30条の4の自由利用(条文解説)

公表された著作物は、著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には、その必要と認められる限度において、利用することができます(法30条の4)。

著作物の利用行為として、例えば、企業が録画機器を開発するに当たって、実際に映画等の著作物を素材として録画することが行われる場合があります。このような著作物の利用に係る技術開発ないし実用化における試験利用は、通常、著作権者の利益を不当に害するものではありませんが、形式的には違法(著作権侵害)であり、民事責任等に問われるおそれがあります。しかしながら、デジタル・ネットワーク化の進展に伴い、著作物の利用行為が飛躍的に多様化している昨今の情勢に鑑みれば、このような利用行為まで規制することは、著作物の利用の円滑化という観点からは問題がありました。そこで、平成24年の法改正により、公表された著作物は、著作物の録音・録画等の技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には、その必要と認められる限度において利用することができることになりました(そのような行為は侵害行為に当たらないことが明確にされました)。
本条の対象となる著作物の利用行為としては、次のようなものが考えられます:
eg.) テレビ番組の録画に関する技術を開発する場合に、技術を検証するため、実際にテレビ番組を録画してみる行為
eg.) 3D(三次元)映像の上映に関する技術を開発する場合に、技術を検証するため、3D映像が収録されたBlu-ray Discを上映してみる行為
eg. OCR(光学式文字読取装置)ソフトウェアを開発するに当たり、ソフトウェアの精度の向上を図ったり、性能を検証したりするため、小説や新聞をスキャン(複製)してみる行為
eg.) スピーカーを開発する場合に、性能を検証するため、流行している様々なジャンルの楽曲を再生してみる行為
一方、以下のような著作物の利用行為は本条の対象とならず、原則として著作権者の許諾が必要となるものと解されます:
eg.) 上映技術の試験の用に供するという目的で、断続的に、広く観客を集めて、全編にわたって映画を上映する行為
eg.) 企業において、例えば、開発中の新たなコピー機の試験複製ということではなく、コピー機の技術開発を検討する際に参考にするとの名目で、技術者等に対して広く論文等を複製し、頒布する行為
(注) 公益社団法人日本複製権センターと契約を結んでいる場合には、その契約の範囲内で論文等を複製することができます。

本条は、「著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する」場合に適用されますが、ここで、「録音、録画」はあくまで例示として規定されたもので、著作物の利用に関する技術であれば、録音技術・録画技術に限らず、広く本条の対象となるものと解されます。「その他の利用に係る技術」としては、例えば、著作物の送信や通信に関する技術、上映に関する技術、視聴や再生に関する技術、翻訳や翻案に関する技術等が想定されます。なお、「技術の開発又は実用化のための試験の用に供する」とあるのは、技術の開発のための試験や、技術の実用化のための試験における検証のための素材として著作物を利用できることを意味します。

本条では「(公表された著作物は)利用することができる」と規定しているため、当該著作物の複製に限らず、すべての利用行為が対象となります。もっとも、利用全般が対象となると言っても、あくまで「技術の開発又は実用化のための試験の用に供する」という態様に照らして、「必要と認められる限度において」行われることが求められます。



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