Q&A著作物の自由利用)

著作物を自由に利用できる場合があると聞きました。どのような場合ですか?

著作権法は、著作物を創作する著作者の権利を守ることを第一の目的としますが、同時に、社会(公衆)による著作物等の文化的所産の「公正な利用」をも確保しながら、究極的には、わが国の文化の発展に寄与することを目的としています(法
1条)。日本もその締約国であるWIPO著作権条約の前文には、「著作権による保護が、文学的及び美術的著作物の創作に対するインセンティブとして、特に重要であることを強調し」つつ、「ベルヌ条約で反映されているように、著作者の権利と、とりわけ教育、研究そして情報へのアクセスのような、広範な公共の利益との間の均衡を維持する必要性のあることを認めて」、同条約を締結したことが述べられています。
以上のように、著作者の権利と著作物の公正な利用(公共の利益)との「均衡(バランス)」を維持することは、いわば著作権制度の本質的な要請なのですが、わが国の著作権法においても、「著作者の権利」(第2章)の中に「著作権の制限」(第3節第5款)というカテゴリーをわざわざ設けて、一般公衆が著作者(著作権者)の許諾を得ずに自由にその著作物を利用できる場面について、次のようにかなり多くの規定を置いています
私的使用のための複製(法
30条)
付随対象著作物の利用(法30条の2)
検討の過程における利用(法30条の3)
技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(法30条の4)
図書館等における複製等(法31条)
引用(法32条)
教科用図書等への掲載(法33条)
教科用拡大図書等の作成のための複製等(法33条の2)
学校教育番組の放送等(法34条)
学校その他の教育機関における複製等(法35条)
試験問題としての複製等(法36条)
視覚障害者等のための複製等(法37条)
聴覚障害者等のための複製等(法37条の2)
営利を目的としない上演等(法38条)
時事問題に関する論説の転載等(法39条)
政治上の演説等の利用(法40条)
時事の事件の報道のための利用(法41条)
裁判手続等における複製(法42条)
行政機関情報公開法等による開示のための利用(法42条の2)
公文書管理法等による保存等のための利用(法42条の3)
国立国会図書館法によるインターネット資料の収集のための複製(法42条の4)
翻訳、翻案等による利用(法43条)
放送事業者等による一時的固定(法44条)
美術の著作物等の原作品の所有者による展示(法45条)
公開の美術の著作物等の利用(法46条)
美術の著作物等の展示に伴う複製(法47条)
美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(法47条の2)
プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(法47条の3)
保守、修理等のための一時的複製(法47条の4)
送信の障害の防止等のための複製(法47条の5)
送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等(法47条の6)
情報解析のための複製等(法47条の7)
電子計算機における著作物の利用に伴う複製(法47条の8)
情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用(法47条の9)
複製権の制限により作成された複製物の譲渡(法47条の10)
以上のように、われわれが著作物を自由に利用できる場面はかなりあるのですが、著作物の通常の(商業的な)利用行為と衝突するような、したがって、著作権者の正当な利益(特に経済的な利益)を不当に害するような「自由利用」というのは、そもそも一切認められていません。また、自由利用が認められる場面であっても、そのための要件が複雑であったり、自由利用に当たって著作権者に対する所定の「補償金の支払い」が条件とされていたり(例えば、法33条2項)、「出所の明示義務」(48条)が課せられていたり、「目的外使用」が禁止されたり(49条)と、自由利用の見返りにいろいろな制約もありますので、これらの要件や制約にも十分に注意してください。

【法30条関係】

私は家庭教師をしておりますが、生徒宅で授業をする場合、市販されている問題集の一部をコピーして使用することは自由にできますか?

自由に行うことはできないと考えます。
著作権法
30条1項では、著作物は、私的使用を目的として、その使用をする者が複製する場合には、原則としてそのような複製が自由に行える旨が規定されています。ここで、「私的使用」とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」をいい、「家庭内に準ずる限られた範囲内」といえるためには、著作権者の利益を不当に制限することのないよう一般的には厳格に解釈され、「お互いに個人的に強い結合関係があること」を要すると考えられています。そうしますと、「家庭教師と生徒の関係」が(確かに、人数的にはごく少数ですが)、この家庭内に準ずるような「強い個人的な結合関係」にあるとは一般的に言い難いのではないかと思います。
なお、市販されている受験用の問題集は一般的には「(編集)著作物」と考えて差し支えありませんが、その「一部(個々の問題)」が常に「著作物」に該当するわけではありません(例えば、小学校低学年程度の非常に簡単な加減乗除の計算問題など)。そもそも、「著作物」を複製するものでなければ、著作権法の規制は及びません。

著作権法が改正されて、違法なサイトからの音楽や映像のダウンロードも違法になったと聞きました。違法なサイトであることを知らずにダウンロードした場合、どうなるのですか?

