Q&A(著作物の具体例)

ダンスの振付師をしている者です。ダンスの振付けも著作権法によって保護されると聞きました。本当でしょうか。

本当です。
著作権法は「著作物」を創作した者を「著作者」として、その者に「著作権」と「著作者人格権」とを付与して、著作物を保護しています。そして、この「著作物」の例示として、著作権法
10条1項3号に「舞踊又は無言劇の著作物」が挙げられています。ここで「舞踊又は無言劇の著作物」とは、思想又は感情が振付け(身振りや動作)によって表現される著作物をいい、典型的には、日本舞踊やダンス、バレイ、能楽などの振付け、パントマイムなどがこれに当たります。したがって、独創的な振付けを考案する振付師は、「振付け」という「著作物」を創作する「著作者」として、著作権法上の保護を受けることになります。もっとも、振付け
が極めて平凡でありふれた程度のものであれば、そのような振付けはそもそも著作権法が保護を予定している「著作物」に該当しないため(法2条1項1号参照)、「振付け」であればどんなものでも無条件で保護されるわけではありません。注意してください。裁判例の中には、幼児が踊る「キラキラ星」(手あそび歌)の振付けが「創作性を有する著作物であるものと認めることはできない」としたものがあります。
なお、振付師であるあなたが創作した振付けを実際に演じるダンサーは「著作者」ではありません。彼らは、著作権法上、「実演家」に該当し、「著作隣接権」及び「実演家人格権」という別個の権利の主体となります。

イラストはすべて著作物に該当しますか?

概ね著作権法上の「著作物」に該当すると考えられますが、「イラスト」と名の付くものであればすべて無条件で「著作物」に該当するわけではありません。
古い話ですが、東京オリンピックが開かれた当時、例のオリンピックマーク(
5輪)が「著作物」に該当するか否かが争われたことがありました。裁判所は、次のように判示し、その著作物性に関し否定的な判断を下しました(東京地裁昭和39年9月25日決定):「いわゆる五輪マークが著作権法第1条【注:現行法2条1項1号参照】に規定する『美術の範囲に属する著作物』に該当するか否かは、はなはだ問題であるが、それが比較的簡単な図案模様に過ぎないと認められるので、直ちにこれを肯定するに躊躇せざるを得ず当裁判所は消極に解するものである。いわゆる五輪マークがオリンピックのしるしとして一般に広く認識され、国際的に尊重されていることは周知の事実であるけれども、これはオリンピック行事が意義ある国際的行事として広く知られるようになるにつれて、その象徴として認識されるに至ったものと考えられ、五輪マーク模様それ自体の美術性によるものとは考えられないから、右事実によって著作物に該当するに至るとも認めがたいのである。(なお、五輪マークと標語とが組合わされた場合も、事情は右と同様であって、標語自体の文芸性を認めるのは困難であり、また組合せによって文芸および美術の範囲に属する著作物となるとも考えがたい。)」
著作権法上の「著作物」に該当するためには、「高度の創作性」は要求されません。しかしながら、上記裁判所の判断の当否はともかくとしても、やはり、あまりに簡単な(きわめてありふれた)図案・模様・色彩等のみからなる「イラスト」は、「創作性」のないものとして、その著作物性が否定されると思います。

クラフト作家をしております。独自に考案した刺繍の技法を用いて、特別な和紙にモチーフを縫い込んだ作品を制作し、一部はネットを通して販売もしております。このような私の作品も著作権によって保護されるのですか?

保護されるものと考えます。
著作権によって保護されるためには、その対象が「著作物」でなければなりませんが、「著作物」には、「美術の著作物」が含まれ(法
10条1項4号)、さらに、「美術の著作物」には、「美術工芸品」を含むものとしています(法2条2項)。
ここで「美術工芸品」とは、典型的には、一品制作にかかる壺や織物、刀剣などを意味します。したがって、同じものが工業的に大量生産される場合のそのもの(商品)は「美術工芸品」に含まれません。
「独自に考案した刺繍の技法を用いて、特別な和紙にモチーフを縫い込んだ作品」が一品一品異なり、同じ作品が工業的に大量生産できる性質のものでなければ、原則的には、「美術工芸品」として著作権法によって保護されることになります。もっとも、当該モチーフがあまりに簡単でありふれたもの、例えば、
☆や♡の形に縫い込んだだけの作品では、たとえその刺繍の技法がオリジナルなもので、かつ、技術的にいかに優れたものであっても、そもそも著作物としての創作性がないものと判断され、著作権によって保護されることはありません。
なお、あなたが「独自に考案した刺繍の技法」自体は、アイディアであって、表現物ではないため、著作権によって保護されることはありません。したがって、その技法自体を誰かが真似ても、その(技法の)模倣行為に対しては著作権を主張することはできません。その技法を作品の中で実際に用いて具体的に表現したその作品が「著作物」なのです(その作品の無断コピーに対して著作権を主張できるのです)。

