同一性保持権(条文解説)

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。―これは、著作者が享有する「同一性保持権」を規定したものです(法201項)。「同一性保持権」は「著作者人格権」の一つです(法17条1項)。

「同一性保持権」とは、要するに、「著作物又は題号に意に反して改変(変更・切除等)を受けない権利」のことですが、著作者の人格的利益を積極的に保護するために認められている権利(著作者人格権)です。
著作物及び題号についてのその意に反する「変更、切除その他の改変」とは、著作者の意に反して、著作物の外面的表現形式に増減変更を加えることを意味するものと解されます。例えば、著作者に無断で、他人がスペースの都合上著作物の一部を勝手にカットしたり、再編集等する行為は、原則として同一性保持権の侵害となります。これらの行為によって著作物が質的に劣ったものになるか否かは問題ではありません。平仮名表記を漢字表記に変更すること、アラビア数字を漢用数字に変更すること、疑問符や感嘆符を付加あるいは削除すること等も著作物の外面的表現形式に増減変更を加えることに他ならず、このような行為も、原則的には、同一性保持権の侵害行為となります。

「複製」(法21条参照)はもちろんのこと、「翻案」(27条参照)にも該当せず、したがって、著作権(著作財産権)の侵害行為に当たらない行為を同一性保持権の侵害行為と認定することは妥当ではありません。そのため、他人の著作物を自己の著作物に取り込んで利用したとしても、その表現形式上の本質的な特徴を直接感得させない(つまり、「複製」にも「翻案」にも該当しない)ような態様でこれを利用する行為は、当該他人の著作物の同一性保持権を侵害することにはならないと解されます。

著作物の「題号」(タイトル)そのものは通常「著作物」(法2条1項1号)に該当しないため、これに著作権が発生することはありませんが、一方で、著作物の題号は、当該著作物と結合して一体となって著作物の同一性を表象する役割を担います。そのため、小説や音楽などの題号の無断改変も同一性保持権の侵害になりうる点に注意してください。

≪同一性保持権が及ばない場合≫

同一性保持権は、次のいずれかに該当する改変については及びません(つまり、以下の改変は同一性保持権の侵害とはならない、ということです)(法20条2項各号)
① 著作権の制限にかかわる所定の規定(法33条1項、法33条の2・1項、法34条1項)により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの(1号)。
例えば、常用漢字以外の漢字をひらがなに改める、旧仮名遣いを現代仮名遣いに改めるなどの行為がこれに該当します。同一性保持権に対する教育的配慮からの制限です。
② 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変(2号)。
建築物の実用的・経済的見地から、主として居住という実用目的に供される建築物の効用を維持増大される増築改築等の行為に対する同一性保持権の制約を規定したものです。建築物の取り壊し自体は、通常は、同一性保持権侵害の問題とはなり得ないと解されます。
③ 特定のコンピューターにおいては利用し得ないプログラムの著作物を当該コンピューターにおいて利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物をコンピューターにおいてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変(3号)。
例えば、プログラムにバグ(誤り)があるため利用できない場合に、そのバグを取り除くこと、プログラムの処理速度を上げるための改変など。このような行為は、通常、プログラムの著作者の人格的利益を害すると考えられないことから、同一性保持権を制限したものです。
④ 上記①~③に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変(4号)。
例えば、明らかの誤字脱字を修正すること、絵画の出版にあたり印刷技術上の制約により原画の微妙な色彩が忠実に再現できないことなど。
なお、法20条2項各号は、真に止むを得ない場合において必要最小限度で許容される改変を規定したもので、これらは厳格に解釈・適用されるべきで、安易な拡大解釈は避けるべきである、とするのが通説です。



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