おっしゃる通り、平成
21年の著作権法改正で、「違法なサイト(インターネット配信)からの音楽や映像のダウンロード」(法律的に正確に言うと、「
著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」)が、一定要件の下で、著作権(複製権)を侵害する行為と認定されるようになりました。
インターネットの普及拡大や情報処理の大容量化等を背景に、携帯電話向けの違法音楽配信サイトやファイル交換ソフト等によって違法に配信される音楽や映像作品を複製(ダウンロード)する行為が正規の配信市場を上回る膨大な規模になっていることが、今回の改正の大きな契機になっています。ただし、違法なサイトからのダウンロード(デジタル録音・録画)が無条件ですべて侵害行為と認定されるわけではありません。「その事実(そのサイトが著作権を侵害する違法なものであること)を知りながら」ダウンロードする場合に限って、複製権侵害と評価されることになります(法30条1項3号)。したがって、ダウンロードする側で、違法なサイトであることを知らなかったという事情があれば、著作権(複製権)侵害の責任に問われることはありません。一方、違法なサイトであることを認識した上であえてダウンロードを行えば、著作権(複製権)の侵害行為となりますので、当該行為に対して、著作権者は、差止請求や損害賠償請求など民事上の請求をすることが可能になります。
なお、刑事上の制裁に関しては、「知った」上でのダウンロードを行ったとしても、それが「私的使用」を目的として自ら行ったものであれば、著作権侵害罪として罰則(刑罰)を課されることはありません(法119条1項かっこ書参照)。もっとも、この点については、さらに平成24年の法改正により、「違法ダウンロードの刑事罰化」が明定されました。すなわち、「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者」には、所定の刑事罰が科せられることになりました(法119条3項)。

【法31条関係】

K市立図書館で窓口業務を担当しています。先日研修で、市立図書館の利用者が図書館資料の複製を希望する場合には、その「一部分」だけのコピーを提供できる(全部のコピー申請は認められない)と教わりました。著作権法には「編集著作物」という種類の著作物があるそうですが、例えば、いくつかの項目に分かれていて、それぞれの執筆者も異なる辞典についてその1項目の全部のコピー申請があった場合、このようなケースも「著作物の一部分」の複製に当たるのでしょうか。

「いくつかの項目に分かれていて、それぞれの執筆者が異なる辞典」のその1項目の全部の複製物を提供することはできません。
著作権法31条1項1号は、図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された「著作物の一部分」(定期刊行物についての例外があります。)の複製物を一人につき一部提供する場合には、図書館等における当該著作物の自由複製(コピー)を認めています。ここにいう「著作物」とは、全体が編集著作物に該当し、しかもその各項目が個別の著作物から構成されている(各項目ごとに著作者が明示されている)ようなものについては、それぞれの項目を一著作物単位と判断して、本規定を適用するのが妥当であると思われます。当該各項目の著作物には、編集著作権とは別の著作権が働いているためです(法12条2項参照)。お尋ねのケースはまさにそのような場合に該当すると思われますので、「(著作者名が判別できる)その1項目の全部」のコピー申請を受け付けることは妥当ではないと考えます。コピーを許容できるのは、(どんなに多くても)「その1項目」に係る著作物の概ね半分以下の部分ということになるでしょう。

【法32条関係】

自分の著作物の中に他人の著作物を引用する場合には自由にできると聞きましたが、本当でしょうか?

正確ではありません。常に「自分の著作物の中に他人の著作物を引用する場合には自由にできる」わけではありません。自由にすることが許される引用(以下、「適法引用」といいます。)であるためには、いくつかの条件があります。これらの条件をクリアした引用だけが、著作権者の許諾を得なくても自由にできる適法引用となります。
それでは、「適法引用」となるためには、どのような条件をクリアしなければならないのか。以下のすべての条件を満たした引用が「適法引用」となります(法32条1項参照)。
① 引用して利用しようとする著作物(他人の著作物)が、すでに公表されていること。したがって、まだ「公表」(法4条参照)されていない他人の著作物を勝手に引用することはできません。
② その引用が公正な慣行に合致するものであること。例えば、自説を展開するために自分の論文中に他人の論文の一部を引用する場合や、文芸作品の評論のなかで対象となる小説の一部や詩の全部を引用する場合などです。具体的な引用方法としては、引用する側の著作物(自己の著作物)と引用される側の著作物(他人の著作物)とが明瞭に区別して認識できる方法(例えば、引用された著作物であることが明瞭になるようカギ括弧で括って表示する等)を用いるこが一般的に要求されています。
③ その引用が、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること。正当な引用と認められるためには、引用する側の著作物(自己の著作物)と引用される側の著作物(他人の著作物)の間に、「前者が主、後者が従の関係」(主従関係)がなければならないとされています。どの程度ならこの「主従関係」があると言えるかは、結局のところ著作物の性質や引用の目的等に照らして個別具体的に判断するしかありませんが、引用される著作物が短歌や詩、絵画、写真などの場合には、その全部の引用も可能な場合があると思われます。
④ 上記①~③の要件を満たして「引用」が可能である場合でも、引用される側の著作物(他人の著作物)の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないと解されます(法50条参照)。他人の未公表著作物を無断で引用すると、上記の要件①に該当しないため、適法引用とはならず、結果として著作権(主として複製権)の侵害となりますが、そのような引用行為は、同時に、著作者人格権の1つである公表権(18条1項)を侵害する行為に該当する場合があります。また、引用の際の出所表示(48条1項1号・3号参照)とは別に、著作者名を明示しないで引用を行うと、氏名表示権(19条1項)を侵害すると評価される場合もあると解されますし、他人の著作物を翻訳(43条2号参照)以外の方法で「改変」して引用すれば、同一性保持権(20条1項)侵害の問題も生じます。

