公表権(条文解説)

「著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。」―これは、著作者が享有する「公表権」を規定したものです(法18条1項)。「公表権」は「著作者人格権」の一つです(法17条1項)。

18条1項によって、未公表の著作物を公表するか否か等を決定する権利は、原作品やその複製物を直接的に提供・提示する場合であろうと、その二次的著作物を通して間接的に提供・提示する場合であろうと、そのいずれであるかを問わず、著作者が有することになります。そして、この「自己の未公表著作物を公衆に提供・提示する権利」が「公表権」と呼ばれるのは、「(著作物を)公衆に提供・提示する」行為は、著作権法上の「公表」(4条参照)と重なっているためです。そのような次第で「公表権」と名付けられています。

「公表権」とは、いわば、著作者に認められている、未公表著作物の公表に係わる決定権のことですが、具体的には、次の3つの内容を含むとされています
① 自己の未公表著作物を公衆に提供・提示するか否かを決定すること。
② 公衆に提供・提示するとしたならば、いかなる態様で公表するか(例えば、出版か、上演か、放送か等)を決定すること。
③ いつ・いかなる時期に公衆に提供・提示するかを決定すること。
したがって、著作者の同意を得ずに無断でその者の著作物を公表してしまう行為はもちろん、著作者による著作物の公表(公衆への提供・提示)を無権限で妨害する行為なども公表権の侵害となりうると解されます。もっとも、公表権をもって、著作者が第三者に対し自己の著作物を公衆に提供・提示することを積極的に請求する権限まで認めるものではないと解されます。

公表権の対象となる「未公表著作物」には「著作者の同意を得ないで公表された著作物」を含みます(1項かっこ書)。そのため、外見上は「公表」されていても、それが著作者の同意を得ずになされたものであれば、公表権との関係では「未公表」として扱われ、よって、そのような著作物をさらに著作者に無断で公衆に提供・提示する行為には、なお公表権が働きます。

原著作物が未公表である「未公表の二次的著作物」を公衆に提供・提示する場合には、当該二次的著作物の著作者の同意を取り付けることはもちろんですが、そのもとになっている原著作物の著作者の公表権も働きます(1項後段)。したがって、そのような二次的著作物を、その原著作物の著作者の同意を得ずに公表する行為は、当該原著作物の著作者の公表権を侵害することになります。

≪公表の同意の推定≫

著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものと推定されます(法18条2項)
① 「その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合」に当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供・提示すること(1号)。
② 「その美術の著作物又は写真の著作物でまだ公表されていないものの原作品を譲渡した場合」にこれらの著作物をその原作品による展示の方法で公衆に提示すること(2号)。
③ 「29条の規定によりその映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合」に当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供・提示すること(3号)。
以上は、公表権の存在によって著作権の行使に過度の制約を加えることを回避するため(上記①及び③の場合)、また、原作品の所有権との調整を図るため(上記②の場合)、上記①~③の場合には、著作者の公表意思を推定する旨の規定です。すなわち、上記①~③に掲げる(公表)行為には法律上著作者の同意が「推定」されるため、当該(公表)行為を著作者の同意を得ずに行ったとしても、原則として(同意の「推定」が覆る事情がない限り)、公表権を侵害することには当たりません。

なお、以上の同意の「推定」とは別に、公的機関が行う情報公開との関係で、所定の公表行為について著作者が同意したものと「みなす」とされる規定が設けられています(法18条4項各号参照)



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