公衆送信権・公の伝達権(条文解説)

著作権法23条は、著作者が公衆送信権(1項)及び公の伝達権(公衆伝達権)(2項)の各権利を専有する旨を規定しています。

公衆送信権について

「公衆送信権」は、著作者が享有する「著作権」の一支分権です(法17条1項参照)。
この点、法は、「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。」と規定しています(法231項)。本条は、著作者が著作物について「公衆送信」を行うことを内容とする排他独占的権利を有する旨を規定したものです。

公衆送信権の内容を確定づける「公衆送信」とは、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」をいいます(法2条1項7号の2)。「公衆送信」という概念は、以下に述べる「放送」や「有線放送」、「自動公衆送信」等を含む包括概念で、これらの上位概念として位置付けられています。
「公衆」(不特定の者又は特定多数の者)の概念についても注意が必要です(法2条5項参照)。すなわち、特定少数(著作権法上の「公衆」に該当せず。)によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行っても、当該送信行為は、「公衆送信」には該当しないことになります。
同一の構内において同一の者の占有に属する区域内における送信は、「公衆送信」の概念からはずされています(法2条1項7号の2かっこ書)。ただし、同一の構内において同一の者の占有に属する区域内における送信であっても、プログラムの著作物を送信する場合には、かかる「送信」は、「公衆送信」の射程範囲内です(「公衆送信」に含まれます)(同号かっこ書中かっこ書)。

公衆送信権が及ぶことになる「公衆送信」という利用態様をもとめてみると、次の①~⑤の態様によるものがあります。

① 「放送」

「放送」とは、「公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」(法2条1項8号)をいいます。例えば、テレビ放送、ラジオ放送。「公衆によって直接受信されることを目的として」行われない航空機や船舶等における無線通信は著作権法上の「放送」には該当しません。なお、「放送」には、生放送のみならず、録音物・録画物による「放送」も含まれます(法2条7項かっこ書参照)。

② 「有線放送」

「有線放送」とは、「公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信」(法2条1項9号の2)をいいます。上記①の「放送」とは、「無線」による送信か「有線」による送信かの違いがあるだけです。例えば、CATV放送、音楽有線放送。なお、「有線放送」には、生放送のみならず、録音物・録画物による「有線放送」も含まれます(2条7項かっこ書参照)。

③ 「自動公衆送信」

「自動公衆送信」とは、「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの」(法2条1項9号の4)をいいます。これは、インターネットのホームページを用いて、サーバーに入力されている情報が利用者の個別のリクエスト(端末のパソコンからのアクセス)があった場合にのみ自動的に送信されるような形態(いわゆるインタラクティブ送信)を想定したものです。いわるゆ「インターネット放送」(インターネットを通じて音声や映像を端末のパソコンに送信する形態)は、公衆からのリクエストがない限り、音声や映像を記録するサーバーから端末パソコンへの送信は行われず、従って、「同一の内容の送信が同時に受信されることを目的」としているとは言えないため、同一内容の情報を同時に送信するという「放送」及び「有線放送」には該当せず、著作権法上は、この「自動公衆送信」に該当することになります。なお、「自動公衆送信」の概念からは、「放送」及び「有線放送」に該当するものが除かれています(法2条1項9号の4かっこ書)が、これは、例えば、不特定の1人からの求めに応じて特定多数の者に自動的に同一の内容を同時に送信する態様については、「放送」又は「有線放送」の概念として把握すれば足りることから、規定されているものです。

④ 「送信可能化」

上記③の「自動公衆送信」には、「送信可能化」という利用態様が含まれます(1項かっこ書)。「送信可能化」とは、いわばインタラクティブ送信(自動公衆送信)の前段階の状態のことで、実際に自動公衆送信があったかどうかを問わず、また、複製(2項1項15号参照)行為があったかどうかを問わず、サーバーとの関係で一定の行為をすることにより著作物を自動公衆送信し得る状態に置くことを意味します。
「送信可能化」については、送信用コンピュータであるところのいわゆるサーバー(著作権法は、これを「自動公衆送信装置」と呼んでいます。)に入力されている情報が公衆からのから求めに応じて自動的に送信される点に着目して、サーバーとの関係においてその利用態様を規定しています。具体的には、次のような行為によって「送信可能化」が起こります(法2条1項9号の5)。
(イ) ネットワーク(電気通信回線)に接続されている状態にあるサーバー(自動公衆送信装置)に情報を記録・入力等(いわゆるアップロード)する行為。
(ロ) 情報が記録され又は入力された状態にある、ネットワークに接続されていないサーバーをネットワークに接続する行為。

⑤ その他の公衆送信

「公衆送信」の概念(射程範囲)には、上記①~④の「放送」・「有線放送」・「自動公衆送信」・「送信可能化」が含まれ、通常は、これらの利用態様を問題とすれば足りると考えられますが、厳密に言うと、「公衆送信」には、以上のいずれにも該当しない「公衆送信」というものもあります。例えば、公衆から電話でリクエストを受けて、「手動によって」ファックスや電子メールで個別に(異時に)送信するような場合(これらは「自動的に」送信が行われていないため「自動公衆送信」には該当しない。)が、これに該当します。

以上のように、「公衆送信」は5つの利用態様を含むため、「公衆送信権」は、「放送権」・「有線放送権」・「自動公衆送信権」・「送信可能化権」・「その他の公衆送信権」から構成されることになります。なお、公衆送信を受信して行う公衆送信(例えば、「放送」を受信して行う「自動公衆送信」)についても、当然に公衆送信権は及びます(ただし、38条2項参照)。

公に伝達権(公衆伝達権)について

「公の伝達権」(「公衆伝達権」と呼ぶ論者もいます。)は、著作者が享有する「著作権」の一支分権です(法17条1項参照)。
この点、法は、「著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。」と規定しています(法232項)。本条は、著作者が公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達することを内容とする排他独占的権利を有する旨を規定したものです。

公の伝達権は、例えば、放送された番組(テレビ番組・ラジオ番組)を、街頭やレストランなどに置かれたテレビ受像機やラジオを使って公衆に視聴させるような場合に働く権利です。この権利は、受信装置を使って公衆送信された著作物をそのままの状態で公衆に見せたり、聞かせたりする場合に働く権利で、公衆送信されたものをいったん録音ないし録画して、それを再生して公衆に視聴させる場合には働きません(もっとも、この場合、別途、録音・録画の段階で複製権が、再生の段階で上演・演奏権又は上映権等が及ぶことになります)。
公の伝達権には大きな制約があり、放送又は有線放送される著作物については、非営利かつ無料(聴衆や観衆から料金を受けない)の場合には、公の伝達は自由に行うことが可能で、また、通常の家庭用受信装置を使って公に伝達する場合には、営利・非営利にかかわらず、これを自由に行うことができるとされています(法38条3項参照)。



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