デザイン会社を経営している者です。今度、自社ブランドの文具(便箋や封筒など)を開発販売することになり、そこに統一的に使用するイラスト(デザイン画)の製作も一緒に進めています。当初から量産品である実用品(文具)に利用することを意図して製作したイラスト(デザイン画)であっても、著作権法によって保護されるのですか。

そのイラスト(デザイン画)が著作権法に規定する「著作物」(法
2条1項1号)に該当するものであれば、保護されます。当初から量産可能な実用品である文具に利用することを意図して製作したイラスト(デザイン画)であっても、当該イラスト(デザイン画)に純粋美術としての絵画と同程度の美術性(
一定の美的感覚を備えた一般人を基準とした美的創作性)が備わっていると認められる限り、著作権法によって保護されます。
便箋や封筒、絵はがき、カレンダー等にイラスト(デザイン画)が利用される場合、形式的には意匠法との保護の重複の問題も起こり得ます(いわゆる応用美術の著作物性の問題)が、この点、両者の重畳的保護を理由に、著作権法による保護の対象からそのようなイラスト(デザイン画)実用品に利用される絵柄を除外すべき理由とすることはできないと考えます。また、既存の著名な美術作品である絵画や写真の複製物を用いてポスターや絵はがき、カレンダー等の実用品を製作することは、従来から広く一般的に行われています。この点からも、その複製物を文具等といった分野の実用品の絵柄として用いることを予め想定して作成されるイラスト(デザイン画)であっても、当該イラスト(デザイン画)が独立して美的鑑賞の対象となり得る程度の美的創作性を備えている場合には、著作権法上の著作物として同法による保護の対象となり得ると考えて差し支えないと思います。

会社名などに用いられるロゴは、著作物として、著作権法によって保護されますか?

ロゴ(デザイン書体)は、原則として、(美術の)「著作物」(法
2条1項1号、10条1項4号、2条2項)に該当せず、よって、通常、著作権法によっては保護されません。
文字を素材とする造形表現物の中で、もともと美術鑑賞の対象となるような「書」は、その字体のみならず、筆遣いや筆勢、墨の濃淡・にじみ等の様々な要素によって多様な表現が可能であるところ、筆者の知的・文化的精神活動の所産として創作的に表現することができるため、著作物性が認められ、「美術の著作物」に当たるものと解されます。
一方、文字を構成する上で不可欠な要素である「字体(書体)」に注目すると、文字はその文字固有の字体によって識別されるところ、文字自体は、もともと情報伝達という実用的な機能を有することをその本質とするものであって、また、言語の著作物を創作する手段として、万人の共有財産とされるべきものです。したがって、多少の創作的な装飾が加えられた字体であっても、社会的に情報伝達手段として用いられる需要のある字体について、特定人に対し排他独占的な権利である著作権を認めると、その効力の及ぶ範囲で他人の当該文字(字体)の使用を排除してしまうことになります。しかし、このような事態は、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する」という著作権法の目的(法1条)に反することになります。このような理由から、文字の書体(字体)であるところのロゴに、一般的に、著作権による保護を与えることは困難であると解されます。もっとも、デザイン書体(ロゴ)と同じく「文字を素材とする造形表現物」の範疇に属する「書」が(美術の)著作物として著作権法によって保護されうることからすると、デザイン書体であっても、それが専ら美術鑑賞の対象となりうる程度の独創性を備えたもの(いくつかの裁判例の表現を借りると、「客観的に見て純粋美術としての性質も有すると評価し得るもの」・「これを見る平均的一般人の審美感を満足させる程度の美的創作性を有すると認められるもの」・「見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りる程の美的創作性を備えているようなもの」)については、例外的に、美術の著作物として、著作権による保護を与えるのが相当な場合も認められると思います。

私、建築デザインの仕事をしております。通常のありふれた一般住宅は、「建築の著作物」に該当しないとのことですが、どの程度のものなら、著作権によって保護される「建築の著作物」として扱われるのですか?

