編集著作物/データベースの著作物(条文解説)

≪編集著作物≫

編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護されます(法12条1項)。この規定は、編集著作物の概念を明らかにするとともに、そのような編集著作物も著作物として保護することを定めたものです。
「編集著作物」とは、編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものをいいます。例えば、新聞や雑誌、百科事典、美術全集、詩集、論文集、判例集、名曲集、英単語集、職業別電話帳、人名録などがこれに当たります。このような編集著作物は、その全体で一つの著作物として扱われます。
編集著作物を構成する「素材」は、著作物に限りません。非著作物(単なるデータや事実など)であっても構いませんし、すでに保護期間が経過して自由利用が可能になっている著作物でも構いません。既存の著作物と非著作物との混合であっても構いません。著作権の目的とならない著作物(法13条参照)であっても構いません。重要なのは、そのような素材の「選択又は配列」であり、素材が具体的にどのように創意工夫を凝らして「選択」され又は「配列」されているかということです。

「編集著作物」は、その素材の選択又は配列によって創作性を有すると認められる場合に、全体で1つの著作物として著作権法上保護されることになります。したがって、編集著作物に対する保護は、当該編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼすことはありません(法12条2項)。つまり、編集著作物に対する保護(編集著作物の著作者の権利)は、そこに収録されている個々の著作物の保護とは別個独立したものであり、法12条2項は、このことを確認的に規定しています(ベルヌ条約2条(5)参照)。本項は、既存の著作物を編集して編集物を完成させた場合に、素材の選択方法や配列方法に創作性が見られるときには、かかる編集を行った者に編集物を構成する個々の著作物の著作権者の権利とは独立して、当該編集著作物に対する保護を与えようとする趣旨のものである(編集著作物の保護は、そこに収録されている個々の著作物の保護とは別個独立したものである)ことを注意的に規定したものと解されます。そのため、例えば、編集著作物に対する著作権の保護期間は、その部分を構成する著作物の著作権の保護期間とは別個に計算されます。

ある編集著作物を(全体として)利用しようとする場合には、当該編集著作物の著作権者の許諾のみでは足りず、これを構成する個々の著作物の著作権者の許諾をも必要とします。逆に、編集著作物の著作者の権利が及ぶのは、あくまで編集著作物として利用された場合に限られ、当該編集物の部分を構成する著作物が個別に利用されるにすぎない場合には、当該編集著作物の著作者の権利はこれに及ばないと解されるため、編集著作物に収録されている個々の著作物の利用を欲する者は、その個々の著作物の著作者からの利用許諾を得れば足り、当該編集著作物の著作者からの利用許諾を得る必要はありません。

なお、旧法下では、編集著作物がその全体で保護されるためには、他人の著作物を「適法ニ」編集していなければなりませんでした(旧著作権法14条参照)。これに対し、現行法では、このような適法要件は設けられていないため、「素材」として選択等された個々の著作物の著作権者に無断で作成された編集著作物であっても著作権法による保護を受けることができます。もっとも、当該編集著作物の利用に当たっては、その無断で収録された他人(個々の著作物の著作権者)の許諾なしに行うことはできません(無断利用をすれば、当該他人の著作権を侵害することになります)ので、結局、他人の著作物を自己の編集著作物の「素材」として収録する場合には、事前に当該他人の許諾を得ておくことが賢明であるといえます。注意してください。

≪データベースの著作物≫

データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは、著作物として保護されます(法12条の2・1項)。この規定は、データベースの著作物の概念を明らかにするとともに、そのようなデータベースの著作物も著作物として保護することを定めたものです。ここで「データベース」とは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」をいいます(法2条1項10号の3)。つまり、「データベースの著作物」とは、端的に言うと、「編集著作物」(12条1項)のコンピュータ版のことです。

「データベースの著作物」は、編集著作物と同様に、その全体で一つの著作物として保護されますが、要点は、情報の「選択又は体系的な構成」、すなわち、コンピュータによって情報が容易に検索でき、蓄積された情報を効率的に利用するために、情報がどのように創意工夫を凝らして「選択」され又は「体系的に構成」されているかということです。なお、データベース著作物を構成する「情報」が著作物に限らないのは、編集著作物の場合と同様です。

データベースの著作物に対する保護は、その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有すると認められる場合に、全体で1つの著作物として、著作権法上の保護を付与する建前です。したがって、データベースの著作物の著作者の権利は、当該データベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼすことはありません。この点、法12条の2・2項は、データベースの著作物に対する保護は、当該データベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない、と明記し、このことを確認的に規定しています(TRIPS協定10条2、WIPO著作権条約5条参照)。このように、データベースの著作物に対する保護は、そこに収録されている個々の著作物(情報)の保護とは別個独立したものであると解されます。例えば、データベースの著作物の著作権の保護期間は、その部分を構成する著作物の著作権の保護期間とは別個に計算されます。また、データベースの著作物の全体利用については、当該データベースの著作物の著作権者の許諾のみでは足りず、これを構成する個々の著作物の著作権者の許諾をも必要とします。一方、データベースの著作物の著作者の権利が及ぶのは、あくまで当該データベースの著作物が全体(1つのまとまり)として利用された場合に限られるため、当該データベースの部分を構成する著作物が個別に利用されるにすぎない場合には、当該データベースの著作物の権利者から利用許諾を得る必要はなく、その個々の著作物の権利者からの利用許諾を得れば足りることになります。



     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他
      アメリカ著作権局登録マネジメント  著作権判例エッセンス