Q&A(著作者人格権)

私の経営するレストランに以前有名な役者さんがいらしたことがあり、先日その役者さんからお礼のお手紙をいただきました。この手紙を店に展示したいと思いますが、役者さんの許可を得たほうがよろしいでしょうか?

役者さんの許可を得たほうがいいでしょう。
まず、手紙の所有権とその著作権とは区別して考える必要があります。有体物としての手紙の所有権はあなたに帰属しますが、このことは、当該手紙の著作権まであなたが譲渡されたことにはなりません。当該手紙の著作者はそれを書いた役者さんであり、その役者さんが当該手紙について著作権及び著作者人格権を専有しています。
著作権のなかに「展示権」(法
25条)という権利がありますが、この権利が働くのは、「美術の著作物」と「未発行の写の真著作物」に限られるため、「手紙」を差出人に無断で公に展示してもこの展示権を侵害することにはなりません。しかし、手紙を差出人に無断で公に展示する行為は、著作者人格権の1つである「公表権」(18条1項)を侵害することになります。したがって、お店に手紙を展示したいのであれば、法律的な観点からも、役者さんの許諾を得ておくことをお勧めします。

スポーツライターをしている者です。現在執筆中の私の著作の中に、ある有名なアスリート(金メダリスト)の小学校時代の卒業文集に掲載された詩を転載しようと考えています。著作権法上の問題を教えてください。

小学生が創作した「詩」も著作権法上の「(言語の)著作物」(法
2条1項1号、10条1項1号)として、保護の対象となります。そして、「詩」の創作者である小学生(=現在は「有名なアスリート」)は、「著作者」として、その「詩」に関する「著作者人格権」と「著作権」を専有することになります(法17条1項)。そこで、「自己の著作に卒業文集に掲載された他人の詩を無断で転載すること」が上記の著作者人格権又は著作権の侵害と評価される否かが著作権法上の問題となります。
ここでは、著作者人格権の
1つである「公表権」(18条1項)との関連に的を絞って解説します。
公表権の侵害は、「まだ公表されていない著作物」、又は「著作者の同意を得ないで公表された著作物」が著作者に無断で公衆に提供・提示された場合に認められます(法18条1項参照)。逆に言うと、「著作者の同意を得てすでに公表された著作物」には公表権は働かない、ということです。したがって、当該卒業文集に掲載された詩が「著作者の同意を得てすでに公表された著作物」と評価される場合には、当該詩を自己の著作に転載し、これを出版公表しても、当該詩にかかる公表権を侵害することにはなりません。
それでは次に、当該卒業文集に掲載された詩が著作者の「同意」を得てすでに「公表」された著作物と評価されるか否かを検討してみます。
詩は言語の著作物であるため、これが「発行」されると「公表」されたものといえます(法4条1項)。そして、著作権法上、この「発行」とは、その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成・頒布されたことをいい(3条1項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとされています(2条5項)。
「卒業文集」というのは、通常、卒業生及び教諭その他に配布されるもので、特に秘密性があるわけではありません。また、その配布の部数も通常数百程度にはなるでしょう。そうすると、当該詩は、数百名という「公衆」の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成・頒布されたものといえますから、「公表」されたものと評価されるでしょう。また、当該詩の著作者である小学生(=現在は「有名なアスリート」)は、当該詩が卒業文集に掲載されることを承諾していたのですから、これが同級生や教師などに公表されることに「同意」していたということができると思います。したがって、当該卒業文集に掲載された詩を自己の著作に転載し、これを出版公表しても、当該詩にかかる公表権を侵害することにはならないと解されます。
もっとも、以上のように、当該卒業文集に掲載された詩を自己の著作に転載し、これを出版公表する行為には、「公表権」は及ばないとしても、「複製権」(法21条)が及ぶため、結局のところ、著作者に無断で当該詩を転載出版することは、それが「引用」(法32条1項)に該当するような例外的な場合を除いて、その著作者の「著作権」(複製権)を侵害することになります。注意してください。

地方で地元情報誌を出版している者です。こちらで原稿料を支払って執筆依頼をした原稿について、当方の判断で、その一部(数行程度)をカットすることはできますか?

原稿料を支払ったかどうか、その原稿を買い取ったか否かにかかわらず、原稿の一部をその著作者(原稿執筆者)の了解を得ずに「カット」することは、極めて限定的・例外的な場面を除いて、一般的にはできないと考えます。そのような行為を行えば、原則として、著作者人格権のひとつである同一性保持権(法
20条1項)を侵害することになります。
著作者は、その「著作物又は題号にその意に反して改変(変更・切除等)を受けない」権利を有しています。これを「同一性保持権」といいますが、原稿の一部を「カット」することは「切除」に該当するため、「著作者の意に反して」これを行えば、同一性保持権を侵害することになります。
ところで、この同一性保持権は、「著作物(原稿)の性質(文芸的か、学術的か等)」・「著作物の利用の目的(教育目的か、商業目的か等)及び態様(本件では出版)」に照らして「やむを得ないと認められる改変(変更・切除等)」については及ばないとされています(法
20条2項4号)。この規定に関し、通説的な見解は、当該規定は厳格に解釈運用されるべきで、真にやむを得ないと認められる場合の必要最小限度を超えるような拡大解釈は許されるべきではない、としています。この見解に照らすと、本件のような「カット」、それが「1行程度の」カットであっても、それを許容できる場面は、著作者の側でそれを許容する明示ないし黙示な意思表示していると認められるような場合を除いて、ほとんどないと考えられます。
なお、実務上、出版(許諾)契約に際し、契約書に著作者人格権の「放棄条項」や「不行使条項」を挿入する場合があります。これらの条項については、その有効性について議論のあるところですが、本件のような「カット」を行う場合には、どのような形であっても、事前に著作者の了解を書面で確認しておくことをお勧めします。



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