題か。
今回のケースでは、まず、問題となった古典落語(「大仏餅」)を口演した八代目林家正蔵さんが、著作権法上、「実演家」として、「著作隣接権」によって保護されます。一方、この落語を収録放送したTBSさんは、「放送事業者」として、又は当時の収録状況によっては「レコード製作者」として(注1)、いずれにしても、やはり「著作隣接権者」として、著作権法上一定の保護を受けることになります(注2)(注3)。

(注1)当時の収録状況がわかりませんが、当時鈴本演芸場で行われたこの「大仏餅」を「最初に」収録(録音)した者がTBSさんであれば、TBSさんは、著作権法上は「レコード製作者」にも該当することになります(著作権法2条1項6号参照)。
(注2)今回の件を伝えているさまざまな記事でそのほとんどが「著作権処理」としていますが、今回のケースでは、法律的に正確な言い方をしますと「著作隣接権」の処理が問題となっています。今回のケースで「著作権」が問題になるとすれば、それは落語「大仏餅」そのものについてであり、この作家さん、つまりこれを創作した者が「著作者」すなわち原則として「著作権者」になります。この点、私が落語に詳しくないため不明な点もありますが、「大仏餅」がいつ・誰に創作されたか等によっては、この「著作権」自体がすでに消滅している可能性もありますので、その場合には、著作権の侵害は問題となりません。
(注3)著作隣接権は、実演に関しては「その実演を行った時」(今回のケースですと1974年)、放送に関しては「その放送を行った時」、レコードについては「その音を最初に固定した時」に始まり、この実演日・放送日・レコード発行日の属する年の翌年から50年間、権利が存続します(著作権法101条)。

今回、玉置さんが個人的にTBSラジオから収録(録音)した音源をNHKさんが放送したことが問題となっているわけですが、なぜ、この行為が問題となるのか。
TBSラジオで放送された実演を録音する行為」は、まず、実演家が専有する「録音権」(著作権法91条1項)と抵触し、さらに、「放送事業者」(又は「レコード製作者」)が専有する「複製権」(98条・96条)に抵触します。ただ、ご存知のように、「私的使用」といって「個人的に使用する」ことを目的とした複製・録音(著作権法30条1項、同102条1項)であれば、権利者の許諾なしに原則として自由に(適法に)行うことができます(つまり、複製権・録音権を侵害することにはなりません)。従って、玉置さんが今回問題になっている録音物(複製物)を自宅で個人的に楽しむだけであれば何の問題もないのですが、今回、玉置さんはその録音物(複製物)をNHKさんに「持ち込み、そして放送」してしまいました。この行為は、少々難しいのですが、法律上「録音物(複製物)の目的外使用」(著作権法102条7項【現9項】1号)に該当してしまうため、問題となるのです。「目的外使用」とは、要するに、当初は「私的使用」の目的で適法に録音(複製)したものであっても、後にその録音物(複製物)を「頒布」(有償無償を問わず、公衆に譲渡・貸与する行為のことをいいます。)したり、「公衆に提示」(主として録音物を再生して公衆に視聴させる行為のことです。)したりしますと-玉置さんの今回の一連の行為、つまり音源(録音物)のNHKへの持ち込み・ご自身が司会を務めていた番組での放送が、主としてこの公衆への提示行為に該当すると評価されても仕方ありません-、その時点で91条等の「録音」・「複製」を行ったものと法律上評価され、この「録音」・「複製」が権利者の許諾を得ていないものであれば、違法と判断され、当該目的外使用の時点(今回のケースですと放送の時点)から無断録音・無断複製があったものと扱われます。
従って、玉置さんの当該録音(複製)行為が八代目林家正蔵さん及びTBSさんからの許諾の下で行われたものでない以上、今回の玉置さんの行為は、上述しました目的外使用に該当し、かつ、「録音権」・「複製権」を侵害する行為となり得ます。従って、玉置さんのこの違法行為に対して、権利者(八代目林家正蔵さんの著作隣接権を承継した者及びTBSサイド)は、法的責任を追及することも可能になります。

それでは、NHKさんの放送行為はどうなるか。
実演家は自己の「実演を放送する権利」(放送権)を専有しています(92条1項)。ただ、「実演家から許諾を得て適法に録音されている実演」を放送する場合には、実演家のこの放送権は及ばないことになっています(92条2項2号イ)。今回のケースでは、玉置さんがNHKに持ち込んだ音源(録音物)が「実演家から許諾を得て適法に録音された」ものではない以上、今回のNHKさんの放送行為は八代目林家正蔵さんの放送権を侵害することになります。従って、NHKさんのこの無断放送行為に対しては、権利者(八代目林家正蔵さんの著作隣接権を承継した者)は、その法的責任を追及することが可能になります。

以上、所定の著作隣接権の侵害が認められますと、一定要件の下で、民事上は損害賠償責任(民法709条)等が発生し、刑事上は著作隣接権侵害罪(著作権法119条1項)が適用される可能性があります。
                                           以上



     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


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