コンテンツビジネスと下請法(4)

親事業者には、11項目にわたる禁止行為が定められています≫

下請法の規制対象となる委託取引(下請取引)においては、「親事業者」には、次に掲げる11項目にわたる禁止行為(禁止事項)が定められています。たとえ下請事業者の了解を得ていても、また、親事業者に違法性の意識がなくてもこれらの規定(禁止事項)に触れるときには下請法に違反することになります。十分に注意してください。
なお、親事業者がこの11項目の所定の禁止行為を行っているか又は行った場合には、公正取引委員会から勧告措置を受けることになり(7条)、この勧告が行われた時点で、必要に応じて、その旨が公表されます。
それでは、親事業者に課せられる11項目の禁止事項を見ていきましょう。

[1] 受領拒否の禁止(法4条1項1号)

下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、親事業者が、下請事業者の給付(親事業者が発注した物品や作成物)の受領を拒むことです。

情報成果物作成委託における違反行為事例】
<製造計画の変更を理由とした受領拒否>
【例】親事業者は,下請事業者に対して設計図面の作成を委託していたが,自社製品の製造計画が変更になったとして当該設計図面を受領しなかった。
<仕様変更を理由とした受領拒否>
【例】親事業者は,下請事業者にシステムプログラムの開発等を委託していたが,仕様を変更したことを理由として,あらかじめ定めた納期に下請事業者が当初の仕様に従って開発したプログラムを受領しなかった。
<取引先等の都合を理由とした受領拒否>
【例】親事業者は,下請事業者に対してホームページの制作を委託していたが,発注元からの仕様の変更を理由に,下請事業者が当初の仕様に従って制作したホームページのデータを受領しなかった。
【例】親事業者は,下請事業者に対して広告の制作を委託していたが,広告主の意向により,テレビ放送を用いた広告を行うことを取りやめたため,既に下請事業者が制作したテレビCMのVTRテープを受領しなかった。
【例】親事業者が下請事業者に放送番組の制作を委託し,下請事業者は放送番組の作成を既に完了したところ,親事業者が指定した番組出演者に係る不祥事が発生したことを理由として当該番組を放送しないこととし,当該放送番組のVTRテープを受領しなかった。
<その他の受領拒否>
【例】親事業者は,継続的に放送されるアニメーションの原画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,視聴率の低下に伴い放送が打ち切られたことを理由に,下請事業者が作成した原画を受領しなかった。

[2] 下請代金の支払遅延の禁止(法4条1項2号)

親事業者が、その発注した物品等の受領日から60日以内で定められている支払期日の経過後なお下請代金を支払わないことです。

情報成果物作成委託における違反行為事例】
<放送日を支払起算日とする支払制度を採用したことによる支払遅延>
【例】親事業者は,放送番組の制作を下請事業者に委託し,放送日を起算日とする支払制度を採っているところ,放送が当初の予定日より遅れるなどして受領日と放送日が開くことにより,納入後60日を超えて下請代金を支払っていた。
【例】親事業者は,毎月1本ずつ放送される放送番組の作成を下請事業者に委託しているところ,下請事業者から数回分まとめて納入され,それを受領したにもかかわらず,放送された放送番組に対して下請代金の額を支払う制度を採用していたため,一部についての下請代金が納入後60日を超えて支払われていた。
<検査の遅れを理由とした支払遅延>
【例】親事業者は,下請事業者にプログラムの作成を委託し,検収後支払を行う制度を採用しているところ,納入されたプログラムの検査に3か月を要したため,下請代金が納入後60日を超えて支払われていた。
<事務処理の遅れを理由とした支払遅延>
【例】親事業者は,放送番組等の制作を下請事業者に委託しているところ,自社の事務処理が遅れたことを理由に,下請事業者の給付を受領しているにもかかわらず,あらかじめ定められた支払期日を超えて下請代金を支払っていた。
<取引先の都合を理由とした支払遅延>
【例】親事業者は,下請事業者に対してユーザー向けソフトウェアの開発を委託しているが,ユーザーからの入金が遅れていることを理由として,下請事業者に対して,あらかじめ定めた支払期日に下請代金を支払っていなかった。