非常に難しい質問です。
おっしゃる通り、「通常のありふれた一般住宅」が著作権法によって保護されることはありません(ただし、このことを著作権法が明確に述べているわけでもありません)。著作権法
10条1項には、著作権法が保護すべき著作物の例が挙げられており、その中に「建築の著作物」があります(同項5号)。ところが、これ以上に、「建築の著作物」とは何かという点に関して、著作権法は、一切規定していません(「著作物」についての定義規定(2条1項1号)はあります。外国の著作権法には「建築の著作物」の定義規定を置くものもあります(例えばアメリカ)。)。そのため、著作権によって保護される「建築の著作物」が「どの程度のもの」をいうか(どの程度の創作性・表現性を有すれば足りるか)という点は、もっぱら解釈に委ねられることになります。「通常のありふれた一般住宅は、建築の著作物に該当しない」というのは、一つの解釈には違いないのですが、非常に有力な解釈(通説)です。
「通常のありふれた一般住宅は、建築の著作物に該当しない」という点(一般論)は良いとしても、それでは、どの程度の創作性・表現性があれば「通常」や「ありふれた」ものではなくなり、その建築物を「建築の著作物」として扱うことができるのかという各論(具体論)になると、話はさらに難しくなります。著作権法に関する標準的な解説書には、「建築の著作物」の例として、「宮殿」や「万博のパビリオン」などを挙げているものも多いのですが、「
○○宮殿」と名の付くものであれば、常に100%「建築の著作物」と認定されるかといえば、必ずしもそうではありませんし(著作物性の認定は、その建物の名称にかかわらず、その具体的な表現に基づいて個別的に行われます。)、逆に、「一般住宅」であっても、その具体的な表現(外観)から判断して、「建築の著作物」と認定される場合もありえます。裁判例の中には、
「建築の著作物」と言えるためには、「建築芸術と見られるものでなければならない」とか、「建築の著作物」として保護される建築物は、「造形芸術としての美術性を有するものであることを要する」と述べているものがありますが、「建築芸術」とは何か、どの程度なら「造形芸術としての美術性」を備えていると言えるのかという話になると、現在のところ明確な基準や具体的な指針があるわけではなく、個別具体的なケースでは、認定者(裁判官)によって判断が分かれる場面も当然に起こり得ることです。

大学の研究室で助手をしている者です。実験結果から得られたデータ(非常に苦労して得られたデータです。)をグラフ化した図表は、著作物に当たりますか?

実験結果から得られたデータをグラフ化した図表は、一般的な通常の手法に従って作成されるようなありふれたものであれば、そのデータを得る過程がいかなるものであっても、また、その生のデータがいかに価値のあるものであっても、「著作物」に該当しないと考えます。
著作権法は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(法2条1項1号)を保護する法律です。したがって、「思想又は感情が創作的に表現されている」とは言えないもの、すなわち、思想や感情、アイデアそれ自体、ありのままの生の事実や事象・事件などは、「著作物」に該当しないことになります。「実験結果から得られたデータ」は、「創作的に表現」されたものではありません。その「データ」は、すでに自然界では存在していて(われわれが知らなかった、ないしは気付かなかっただけ)、それをあなたが実験によって「見つけ出した(発見した)」に過ぎないものです。あなたがそのデータを「創作」したわけではありません(「発見」と「創作」は別物です)。したがって、あなたがそのデータを「見つけ出すこと」にいかに「額に汗して」苦労したとしても、そして、その手に入れたデータがいかに人類にとって貴重で、価値のあるものであったとしても、残念ながらその「データ」自体が「著作物」に該当することはありません。
それでは、そのデータを「グラフ化した図表」についてはどうかという点ですが、具体的な表現である「図表」そのものに着目して、その「図表」が、一般的な通常の手法に従って、データに忠実に、折れ線グラフや棒グラフ、曲線グラフなどとして表現したものであれば、ありふれたものとして、「創作的ではない」ということになり、やはり著作物性が否定されるでしょう。ただ、その「図表」が通常一般的に用いられるようなありふれたものでないと認められる場合には、「図形の著作物」(法10条1項6号)として保護される場面もあると思います。

「ゲームソフト」は、「映画の著作物」として保護されると聞きました。本当ですか?

