法30条の2の自由利用(条文解説)

≪平成24年法改正~一般的・包括的権利制限規定の導入~≫

デジタル・ネットワーク化の進展に伴い、著作物の利用行為が飛躍的に多様化している昨今の情勢に鑑み、形式的には違法となる著作物の一定の利用行為につき、当該利用の委縮を解消し、著作物の利用の円滑化を図るため、平成24年の法改正により、著作権者の許諾がなくても著作物を自由に利用できる場合を、著作権者の利益を不当に害しない範囲で、ある程度包括的に定めた規定を置くことにより整備しました。
従来より、わが国においては、「著作権の制限規定」として、著作権者の許諾がなくても自由に著作物を利用できる場合を、公益性確保の観点等から所定の目的(報道目的、教育目的、障害者福祉目的、試験目的等)ごとに個別具体的に規定しています。今回の改正により、これら従来型の「個別具体的な制限規定」に加え、いわゆる「権利制限の一般規定」(フェア・ユース=fair use に関するアメリカ連邦著作権法107条のような規定)を念頭に置いた、ある程度包括的な規定を整備することとしました。具体的には、次の4つの規定です
① 付随対象著作物の利用(30条の2)
② 許諾を得るための検討等の過程に必要と認められる利用(30条の3)
③ 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(30条の4)
④ 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用(47条の9)
以上はいずれも、著作権者の利益を不当に害しないような著作物の利用であっても形式的には違法(著作権の侵害)となるものについて、著作権の侵害とならないことを明確にするために、利用目的や要件を一定程度包括的に定めた規定振りとなっています。

≪法30の2・第1項≫

写真の撮影の方法によって著作物を創作するに当たって、当該著作物に係る写真の撮影の対象とする事物から分離することが困難であるため付随して対象となる事物に係る他の著作物(これを「付随対象著作物」といいます。)は、当該創作に伴って複製又は翻案することができます(1項本文)。例えば、写真を撮影したところ、本来意図した撮影対象だけでなく、背景に小さく絵画が写り込む場合(いわゆる「写り込み」)などを想定したものです。
また、録音又は録画の方法によって著作物を創作するに当たって、当該著作物に係る録音又は録画の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(これを「付随対象著作物」といいます。)は、当該創作に伴って複製又は翻案することができます(1項本文)。例えば、街角の風景をビデオ収録したところ、本来意図した収録対象だけではなく、看板やポスター等に描かれている絵画や流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合などを想定したものです。

ここで、「分離することが困難である」とは、ある著作物(写真等著作物)を創作する際に、創作時の状況に照らして、付随して対象となった他の著作物(付随対象著作物)を除いて創作することが社会通念上困難であると客観的に認められることをいうものと解されます。
さらに、「付随対象著作物」は「当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る」とされています(第1項かっこ書)。ある著作物が当該写真等著作物の中で「軽微な構成部分」であるか否かは、結局のところ、当該著作物の種類等に照らし、個別具体的な事案に応じて判断されるものであり、予め定量的な割合が決まっているものではないと解されます。

30の2・第2

上述のようにして複製又は翻案された付随対象著作物は、写真等著作物の利用に伴って利用することができます(2項本文)。前述の例で言えば、絵画が背景に小さく写り込んだ写真をブログに掲載することや、看板やポスター等に描かれている絵画や流れていた音楽が録り込まれた映像を放送やインターネット送信することなどを想定したものです。
もっとも、次のような著作物の利用行為には、著作権者の許諾が必要になるものと解されます(本条の規定は適用されない):
本来の撮影対象として、あるポスターや絵画を撮影した写真をブログに掲載する場合
テレビドラマのセットとして、重要なシーンで視聴者に積極的に見せる意図をもって絵画を設置し、これをビデオ収録した映像を放送やインターネット送信する場合
漫画のキャラクターの顧客吸引力を利用する態様で、写真の本来の撮影対象に付随して漫画のキャラクターが写り込んでいる写真をステッカー等として販売する場合

2項は「利用することができる」と規定しているため、文理上、当該付随対象著作物の「利用」全般について著作権者の許諾を得ることなく行うことができると解されます。したがって、「写真等著作物の利用に伴って利用する」ものである限り、上記の利用例のように、自動公衆送信や放送による利用も可能になります(この他、上映や演奏、譲渡など全ての支分権に該当する行為が可能です)。
なお,付随対象著作物について、例えば、撮影後に画像処理等により当該付随対象著作物を消去することが可能な場合が考えられますが、このように、付随対象著作物を写真等著作物から分離することが技術的に可能であっても第2項は有効に適用されるものと解されます(2項では、文理上「分離することが困難であること」を要件としていません)。

≪例外≫

付随対象著作物の複製又は翻案の場合(第1項本文)及び複製又は翻案された付随対象著作物の利用の場合(2項本文)のいずれの場合でも、「当該付随対象著作物の種類及び用途」・「当該複製又は翻案の態様」ないし「当該利用の態様」に照らし、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、当該複製又は翻案ないし当該利用を行うことはできません(第1項但書、2項但書)。著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜在的販路を阻害するか、といった観点等から、最終的には司法の場で個別具体的に判断されることとなります。



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