コンテンツビジネスと下請法(2)

≪下請法が適用される下請取引とは?

下請法を理解して、その知識を実務(日常のビジネス)の中で活かすためには、まず、本法の射程範囲(適用範囲)を画する重要概念である「製造委託等」の下請取引の意味、並びに「親事業者」及び「下請事業者」の用語の意味を把握することが欠かせません。ここでは、まず、下請法が適用される取引について解説します。
下請法の規制対象となる下請取引は、その委託される取引内容によって、「製造委託」・「修理委託」・「情報成果物作成委託」・「役務提供委託」の4つの委託取引に大別されており、その適用対象となる委託取引(下請取引)は製造業からサービス業まで多岐に渡っています。コンテンツビジネスに最も関わりが深いのは、「情報成果物作成委託」に関する取引ですが、事案によっては、製造委託その他の委託取引に係わる場合もあります。

[1] 製造委託

「製造委託」とは、次の4つの類型の取引をいいます(法2条1項)。
[1-a]
事業者が業として行う販売の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること。
【例】大規模小売業者(百貨店、スーパー、ホームセンター、専門量販店、ドラッグストア、コンビニエンスストア本部、通信販売業等)が、自社のプライベートブランド商品の製造を食品加工業者等に委託すること。
【例】出版社が、販売する書籍の印刷を印刷業者に委託すること。
(注)下請法で「業として」とは、事業者が、ある行為を反復継続的に行っており、社会通念上、事業の遂行とみることができる場合を指します(これは、後述する修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託においても同様です)。

[1-b]
事業者が業として請け負う製造の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること。
【例】繊維製品卸売業者が,製造を請け負う衣料品の製造を繊維製品製造業者に委託すること。

[1-c]
事業者が業として行う物品の修理に必要な部品又は原材料の製造を他の事業者に委託すること。
【例】家電製品製造業者が、消費者向けに家電製品の修理を行うために必要な部品の製造を部品製造業者に委託すること。

[1-d]
事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること。
【例】工作機器製造業者が、自社の工場で使用する工具を自社で製造している場合に、一部の工具の製造を他の工作機械製造業者に委託すること。

[2] 修理委託

「修理委託」とは、次の2つの類型の取引をいいます(法2条2項)。
[2-a]
事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。
【例】自動車ディーラーが、請け負う自動車修理を修理業者に委託すること。

[2-b]
事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること
【例】製造業者が、自社の工場で使用している工具の修理を自社で行っている場合に、その修理の一部を修理業者に委託すること。

[3] 情報成果物作成委託

「情報成果物作成委託」の対象となる「情報成果物」とは、次の①~③に掲げるものをいいます(法2条6項1号~3号)。
① プログラム電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたもの
【例】ゲームソフト、会計ソフト、家電製品の制御プログラム、顧客管理システム。
② 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
【例】テレビ番組、テレビCM、ラジオ番組、映画、アニメーション。
③ 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
【例】設計図、ポスターのデザイン、商品・容器のデザイン、コンサルティングレポート、雑誌広告。

「情報成果物作成委託」とは、次の3つの類型の取引をいいます(法2条3項)。
[3-a]
事業者が業として行う提供の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。
【例】ソフトウェア開発業者が、消費者に販売するゲームソフトのプログラムの作成を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
【例】ソフトウェア開発業者が、ユーザーに提供する汎用アプリケーションソフトの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
【例】放送事業者が、放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託すること。
【例】パッケージソフトウェア販売業者が、販売するソフトウェアの内容に係る企画書の作成を他のソフトウェア業者に委託すること。
【例】家電製品製造業者が、消費者に販売する家電製品に内蔵する制御プログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること。
【例】家電製品製造業者が、消費者に販売する家電製品の取扱説明書の内容の作成を他の事業者に委託すること。
(注)情報成果物の「提供」とは、事業者が、他者に対し情報成果物の販売、使用許諾を行うなどの方法により、当該情報成果物を他者の用に供することをいい、情報成果物それ自体を単独で提供する場合のほか、物品等の附属品(例えば、家電製品の取扱説明書の内容、CDのライナーノーツ)として提供する場合、制御プログラムとして物品に内蔵して提供する場合、商品の形態、容器、包装等に使用するデザインや商品の設計等を商品に化体して提供する場合等も含まれます。
(注)「業として行う提供」とは、反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であればこれに当たらないと解されます。

[3-b]
事業者が業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。
【例】広告会社が、広告主から制作を請け負うテレビCMを広告制作業者に委託すること。
【例】ソフトウェア開発業者が、ユーザーから開発を請け負うソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
【例】デザイン業者が、作成を請け負うポスターデザインの一部の作成を他のデザイン業者に委託すること。
【例】テレビ番組制作業者が、制作を請け負うテレビ番組のBGM等の音響データの制作を他の音響制作業者に委託すること。
【例】テレビ番組制作業者が、制作を請け負うテレビ番組に係る脚本の作成を脚本家に委託すること。
【例】アニメーション制作業者が、製作委員会から制作を請け負うアニメーションの原画の作成を個人のアニメーターに委託すること。
【例】建築設計業者が、施主から作成を請け負う建築設計図面の作成を他の建築設計業者に委託すること。
【例】建設業者が、施主から作成を請け負う建築設計図面の作成を建築設計業者に委託すること。
【例】工作機械製造業者が、ユーザーから製造を請け負う工作機械に内蔵するプログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること。

[3-c]
事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること。
【例】事務用ソフトウェア開発業者が、自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
【例】デザイン業者が、コンペ(試作競技)に参加するに当たり、デザインの作成を他のデザイン業者に委託すること。
(注)「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」とは、事業者が、自らの事業のために用いる情報成果物の作成を反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている場合をいい、例えば、(ア)事務用ソフトウェア開発業者が社内で使用する会計用ソフトを自ら作成する場合、(イ)ビデオ制作会社が自社の社員研修用のビデオを自ら作成する場合がこれに該当します。他方、社内にシステム部門があっても作成を委託しているソフトウェアと同種のソフトウェアを作成していない場合等、単に作成する能力が潜在的にあるにすぎない場合は作成を「業として」行っているとは認められないと解されます。

上記の類型に登場する「情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」とは、情報成果物の作成のうち、(ア)情報成果物それ自体の作成、又は(イ)当該情報成果物を構成することとなる情報成果物の作成を、他の事業者に委託することをいいます。
例えば、「ゲームソフト」の場合、そこに用いられる「プログラム」・「映像データ」・「BGM等の音響データ」・「シナリオ」・「キャラクターデザイン」などが「構成することとなる情報成果物」に該当します。また、「放送番組」であれば、「コーナー番組」・「番組のタイトルCG」・「BGM等の音響データ」・「脚本」・「オリジナルテーマ曲の楽譜」などが「構成することとなる情報成果物」に該当します。「アニメーション」の場合であれば、「セル画、背景美術等」・「BGM等の音響データ」・「脚本」・「絵コンテ」・「キャラクターデザイン」・「オリジナルテーマ曲の楽譜」などが「構成することとなる情報成果物」に該当します。

[4]  役務提供委託

「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいいます(法2条4項)
【例】広告会社が、広告主から請け負った商品の総合的な販売促進業務の一部の行為である商品の店頭配布をイベント会社に委託すること。
【例】ソフトウェアを販売する事業者が、当該ソフトウェアの顧客サポートサービスを他の事業者に委託すること。

コンテンツビジネスと下請法(3)に続く・・・




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