Yes and Noです。つまり、一般的にはほぼYesですが、常にYesではありません。
著作権法上、ある「著作物」(法2条1項1号)が「映画の著作物」(10条1項7号)に該当するかどうかは、単なる分類上の問題にとどまるものではなく、権利の主体(誰が著作者人格権や著作権の権利者となるのか)の問題(16条、29条参照)や、権利の内容(著作権の支分権)そのもの(26条参照)、さらには著作権の保護期間(54条参照)等に係わる非常に重要な事柄(検討課題)です。
Star Wars(スターウォーズ)」や「七人の侍」は、まさしく「映画」であり、著作権法上も「映画の著作物」に該当します。「となりのトトロ」は、一般的には「アニメ」と呼ばれていますが、著作権法上は、問題なく「映画の著作物」に当たります。「おしん」や「冬のソナタ」は、一般的には「テレビドラマ」ですが、著作権法上は「映画の著作物」に当たります。
それでは、いわゆる「ゲームソフト」はどうなるか。裁判で実際にその著作物性が問題とされた例で言うと、
「パックマン」(ビデオゲーム)
→「映画の著作物」に該当、
「バイオハザード2」→「映画の著作物」に該当、
三国志Ⅲ」(いわゆるシミュレーションソフト)→「映画の著作物」に該当せず、
猟奇の檻」(いわゆるコマンド選択式マップ移動型アドベンチャーゲーム)→「映画の著作物」に該当せず、です。
以上のような判断の分かれ目はどこにあるのでしょうか。判例は、何を基準に、「映画の著作物」に該当するのか、しないのかを決定しているのでしょうか。
判例(最高裁)の考え方によれば、著作法上の「映画の著作物」に該当するためには、次の3つの要件を満たしていなければならないとされています(なお、2条3項参照)。すなわち、
① 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること。
② 物に固定されていること。
③ 「著作物」(思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの)であること。
いわゆる「ゲームソフト」の場合、特に上記①の要件をクリアしているかどうかが判断の大きな分かれ目になります。
「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されている」とは、多数の静止画像を映写幕(スクリーン)、ブラウン管、液晶画面その他の物(ディスプレイ)に急速に連続して順次投影して、眼の残像現象を利用して、動きのある連続的な影像として見せるという視覚的効果、又はそのような影像に音声をシンクロナイズさせるという視聴覚的効果をもって表現されていることをいう、と解されています。したがって、「ある静止画像が、次の静止画像が現れるまで静止した状態で見え、動きのある画像として受け取られる部分はほぼ皆無」であるような「ゲームソフト」は、「多数の静止画像の組合せによって表現されているにとどまり、動きのある連続影像として表現されている部分は認められない」ことから、上記①の「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること」の要件を満たしていないと評価され、結局、そのような「ゲームソフト」は、著作権法上、「映画の著作物」としては扱われないということになります。一方、ゲームソフトの中でも、例えば、全体が連続的な動画画像からなり、CGを駆使するなどして動画の影像もリアルな連続的な動きをもったものであり、影像にシンクロナイズされた効果音や背景音楽とも相まって臨場感を高めるなどの工夫がされていて、影像をディスプレイ上に極めて短い間隔で連続的に映し出している方法で表現されているものについては、上記①の要件を満たし、著作権法上、「映画の著作物」として扱われることになります。

私の母が何気なく撮った孫(私の子)のスナップ写真をブログに掲載していたところ、その表情が独特でおもしろいせいか、非常にたくさんの反響があります。私の母は、もちろん、写真はド素人です。たまたま帰省で私が持ち歩いていたカメラを手にして撮ったものです。こんな写真でも著作権によって保護されるものでしょうか。

保護されます。
あたなのお母さんが「写真のド素人」であること、その写真が「何気なく撮った」いわゆる「スナップ写真」であることは、いずれも、著作権法において写真が著作権によって保護されるための要件とはなりません。
著作権によって保護される「著作物」を創作する者が「著作者」ですが(法
2条1項2号)、この「著作者」は、なにも「プロ」や「職業人」として、著作物の創作に携わっている者に限定されません。「ド素人」であっても、著作物としての写真を創作すれば、その創作者(著作者)は、著作権によって保護されることになります。
「写真」が著作権によって保護される「著作物」であるためには、そこにそれ相応の「創作性」があることが求められますが(法2条1項1号参照)、その求められる「創作性」の程度は、高いものではありません。写真に「撮影者の何らかの個性」が現われていれば、それで十分です。その写真が「何気なく撮った」いわゆる「スナップ写真」であっても、あなたのお母さんの「何らかの個性」(
被写体の選定や構図、背景の設定、光量の調節、カメラアングルの選択等における何らかの個性)が結果としてその表現物である「写真」から感得できれば、その「写真」は、著作権によって保護される「写真の著作物」(同法10条1項8号)ということになります。



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