Q&A(特殊な著作物)

編集者をしています。女子高校生だけの短歌サークルがあるのですが、そこで彼女たちは、今風の感性で、現代的な短歌を発表しています。彼女たちは、毎回、テーマを決めて短歌を詠み、それをテーマごとに同人誌にまとめて身内や友人だけに配布しています。今度、うちの出版社で、彼女たちの同人誌をそのまま出版してみようという企画があります。この場合、著作権の処理として、誰の許可(同人誌の出版許可)を得ればよいのでしょうか?

まず、「女子高校生」(未成年者)であっても、著作権法上の権利主体である「著作者」(法
2条1項2号)になることができます。そして、「短歌」は、著作権法の保護対象である「著作物」(法2条1項1号、法10条1項1号)に該当するため、お尋ねの同人誌に発表されている短歌の著作権は、原則として、それを創作した女子高校生に帰属しています。したがって、その同人誌の中の短歌を出版したいのであれば、それぞれの短歌を創作した女子高校生の一人一人から、その出版の許諾を得ておかなければなりません。
しかし、著作権処理は、以上で完了ではありません。お尋ねのケースの場合、「(テーマごとの)同人誌」は、著作権法上の「編集著作物」に該当する可能性があります。つまり、その同人誌が、毎回のテーマに沿った編集方針を立てて、短歌を「選択」して「配列」したものであれば、通常、その「同人誌」は、その全体で「編集著作物」として扱われることになります(法
12条1項)。同人誌を「そのまま出版」したいのであれば、その中の個々の短歌の著作者(著作権者)の許諾とは別に(これに加えて)、その同人誌を編集した(短歌を選択配列した)者の許諾も必要になります。その編集者が、同人誌全体としての編集著作者(編集著作権者)となるからです。

わたしは、法律専門のフリーの翻訳家をしている者です。法令や裁判所の判決などは著作権法によって保護されないとのことですが、われわれのような翻訳家が法令や判例を翻訳したものも、同様に保護されないのでしょうか?

あなたが「翻訳したもの」が「著作物」(法
2条1項1号)と評価できる限り、著作権法によって保護されます。「保護されない」ことはありません。
おっしゃる通り、「法令」や「判決」など、社会
一般に公示されて、周知徹底が図られるべき性質を有する著作物につては、何人にもその自由利用が担保されなければならないことから、そのような著作物については、これを著作権による保護の対象外とすることが明記されています(法13条1号・3号)。また、「法令」や「判決」などの「翻訳物」で、「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの」も、同様に、保護の対象外とされています(同4号)。
お尋ねの場合、あなたは「フリー(ランス)」の立場から、翻訳のお仕事をされているようですので、一般人(民間人)であるあなたが「翻訳したもの」は、当該4号には該当しません。したがって、原則通り、あなたが「翻訳したもの」が「著作物」に該当しさえすれば、他の著作物と同等の保護を受けることができます。

某大学の教官(教授)をしております。私が執筆した研究論文の著作権は、大学側に帰属するのでしょうか?

一般的には大学側に帰属することはないと考えます。
著作権法の大原則は、著作物(ここでは、研究論文)を創作(執筆)した者が「著作者」であるということです(法
2条1項2号)。一方、著作権法15条は、法人等が著作者としての地位を取得する場合を極めて限定的に規定しています。
大学の教官が自己の研究活動(これがたとえ職務であっても)の一環として執筆する研究論文は、一般的には法人著作の要件の1つである「
法人等(ここでは大学)の発意に基づき作成」したものとは言えないと考えられるため、そのような研究論文は、結局のところ、法人著作に該当しないと解されます。そのように解される場合には、研究論文に係る著作者人格権及び著作権は、当該論文を執筆した教官に原始的に帰属することになります(法17条)。
もっとも、大学の勤務規則等で、教官等が職務上作成する論文等の著作権は原則的にすべて大学に帰属する旨の規定があるとき(このような規定を設けている大学も実際にありますので、一度チェックしておいた方がいいでしょう。)は、当該論文の著作権(財産権)は、論文等の作成と同時に大学側に移転することになります(著作者人格権は移転しません)。

当社の従業員が職務上作成した著作物については、法人著作の要件(法15条)を満たすか否かにかかわらず、当社の著作物として扱いたいと考えています。こういうことは可能でしょうか?可能であれば、どのように処理したらいいのでしょうか?

可能です。
著作権法
15条は、法人等が一定の場合に著作者としての地位を取得することについて規定したにとどまり、本条の要件を満たしていない自社従業員の創作に係る著作物の権利の帰属関係まで規制するものではありません。したがって、契約・勤務規則等によってその旨(例えば、従業員が作成した著作物については、法人著作の要件を満たすか否かにかかわらず、その著作権(財産権)は会社に帰属する)をあらかじめ規定しておくことができます。ただ、このような規定があっても、著作者である当該従業員が有する著作者人格権については、会社に帰属させることはできません(法59条参照)。



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