頒布権(条文解説)

「頒布権」は、著作者が享有する「著作権」の一支分権です(法17条1項参照)。
この点、法は、「著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。」と規定し(法261項)、さらに「著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。」と規定しています(同条2項)。本条は、映画の著作物の著作者及び映画の著作物において複製されている著作物の著作者が、当該映画の著作物の頒布に関して、排他独占的権利有する旨を規定したものです。

「頒布権」とは、映画の著作物(その中で複製されている著作物を含む。以下同じ。)の複製物を頒布することを内容とする排他独占的な権利です。ここで、「頒布」とは、有償・無償を問わず、複製物を公衆に「譲渡」し、又は「貸与」することをいいます(法2条1項19号前段)。映画の著作物にあっては、「公衆に提示することを目的として」当該映画の著作物の複製物を譲渡し又は貸与することを含むものとしています(同号後段)。なお、「貸与」の概念については、2条8項を参照。
以上のように、「頒布」というのは、「公衆」(不特定の者又は特定多数の者。以下同じ。)向けに「譲渡」すること、及び「公衆」向けに「貸与」することの2つの利用態様を包摂する概念で、しかも、映画の著作物にあっては、譲渡又は貸与する相手方が「公衆」でない場合(特定少数である場合)であっても、「公衆に提示することを目的」としている場合(公衆向けに上映することを目的としている場合)には、当該譲渡又は当該貸与に「頒布権」が及ぶことになります。このように、映画の著作物にのみ認められている「頒布権」は、「譲渡権」(法26条の2)又は「貸与権」(26条の3)よりも「強力な権利」であると言うこともできますが、このような取扱いの背景には、いわゆる配給制度の慣行のあった劇場用映画が念頭にあったようです。そのため、「頒布権」の中の「譲渡」に関する部分には、通常の「譲渡権」に適用される「消尽理論」(譲渡権は著作物の複製物がいったん適法に譲渡された後は消滅するという法理。26条の2・2項参照)が適用されない(映画の著作物の頒布権は消尽しない)と解されてきました。ところが、市販のホームビデオやDVD、ゲームソフト等の中古品市場が成熟しつつある現在では、以上のような伝統的な解釈も方向転換を迫られています。つまり、劇場用映画以外の「映画の著作物」の複製物(市販のホームビデオやDVD、ゲームソフトなど)については、いったん適法に譲渡(販売)された後(市場に出回った後)にそれがさらに中古市場で販売(再譲渡)されても、それ自体「公衆に提示することを目的」として販売されているわけではないこと、また、市場における商品の円滑な流通を確保すること等の観点から、当該映画の著作物に関する「頒布権」は、当該複製物を再譲渡する際に消滅するものと解されます。

「頒布権」は、以上のように、「映画の著作物」(法2条3項参照)にのみ認められている権利ですが、「映画の著作物」の著作権は、この「頒布権」に限られるものではなく、「複製権」(21条)や「上映権」(22条の2)・「公衆送信権」(23条1項)などの権利を含みます。
(注)「著作権」は、著作物を創作した「著作者」に原始的に(当初から)帰属するのが大原則なのですが、「映画の著作物」については、その特殊性と歴史的な経緯から、「著作者」と「著作権者」とが当初から別人になる場合があります(したがって、著作者人格権と、頒布権を含めた著作権が当初から別人に帰属することになる)ので、この点は注意を要します(法16条及び29条1項参照)。

映画の著作物の中で複製されている著作物(例えば、映画の主題歌やBGMとして収録されている音楽、映画の1シーンに登場する絵画や写真の著作物など)の著作者も、その著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有します(2項)。一方、映画の著作物の原著作物となった原作小説や脚本の著作者については、28条の規定によって当該映画の著作物の著作者と同様の権利を有することになるため、かかる原著作者は、当該映画の著作物について頒布権を有することになります。そのため、映画の著作物を「頒布」したい場合には、当該映画の著作物の著作者(著作権者)の許諾のみならず、その中で複製されている著作物の著作者(著作権者)、さらには、その原著作者(著作権者)の許諾をも必要になりますので注意してください。



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