[3] 下請代金の減額の禁止(法4条1項3号)

下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、親事業者が、発注時に決定した下請代金を発注後に減額することです。

情報成果物作成委託における違反行為事例】
<業績悪化を理由とした減額>
【例】親事業者は,オンラインゲームの開発に当たり,キャラクターデザインやBGMの制作を下請事業者に委託しているところ,業績の悪化により制作に係る予算が減少したことを理由に,下請代金の額を減じた。
<無理な仕様変更による納期遅れを理由とした減額>
【例】親事業者は,下請事業者に対してプログラムの作成を委託しているところ,作業の途中で当初指示した仕様を一方的に変更したため,下請事業者がこの変更に対応しようとして納期に間に合わなかったことから,納期遅れを理由として下請代金を減額した。
<合意なく振込手数料を負担させることによる減額>
【例】親事業者は,プログラムの作成等を下請事業者に委託しているところ,下請代金を下請事業者の銀行口座に振り込む際の手数料を下請事業者が負担する旨書面で合意していないにもかかわらず,下請代金の額から振込手数料相当額を差し引いた。
<実費を超える振込手数料を負担させることによる減額>
【例】親事業者は,船舶の設計図の作成を委託している下請事業者との間で,下請代金を下請事業者の銀行口座に振り込む際の手数料を下請事業者が負担する旨書面で合意していたが,自社が実際に支払う振込手数料を超える額を下請代金から差し引いた。
<取引先の都合を理由とした減額>
【例】親事業者は,機器管理ソフトウェアのプログラムの作成を下請事業者に委託しているところ,顧客から一部のプログラムをキャンセルされたことを理由に,そのキャンセルされたプログラムの対価に相当する額を下請代金から差し引いた。

役務提供委託における違反行為事例】
<予算不足を理由とした減額>
【例】新商品の総合的な販売促進業務を請け負った親事業者は,下請事業者に対してポスターに使用するデザインの作成を委託したが,親事業者が他の事業者に委託した他の販売促進にかかる経費に予定よりも多く出費したため,予算がないことを理由として下請代金を減額した。

[4] 返品の禁止(法4条1項4号)

下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、親事業者が、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることです。

【情報成果物作成委託における違反行為事例】
<事業計画の変更を理由とした返品>
【例】親事業者は,下請事業者から受領した放送番組について,毎週継続的に放送する予定であったが,視聴率が低下したことを理由として放送を打ち切り,納入された放送番組が記録されたVTRテープを下請事業者に引き取らせた。
<取引先の都合を理由とした返品>
【例】親事業者は,下請事業者に制作を委託した広告について,一旦受領したにもかかわらず,取引先からキャンセルされたことを理由として,下請事業者に引き取らせた。

【製造委託における違反行為事例】
<販売期間終了等を理由とした返品>
【例】親事業者は,自己のブランドを付した衣料品を下請事業者に作らせ納入させているところ,シーズン終了時点で売れ残った分を下請事業者に引き取らせた。 
【例】親事業者は,土産品等の製造を下請事業者に委託しているところ,売れ残った商品について賞味期限切れ等を理由に,下請事業者に引き取らせた。

[5] 買いたたきの禁止(法4条1項5号)

