譲渡権(条文解説)

「譲渡権」は、著作者が享有する「著作権」の一支分権です(法17条1項参照)。
この点、法は、「著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。」と規定しています(法26条の2・1項)。本条は、著作者が、著作物を、その原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する排他独占的権利を有する旨を規定したものです。さらに、その第2項では、適法な譲渡により譲渡権が消尽する旨が規定されています(後述)。

譲渡権は「公衆」に著作物を譲渡する権利ですから、「公衆」以外の者、すなわち特定少数の者(法2条5項参照)への譲渡行為は、そもそも譲渡権の射程範囲外の行為であり、そこに譲渡権が及ぶことはありません。また、映画の著作物について譲渡権が適用されないのは、映画の著作物については譲渡権を含む「頒布権」(26条)が認められているからです。したがって、映画の著作物の原作品や複製物を公衆に譲渡する行為に当該映画の著作物の権利が及ばないというわけではありません(譲渡権を含む「頒布権」が及ぶことになります。)。

譲渡権は、国の内外を問わずいったん適法に譲渡された著作物の原作品又は複製物について、その後さらにそれを公衆に譲渡する行為には及びません(2項各号)。これを、「譲渡権の消尽」といいます。少々難しい用語ですが、著作物をその原作品又は複製物といった有体物の形態で適法に譲渡した場合には、その有体物については権利の目的が達成されたものとして、当該有体物をそれ以後に譲渡しても(転売や中古販売しても)、そこに化体した著作物には当該譲渡権の効力が及ばなくなる、という考え方を意味しています。このように、適法な譲渡後に譲渡権の消尽を認めることは、国際的にも了解されています(WIPO著作権条約6条(2)参照)。譲渡権の消尽(いわゆる「ファースト・セール・ドクトリン」(the first sale doctrine))が一般的に承認される趣旨は、商品取引の安全と円滑な流通の確保にあると言えます。なお、譲渡権が消尽したか否かは、著作物が化体した有体物の1つ1つについて判断されるものであって、ある複製物について譲渡権が消尽したからといって、いまだ適法に公衆への譲渡が行われていない別の複製物について自動的に譲渡権が消尽するものではありません。注意してください。

譲渡権には、消尽理論を含めて、その効力が及ばないとされる場面がいくつかあり(複製権の制限規定により適法に作成された複製物の譲渡に対する譲渡権の制限(法47条の10)、及び善意者に係る譲渡権の特例(113条の2)に関する規定を参照)、また、実際のところ、譲渡が行われる際には、その前段階として「複製」(2条1項15号)が行われていることが少なくありません(つまり、この段階ですでに複製権が働くことになります。)。そのため、実務的には、複製を許諾する際に、併せて譲渡の許諾の必要性を検討すれば足り、通常の場合、譲渡権が単独で問題となるケースは多くないと言えます。もっとも、例えば、ある研究論文の著作者が特定の研究機関での部内利用に限定してその複製(と譲渡)を許諾してした場合に、その許諾の下で作成された当該論文のコピーを、後に、部外の者(不特定の者又は特定多数の者)に配布してしまったといったケースでは、契約上の債務不履行の問題はさておき(この問題とは別に)、譲渡権が単独で問題となりえます。



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