「禁転載」の表示がある著作物は引用することができないのですか?

著作権法32条1項の要件を満たす限り、「禁転載」や「無断転載を禁ずる」等の表示がある場合でも、「引用」することができます。
なお、国や地方公共団体の機関等が一般に周知させる目的で作成し、その著作の名義の下で公表する広報資料・調査統計資料・報告書などは、その「禁止する旨の表示がある場合」には、新聞・雑誌等の刊行物に「転載」することができませんが(法32条2項)、この場合でも、32条1項の要件(適法引用の要件)に従ったものであれば自由に「引用」することができます。

【法36条関係】

民間企業で人事を担当している者です。来年度より、弊社への入社を希望する学生に対し、専門の学術論文を載せた筆記試験を課すことにしたのですが、その際、問題の素材として掲載する予定の学術論文に関して、その論文の著作者(権利者)の方の承諾を得なければ、入社試験の問題としても掲載することができないものでしょうか、教えてください。

「入社試験の問題」としてであれば、原則として(その論文の
著作権者の利益を不当に害することになるような利用態様でない限り)、その論文の著作権者の許諾を得ることなく、掲載(複製)することが可能です。もっとも、その掲載する予定の学術論文がすでに「公表」されていることが前提条件となります。
著作権法36条1項は、公表された著作物については、原則として、「入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として」これを複製等することができると規定しています。民間企業が行う「入社(採用)試験」は、本条にいう「人の学識技能に関する試験」に当たると解されます。
ただ、本規定から明らかなように、本条の適用を受けて自由複製(掲載)が認められる著作物は、すでに「公表」(法4条参照)されたものでなければなりません。いまだ「公表」されていない論文を無断で掲載することは、「入社試験の問題」としてであっても許されません。「公表」の有無の確認をしてください。
なお、人の学識技能に関する試験への掲載(複製)で、しかも、自由複製が認められる場合であっても、「営利を目的として」を行う場合には、その者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者(設問では、掲載予定の論文の著作権者)に支払わなければならないとされています(法36条2項)。これは、いわゆる「業者テスト」(業者が受験料・検定料を徴収して行うテスト)を想定した規定です。民間企業が行う入社(採用)試験は、当該試験自体が「営利を目的として」いるとは言い難いため、これを行う者(その民間会社)が著作権者に「通常の使用料の額に相当する額の補償金」を支払う必要はないと解されます。

【法47条の2関係】

ネットオークションで著作物を販売する場合には自由に複製してもよい、と聞きました。大手の中古品販売業者から正規に入手した音楽CDや映画DVDをネットオークションで販売する場合も、これらを自由にアップロードしても構わないということですか?

そうではありません。
平成21年の著作権法改正で新たに設けられた著作権法47条の2に関するご質問のようですが、だいぶ誤解があるようです。
新設された著作権法47条の2によれば、確かに「ネットオークションで著作物を販売する場合」、一定の要件を満たせば、「自由に複製」できる場合があります。しかし、そこで認められている「自由な複製」(正確には「複製又は公衆送信」)は、あくまで、「一定の要件」を満たした場合にのみ許容されるものです。「ネットオークションで著作物を販売する場合」であれば常に「自由な複製」が認められているわけではありません。
ここでは、「正規に入手した音楽CDや映画DVDをネットで販売する場合」について、簡単に解説しておきます。
新設の著作権法47条の2は、典型的には、ネットオークションで美術作品や写真の取引(譲渡又は貸与)をする際に、その紹介用の画像を掲載することが取引上必要であることから、そのような画像掲載を所定の要件の下で認めようとする趣旨で規定されたものです。つまり、この規定が適用されるのは、「美術の著作物」又は「写真の著作物」に限られます。「音楽CD」は「音楽の著作物」であり、「映画DVD」は「映画の著作物」です(著作権法10条1項参照)。これらは「美術の著作物」でもなければ、「写真の著作物」でもありません。
したがって、「音楽CDや映画DVDをネットオークションで販売する場合」に「これらをアップロードする」ことは、そもそも法47条の2の想定外(適用外)ということになるのです。それ故に、正規に入手したものであっても、音楽CDや映画DVDをネットにアップロード(複製ないし公衆送信)するには、権利者の許諾が必要になります。



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