親事業者が、下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めることです。

情報成果物作成委託における違反行為事例】
<一律一定率の単価引下げによる買いたたき>
【例】親事業者は,自社の住宅販売部門が販売する住宅の設計図の作成を委託している下請事業者に対し,従来の単価から一律に一定率で単価を引き下げることにより,通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。
<納品後の下請代金の決定による買いたたき>
【例】親事業者は,自ら作成・販売するゲームソフトを構成するプログラムの作成を,下請事業者に対して下請代金の額を定めずに委託したところ,当該プログラムの受領後に,下請事業者と十分に協議をすることなく,通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた(下請代金の額が定められないことにつき正当な理由がある場合を除き,下請代金の額を定めないまま委託することは,
下請法3条に違反する)
<短納期発注による買いたたき>
【例】親事業者は,データベース用ソフトウェアの作成を委託している下請事業者に対し,見積りをさせた当初よりも納期を大幅に短縮したにもかかわらず,当初の見積単価により通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。
<その他の買いたたき>
【例】親事業者は,看板のデザインの制作を委託している下請事業者に対し,十分な協議をすることなく,過去に他の事業者に対し同様の業務を発注した際の価格を指定することにより,通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。
【例】親事業者は,制作を委託した放送番組について,下請事業者が有する著作権を親事業者に譲渡させることとしたが,その代金は下請代金に含まれているとして,下請事業者と著作権の対価にかかる十分な協議を行わず,通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。
【例】親事業者は,アニメーションの原画の作成を下請事業者である個人のアニメーターに委託しているところ,親事業者の要望を反映させることにより作成費用が当初の見積りよりも割高となることを理由に下請事業者から下請代金の引上げを求められたにもかかわらず,そのような費用増を考慮することなく,当初の見積価格により通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。

【製造委託における違反行為事例】
<大量発注を前提にした単価での少量の発注による買いたたき>
【例】親事業者は,単価の決定に当たって,下請事業者に1個,5個及び10個製作する場合の見積書を提出させた上,10個製作する場合の単価(この単価は1個製作する場合の通常の対価を大幅に下回るものであった)で1個発注した。

[6] 物の購入強制・役務の利用強制の禁止(法4条1項6号)

下請事業者に発注する物品の品質を維持するなどの正当な理由がないのに、親事業者が指定する物を強制して購入させたり、役務を強制して利用させることです。

情報成果物作成委託における違反行為事例】
<自社製品等の購入強制>
【例】親事業者は,機器管理プログラムの作成等を委託しているところ,下請事業者が必要としていないにもかかわらず,下請事業者に対し,委託内容とは関係のない自社製品である暗号化プログラムの購入を要請し,購入させた。
【例】広告会社である親事業者が,広告制作会社に年始の名刺広告への参加を要請したのに対して,名刺広告の効果を把握するために参加したが,効果が乏しく,翌年以降は参加しない旨を親事業者に伝えていたにもかかわらず,翌年から年末になると参加を前提として申込書を送付し,再三参加を要請することにより,当該名刺広告に参加することを余儀なくさせた。
<自社の関連会社の商品の購入強制>
【例】親事業者は,下請事業者に対して放送番組の作成を委託しているところ,自社の関連会社が制作した映画等のイベントチケットについて,あらかじめ下請事業者ごとに目標枚数を定めて割り振り,購入させた。

[7] 報復措置の禁止(法4条1項7号)

親事業者が一定の違反行為をしている場合等に下請事業者が公正取引委員会や中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることです。

[8] 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(法4条2項1号)

親事業者が有償で支給する原材料等で下請事業者が物品の製造等を行っている場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除したり、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせることです。

[9] 割引困難な手形の交付の禁止(法4条2項2号)

親事業者が下請代金を手形で支払う際に、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することです。

[10] 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(法4条2項3号)

親事業者が自己のために、下請事業者に金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることです。

【情報成果物作成委託における違反行為事例】
<協賛金の提供要請>
【例】鉄道業を営む親事業者は,自社の住宅販売部門が販売する住宅の設計図の作成を下請事業者に委託しているところ,広告宣伝のための費用を確保するため,下請事業者に対し,「協賛金」として,一定額を提供させた。
<労務の提供要請>
【例】親事業者は,ソフトウェアの作成を委託している下請事業者の従業員を親事業者の事業所に常駐させ,実際には当該下請事業者への発注とは無関係の事務を行わせた。
<委託内容にない情報成果物の提供要請>
【例】親事業者は,下請事業者にデザイン画の作成を委託し,下請事業者はCADシステムで作成したデザイン画を提出したが,後日,委託内容にないデザインの電磁的データについても,対価を支払わず,提出させた。
<知的財産権の無償譲渡の要請>
【例】親事業者は,テレビ番組の制作を委託している下請事業者との契約により,下請事業者に発生した番組の知的財産権を譲渡させていたところ,それに加えて,番組で使用しなかった映像素材の知的財産権を無償で譲渡させた。

【製造委託における違反行為事例】
<展示用商品の提供要請>
【例】親事業者は,インテリア製品の製造を下請事業者に委託しているところ,自社のショールームに展示するため,下請事業者に対し,展示用のインテリア製品を無償で提供させた。
<設計図等の無償譲渡要請>
【例】親事業者は,下請事業者に金型の製造を委託しているところ,外国で製造した方が金型の製造単価が安いことから,下請事業者が作成した金型の図面,加工データ等を外国の事業者に渡して,当該金型を製造させるため,下請事業者が作成した図面,加工データ等を対価を支払わず,提出させた。
【例】親事業者は,建設機械部品等の製造を委託している下請事業者に対し,委託内容にない金型設計図面等を無償で譲渡させた。

[11] 不当なやり直し等の禁止(法4条2項4号)

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、親事業者がよって生じる費用を負担することなく、下請事業者の給付の内容を変更させたり、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させることです。

情報成果物作成委託における違反行為事例】
<不明確な指示を原因としたやり直し>
【例】親事業者は,下請事業者に対してソフトウェアの開発を委託したが,仕様についてはユーザーを交えた打合せ会で決めることとしていたところ,決められた内容については書面で確認することをせず,下請事業者から確認を求められても明確な指示を行わなかったため,下請事業者は自分の判断に基づいて作業を行い納入をしようとしたところ,決められた仕様と異なるとして下請事業者に対して無償でやり直しを求めた。
<取引先の都合を理由とした発注内容の変更・やり直し>
【例】親事業者は,既に一定の仕様を示して下請事業者にソフトウェアの開発を委託していたが,最終ユーザーとの打ち合わせの結果仕様が変更されたとして途中で仕様を変更し,このため下請事業者が当初の指示に基づいて行っていた作業が無駄になったが,当初の仕様に基づいて行われた作業は納入されたソフトウェアとは関係がないとして当該作業に要した費用を負担しなかった。
【例】親事業者が,定期的に放送されるテレビCMの作成を下請事業者に委託したところ,完成品が納入された後,放映されたテレビCMを見た広告主の担当役員から修正するよう指示があったことを理由として,親事業者は,下請事業者に対して,いったん広告主の担当まで了解を得て納入されたテレビCMについて修正を行わせ,それに要した追加費用を負担しなかった。
<その他の発注内容の変更・やり直し>
【例】親事業者は,下請事業者に対してデザインの作成を委託したところ,親事業者の担当者が人事異動により交代し,新しい担当者の指示により委託内容が変更され追加の作業が発生したが,それに要した追加費用を親事業者が負担しなかった。
【例】親事業者は,テレビ番組の制作を委託していた下請事業者に対して,いったん親事業者のプロデューサーの審査を受けて受領された番組について,これの試写を見た親事業者の役員の意見により,下請事業者に撮り直しをさせたにもかかわらず,撮り直しに要した下請事業者の費用を負担しなかった。
【例】親事業者は,アニメーションの動画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,親事業者が内容確認の上,完成品を受領したにもかかわらず,プロデューサーの意向により動画の品質を引き上げるための作業を行わせ,それに伴い生じた追加の費用を負担しなかった。

【製造委託における違反行為事例】
<取引先の都合を理由とした発注内容の変更・取消し等>
【例】親事業者は,印刷・製本等を下請事業者に委託しているところ,顧客からの要請を理由に,当初の納期を変更せずに追加の作業を行わせ,それらに伴う人件費増加等が生じたにもかかわらず,そのために必要な費用を負担しなかった。





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